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夏夢祭り!

夏至を挟んだこの2週間ほどで続けざまに
『夏の夜の夢』A Midsummer Night’s Dream を4作視た、わたし的夏夢祭り!の記録。
どれも素晴らしいエンターテインメントでステキポイントが沢山あるのだけれど、各プロダクションについて特徴的だと感じた点に絞って書いてみました(それでも長い)。記載は視た順。

🌳 Shakespeare’s Globe (2013)
🧚‍♂️ 新ロイヤル大衆舎 (生配信)
🌺 ジュリー・テイモア演出 (2014)
🌈 Bridge Theatre (2019)

これ以前の私の夏夢経験は、新国立劇場ジョン・ケアード演出(2009)を情報センターのビデオシアターで1回鑑賞したのと、高校生が手作りで原語上演するのを観たのみ。
あらすじは大体覚えてるかな…楽しいドタバタファンタジー喜劇だなぁというのと、パックがイタズラ小僧だなぁというのと、最後は楽しかったぁ✨ってなるよなぁ…というくらいの記憶です😅

Shakespeare’s Globe(2013)

妖精たちがワイルドと言うかソバージュと言うか野生!って感じ。ティンカー・ベル🧚‍♂️のような雰囲気では全然ない。森に住むSpirits…「妖怪」と言った方が近いかも。鳥みたいな動物みたいな鳴き声で登場するし、ビジュアルも不気味寄り。

オーベロンとティターニアには王・女王の悠然とした風格というイメージを持っていたので、ターザンロープで柱によじ登ったりパックを肩に担いだりするマッチョなオーベロンや、勇ましくてカッコイイ感じのティターニアは新鮮だった。

この2人と同じ役者が演じるシーシアスとヒポリタ…アマゾネスに対する侵略戦争のシーンから始まるので、1幕1場の空気はとても不穏で、家父長制とかmale-dominatedとか植民地主義とかを思わずにはいられない。シーシアス威圧的で恐いし、ヒポリタは敵対心剥き出し。
意に沿わない結婚を強要されるという点でヒポリタがハーミアに共感し優しくしてあげてるのが印象的だった。

それがまぁ、パックはおとぼけで可愛いし、若者たち4人はワーワー騒いどるし、何と言ってもボトムを筆頭に職人劇団の皆さんがめちゃくちゃ可笑しくてとびきりチャーミングなので、どんどん笑えるコメディになっていく。

終盤、シーシアスとヒポリタが再び登場する時には、オーベロン・ティターニアが何だかんだ夫婦の情で仲直りした直後なだけに、まぁ敵対は解けてお互いに歩み寄ってるのかなというふうには見える。2役で演じる効果かな。
観劇中のヒポリタはとても優しいし、お茶目にはしゃいでいて可愛らしい。

そしてラスト、オーベロン・ティターニアによる祝福とパックの口上に続けて、ケルト音楽?っぽい妖精の歌(グローブ座の雰囲気にも似合ってる)に合わせ、妖精も人間も一緒に全員で祈りのような踊りをする。荘厳な中に「調和」「融和」を感じる終幕となり、これがすごく素敵だと思った。生きとし生けるものすべてが融和して存在しているイメージ。たまたま最近触れた宮沢賢治を思い出したりなど。

新ロイヤル大衆舎

新ロイヤル大衆舎が、再開したばかりのスズナリから生配信する『緊急事態軽演劇八夜』の第六夜に上演。大堀こういちさんによる潤色、1時間程にまとめられたリーディング夏夢。

そうそう、シーシアスとヒポリタは最初から幸せそうに結婚式を待ちわびているよね。これ台詞の言葉の表面上の意味だけだと完全にそうなので、ここにどれだけ影の事情を潜ませるかor潜ませないかはプロダクションに依るのだな。(残念ながら新国立のはどうだったか全く覚えてない💦)

この演劇おじさんたち4人だから、職人劇団にリアルがあった。ボトムが居ないから公演中止だよぉ(泣)とか、よーし上演できるぞヤッホーとか、このご時世この企画なだけにリアル。
最後のパックの口上もなんか沁みちゃった。
そう言えば新国立のを視た時も思ったんだった…
あの口上ではカンパニーと観客の繋がりを感じることができて嬉しいし、芝居ってまさに「夏の夜の夢」だよな…なんて思う。
素敵な気持ち☺️

休憩中の雑談で、転球さんのパックがなんかムカつくわーという話になって、転球さん的にはパックはどうしてもこのイメージ(甲高い裏声でやんちゃな子供らしく演じてた)だと言ってたり、かつて東京乾電池かな?の公演でパックがすごい気怠い感じだった(しかも原語混じり)などという話(長塚さん談)が聴けたのも楽しかった。気怠いパック…観てみたい。

ジュリー・テイモア演出(2014)

布と光とプロジェクションマッピングを巧みに使って作り出す幻想的な世界。ちょっとダークめでお洒落。

パックがだいぶ特徴的だった。白塗りのクラウンぽい外見で、すっごいアクロバティックな動き。キャサリン・ハンターさん上演当時57歳!?って衝撃!

