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なつの おもいで ~いち演劇ファンの2020夏~

ともかく、げきじょうに またかえってくることができた なつでした。
9がつ 10がつには、もっとたくさんのおしばいをみれたらいいなとおもいます。(絵日記風🌻)

以前、いち舞台演劇ファンとしてこの2月〜5月末を振り返る文章(6/1付note記事「演劇と、遠距離恋愛中。」)を書いたので、その後のことも残しておこうと思う。
前回のように時系列の記録ではないが、再び劇場へ足を運ぶようになって2カ月程が経った今、思うことを。

ただいま!劇場

6月に休業要請解除のステップ2で劇場再開(無観客配信から)。業界内で作ったガイドラインに基づき7月には観客を入れた公演も再開!と喜んだけれど、今のところ私の観劇ペース(今後の公演のチケット確保数も含め)は以前の半分くらいだ。
従来の感覚なら熾烈なチケ戦になると思われた演目で「あれ?意外と取れる」(席数50%以下な上に公演回数だって絞られているにも関わらず)というケースがいくつかあったことなどから考えても、私だけでなく客足の戻りは意外と鈍いのかもしれない。

私の観劇ペースが抑えられている原因として、自分でも驚いているがまず「観劇に要する気力・体力の低下」を認めざるを得ない。
公演情報をキャッチしてチケットを取ってスケジュール調整して劇場へ足を運んで何時間かジッと座って…という一連の行動には、結構な瞬発力・行動力など気力が備わっていることと、身体が元気であることも必要だったんだなぁと改めて思っている。
3〜4カ月のブランクの間に弱ってしまったのは、あまり出歩かないようになっていたことによる体力低下に加え、楽しみにしていた公演が次々に中止となり虚しい払戻の煩わしさに追われ"不要不急" だとの風当りを感じたりもして、徐々に心身両面のHPを削がれていった結果である。

ただ、この間に少し落ち着いて「理性が働くようになった」とも言える。スケジュール的・金銭的にちょっと無理してたとこあったよね?なんか煽られてなかった?と省みたり。
今は劇場の席数も公演回数も少なくなっているのだからチケットはみんなで分け合った方がいい。「ちょっと観てみたい」くらいなら「すごく観たい!」と言う人に譲ってあげた方がいい。
…そんな仏のような心で居るのも、悪くない。

それと勿論、まだまだコロナ禍の中にある社会の一員としての振る舞い方を考えもする。
劇場へ行くことは、そりゃおうちに篭っているのに比べたら、自身の感染や感染拡大に加担してしまうリスクを伴った行為であることには違いないのだ。
だからちょっとおとなしめにしています(笑)。

私よりもっとおとなしくしている人もたぶん多くて、判断は人それぞれ。
7月は日々公表される感染者数が増加傾向だったし、おそらく初旬に生じた "劇場クラスター" の問題も影響した。
今も劇場内はともかく途中の交通機関や街なかの人混みを懸念したり、東京以外在住の人はまず東京へ行くこと自体ためらわれる向きもあろう。
感染症対策の正解など分からない中、自分としてはOK判断でも職場からNGが出ているという人もいるし、家族に心配掛けたり他人から後ろ指さされるようなことはしたくないという考えもある。
こうした緊張感を持たねばならぬことで、観劇はよりエネルギーを要する行為になっている。

公演開催は大変そう…

いやしかし、このご時世に公演を開催する側の方々のエネルギー消費こそ大変なものだろう。
7月以降いくつかの公演を観に行ったが、どこも考え得る限りの、物々しいとも言えるほどのウィルス対策を採っていたし、体調不良や不安を理由としたキャンセル・払戻に応じたりもしていた。
関係者の中に微熱症状などの人が出て当日の公演を急遽中止にするという事例も複数見かけた。その点で言ったら無事に千穐楽まで終えられるかどうかは「綱渡り」だ。
ただでさえ客席数半減(チケット代は意外と据え置かれている)で収入減なのに、経費も労力も随分掛かって気苦労もハンパなくて、公演を打つこと自体リスク高すぎでホント大丈夫ですか?皆さんの報酬にシワ寄せが行ったり、精神的に疲弊しちゃったりしてませんか?と心配になってしまう。
劇団・団体・企業としても体力大丈夫ですか?自粛期間の損害もあるし、この状況は予想以上に長く続きそうだし…。

ただ、えっと…そんな主催側の方々には大変申し上げにくいですが、前後左右が空いていてゆったり座れる客席は視界も良好で非常に快適です😅
「50%の客席」は医学的根拠に依ると言うより「客の安心のため」だと思うが、これに慣れてしまってフルに戻った時の抵抗感は結構大きいような気がしている。
ついでに言わせていただくと(主に大規模公演について)、チケットの発売時期が以前より後ろ倒しになっていることやキャスト先行枠を減らしていること等は、実は客にとっては従来よりも納得しやすく利便性が高い。これも元どおりに戻らない方が嬉しい。この機会に主催者によるリセールシステムも整えてもらえたら更に嬉しい。