オーベロン・ティターニア、シーシアス・ヒポリタは、4人別々の役者。

1幕1場は音響の効果もあってめっちゃシリアスでサスペンスドラマでも始まりそうな雰囲気だったけど、ちゃんとドタバタ喜劇になりました。

全体的に、人間っておバカだね〜😆という味付けが強いような気がする。
若者たち4人の乱闘がとにかく激しくて笑っちゃった!脱ぐし!あのお人形さんのようなオトメ女子ハーミアがキレちゃってね。
他のプロダクションでも、4人は衣服がだんだんボロボロになったり脱げていくという演出が多いようだ。普段被っている化けの皮がだんだん剥がれて本性が出てきちゃうことのメタファなのかな。
ドサクサで一緒にみんなで枕投げ始めちゃう妖精の子どもたちかわゆい。

あと、劇を観ながら酔っ払いオヤジになっちゃってるイジーアスにウケてしまった。ハーミア困った顔してたじゃん。これも "本性" を表現してるよね。あんなに権威的だったイジーアスなのにね。
ラストのダンスシーンはやっぱりニコニコしちゃうな。

Bridge Theatre(2019)

NTLive At Home のYouTubeで試聴。
これは白眉!オーベロンとティターニアの役割を逆転させるという驚きの発想!感心した。

1幕1場でヒポリタは何と!ガラスの箱に入っていて、不本意な結婚を強要され仕方なく服従している様が如実に表されている。
そのヒポリタと同じ女優が演じるティターニアが、オーベロン(こちらもシーシアスと2役)に魔法を掛けてやる側なのだ!

この演出のおかげで、ヒポリタとシーシアスの確執がどうして解けるのか、今まででいちばん納得できた。
ヒポリタとティターニア、シーシアスとオーベロンは、それぞれ表層と深層というような形でシンクロしていると考えられる。
森のティターニアは生き生きとして豪快な女王。(Gwendoline Christieさん大柄で華やかな風格たっぷりだけど少女のように快活!)
オーベロンは魔法でボトムに惚れさせられる、つまり自分の意志によらないことを強制され、これはヒポリタからの意趣返しを喰らったことになる。オーベロンの体験はそのままシーシアスの気持ちを動かし、シーシアスは人の話に耳を傾けることのできる寛容な人になった。(翌朝のシーンで妖精夫妻の台詞がリフレインする演出もあるが、この一連の流れを演技で汲み取らせるOliver Chrisさん素晴らしい!)
分かってくれたことがヒポリタも嬉しくて、2人の確執は消えた。
…そんなふうに理解しました。

また、このプロダクションはセクシュアリティについてを含む「通念を取り払うこと」を明確にテーマとして打ち出していると思う。
魔法を解く時にティターニアは
Be as thou wast wont to be;
See as thou wast wont to see:
って言うのね。台詞の文言は原作ママだけど、ここでは「元に戻りなさい」という意味ではなく使っている。
目覚めたオーベロンはギョッとして
What visions have I seen!(これも文言は原作ママ)
そこで
♪I can see clearly now the rain is gone…
という歌。(Johnny Nash 1972)
オーベロン、傍に寝ているボトムを見遣って一瞬泣いちゃう?怒っちゃう?…と思ったら空を仰いで吹き出しちゃって、ティターニアと晴れやかに仲直り。ティターニアも豪快に笑ってる。(ここの2人の芝居がすごく好き!)
Now thou and I are new in amity.
とティターニアが言うように、新しい関係性になれた2人。
♪I think I can make it now the pain has gone
All of the bad feelings have disappeared
Here’s my rainbow I’ve been praying for
It’s gonna be a bright, bright
Bright sunshiny day…
と歌が続き、劇場じゅうがレインボーの照明に包まれる🌈
通念・思い込みから解き放たれて、誰もが自分の見たいカタチで世界を見るのを許容すること。
その喜びを得た登場人物たちの祝祭感。

今回、世界各地でPrideのイベントが開催される週末に合わせてこれが配信されたことにも意図はあったに違いない。
通念や価値観を俎上に乗せて問い直すために、古典は良い材料なのかもしれない。

しかしまぁそんなことより、兎にも角にもこのプロダクションは観ていてサイコーに楽しいのだ!✨💕✨ということも声を大にして言いたい。
映像でも楽しかったけど、イマーシブを謳っているだけに劇場で観たらもっともっとワクワクしただろうな。
観客が立っているフロアにアクティングエリアが点在(時には山車のように移動)し、頭上にはエアリアルシルクで妖精が浮遊し、パックや若者たちが観客を掻き分けて走り回る。
観客も舞台の中・物語の中に居るような感覚を味わえただろう。
ボトム役 Hammed Animashaunさん抜群のコメディセンスで登場からずっと笑わせてくれるし歌も上手いし、劇中劇の熱演にはショーストップになってしまう程の大喝采!
オーベロンとボトムのラブシーンも本当に楽しくて、ビヨンセの曲に観客もノリノリでダンスフロア状態。ヒューヒュー盛り上がった直後の幕間に物販でお花のヘッドドレス売ってたら絶対買っちゃうよね〜!(帰りには RUDE MECHANICALS のトレーナーがもし売ってたら買っちゃうと思う)
カテコではキャスト観客入り乱れて大きなバルーンをポンポンしてた。物語ラストの祝祭感までそのまま体感できちゃうんだ!イマーシブ!

まとめ

夏夢、だいぶ好きです☺️
10月芸劇の野田&プルカレーテがめちゃくちゃ楽しみ!観れますように!

7/1追記:
5作目!BBCのTVドラマ(2016)もDVDで視た。
見所はヤバい独裁国家アテネと暴君シーシアス!
1幕1場のヒポリタはガラス箱なんてもんじゃない…縛られて猿ぐつわ💦
劇中劇のシーン以降の展開にビックリする、こんな夏夢もあるんだなぁ…


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