あともう1点思ったのは、客席の安全への配慮はどこも徹底しているが、「演者の安全への配慮」については主催者/カンパニーによって考え方が違うようだな、と。
出演者数が少ない演目にしたり舞台上での演者どうしの接近・接触が無い演出を考えている所もあれば、表現には制約を作らない(稽古中は制限しているかもしれないが)ことを優先させていると思われる所もあった。
物理的に "密" な芝居がどの程度可能か、表現と、演者の安全(ひいては公演開催の安全)と、観客の反応(あっ大丈夫?などと思ってしまうと物語に入り込めない)と…そういったものの狭間で作り手は悩むのだろうなぁ。

何が観たい?

これも自分で驚いていることなのだが、普段なら大好物な筈の「これでいいのか?と問われる系」「安穏とした私がブン殴られる系」「人間のイヤなとこ汚いとこを曝け出される系」の演目を観るのが、いま正直キツかったりしている。
かといってファンタジーな希望キラキラ物語も今の気分に合わない気がする。
意外と難しいのだ。

劇場再開当初は、なんだかもうどこの公演も「演劇ラブ!」という「エモ」に溢れちゃってたと思う。作り手も観客もそういう気分の中にいたのだから仕方ない。「演劇人の矜持」みたいなものを見て熱くなったしそういうのも好きなんだけど…
ちょっとそろそろ食傷気味になってきてるかな。

「今」に絡めた内容とか企画の特別さではなく、普通に(?)物語に胸打たれたい。
でもね、物語と「今、ここ、私」が繋がって感じられることが演劇の好きなとこなのでね。
「キツい」と感じる自分を見つめることも面白いよね。

ウィズ配信

演劇の配信や「ウィズ配信」という公演形態が一般的になりつつある。
私も
- 行きたいけど劇場チケットが取れなかったもの
- 1度劇場で観て気に入ったものを配信で追いチケ
- ちょっと気になったものはとりあえず配信で
といった形で利用しているが、思うところはいろいろあります。

◆ やっぱ劇場で観るのがいいに決まってる
当然ながら、それはそう。
そしてその理由は、やはり芝居は劇場で観るように作られているし劇場のお客さんへ向けられているから、だと思う。
無観客配信など「配信用」に作られている作品ではない場合、配信を視ている私は、演者と劇場観客との間に出現した "演劇" を遠くから覗き見しているに過ぎないという気がする。その "演劇" への参加者にはなれない。
演技・演出・舞台美術すべて、劇場客席向けと配信向けを同時に両立させることはなかなか難しいのではないかと思う。

◆ 配信視るのもラクじゃない
配信は便利で気軽に手を伸ばしやすい…と思いきや案外そうでもない。自宅で視聴するための環境を確保することは結構大変だ。機器や通信状況を整えた上で自分の身体を空けさえすれば良いのではなく、家族にも静かにしておいてもらわないといけない。どんなに周到に準備しても、家電が鳴ったり宅急便さんが来たりすることもある。だから生配信一発勝負はツライ。せめて数時間、できれば24時間以上のアーカイブをください🙇‍♂️
逆に、生配信ではなくてもいい。作り手の方々には割と「同時性」を「演劇たる最後の牙城」的に考えて拘ろうとする傾向があるのではないかと感じる(経費や著作権の関係でアーカイブ不可能なことの言い訳かも?)が、この場限り!という集中力を以って視て欲しいのかもしれないけど、劇場のように集中できる環境を家で作るのは残念ながら無理なんですよ…しかも夕飯時みたいな時間だと更に無理。
配信の経費って如何程のものなのか、配信を売ることで客席数減をカバーできるものなのかどうかは分からない。三谷さんの『大地』10万人が配信チケット買わないとペイしないという記事には驚いたが(ホントかな?)、より多くの人に買ってもらうためにも、生配信オンリーでないことは重要だと思う。

◆ 配信は新規ファン獲得に繋がるか?
現状、¥3,000とかの有料配信を(まず情報キャッチして)買って視ているのはあくまで既存の舞台ファンですよね。客席数減でチケット取れないとか劇場へ行くのはまだ差し控えたいという既存ファンの需要を満たすため、あるいはこの人たちを繋ぎ止めるため。今、配信をしている主な目的はそれだと思う。
コロナ禍が去り客席数が戻った後も「ウィズ配信」という公演形態は継続するのかな。配信がより多くの人を劇場に呼ぶためのフックとして位置づけられるようになるのかな。
いずれにしても、「舞台の魅力が存分に伝わる映像」を作ることは追究されていって欲しいな。

なつのおわり

ともかく、げきじょうに またかえってくることができた なつでした。
9がつ 10がつには、もっとたくさんのおしばいをみれたらいいなとおもいます。(絵日記風🌻)

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