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ミュージカル『生きる』 Oct.27 [My楽]

🐇 上手前方席から観たラストシーン
🐇 悪役が担っている、作品の厚み
🐇 勘治の「生きた証」は…

追いチケして鹿賀さんコニタンでマイ楽。

初めて上手サイドに座ったけど驚くほど違う景色だったな。
渡辺家は玄関先がよく見えたし、市民課では黒江町の皆さんからの目線になった。カウンター越しに困り顔で応対する木村とか。

思惑どおり、ラストの光男の顔も見ることができた。ぐちゃぐちゃに泣いてるやん…
と言うか、あのシーンの父子をあの角度で見れて良かった。無言で見つめ合う父子を真横から。
光男は顔クシャクシャで口を大きく開けてるけど言葉にならないしたぶん慟哭の声も出ない。勘治は穏やかな笑顔だけど目で強く語ってる。ふたりの間にもんのすごい想いが流れてた。届いてた。
ふと上手寄りに目をやると清々しい笑顔でそれを見てる小説家。そうよね、この光景は前夜の勘治の様子を小説家が話して聴かせた時の光男の反応なんだから。

光男は、自分がこれから父親として男として大人として生きていくことを思っただろうな。勘治に未来を託された。(まぁ…これから高度成長期を担っていく世代なんだよね…)
去り際チラリと半身だけ振り向き光男を見遣って微笑み、ブランコに帽子を置いて、光の中に消えていく勘治。
光男は最後に手を伸ばすが、それは追いすがる寂しさや悲しみや生前理解し合えなかった無念とかではなく、父の背中を忘れまいと強く立っている姿に見えたよ。
下手席から見た背中の芝居も良かったけどね、今日はもっと光男が強さを得たことも感じられた。

そう、これまでは光男は "子ども" だったよね。
勘治が帰って来なかった時、嫁とケンカもしちゃってツンツンしてたけど帰宅した瞬間「お父さん!心配しましたよ」って、咎める口調ではなく優しくて子どもみたいな笑顔を見せたじゃん?ここの表現すごく良いと思った。それまで心配で心配で堪らなかったんだね。嫁や小説家やとよに対して硬い態度になるのも、人の話を聴けないのも、すっごい頑張っちゃってることの現れなんだよね。
「僕がどんなに傷ついたか!」という憤り、分かるよ…正に子どものもの。
初演では「あなたのことが分からない」という悲しみだったのがもう一歩踏み込んで「あなたへ届く言葉を探しています」に変わったというのはめっちゃナイスだと思う。
↑こういう全てを、村井くんはとても繊細に丁寧に体現しているから、嘘くさい話に見えないのかな。信じられる。

鹿賀さん「最後の願い」でグワーーーッときた😭凄い。いや、凄かった。一気に連れてかれた。

コニタンの歌声艶っぽいわーもちろん姿も。夜の街シーンでのダンスにもヒャッ💕てなるし、時折勘治へ向ける心配そうな視線の芝居も心に残ってる。小説家めちゃくちゃハマり役だね!

でもそれ以上に竜にい様の歌声が色っぽすぎて惚れる😍「金の匂い」でテンション爆上がりしてしまった!

アンサンブルの皆さんマジ素晴らしいと思う。病院の歌も助役の歌も役所のワルツもホント最高♪

なんだろうな、悪役の歌ほど楽しかったりカッコよかったりする味付けが憎い。
役所や病院の光景がめっちゃ楽しかったり助役がコミカルだったり親分が超絶歌ウマだったり。
物語的にグワッとくる箇所とまた別に、ミュ的に拍手喝采したくなっちゃうところがあるから何度も美味しい。

助役(最後も真ん中で紫色の光の中に仁王立ち)の存在と、最後の係長の言葉によってリアルが担保されている。夢物語やお伽話じゃない。
助役さんが歌っていたように「現実は厳しいし夢なんて見ない方がいい」というのもまた真実だから、ちゃんとそれに言及していることが作品の厚みになっていると思う。
これを背負ってるヤマニンさんたち凄い。

私、お涙頂戴が何より嫌いで、家族の話も老人の話も「夢は叶う」という話も「生きることって素晴らしい」という話もヘタするとゲッてなりがちだし、ショー要素で魅せてくれるのも好きだけどそれだけでは納得できないしミュ的高揚に誤魔化されたくないと思うタチなんだけど、これはホント好きな作品だった。なんならまだ観たい。
観ている2時間が間違いなく楽しい。観劇後すごく豊かな体験をしたという実感が残る。

あとね、勘治の「生きた証」は公園ではなくて、光男であり、小説家であり、部下木村であり。と思ったよ。
勘治と光男や小説家や木村くんやとよちゃんが繋がれたことと、黒江町の願いは結局助役や役所の人たちには響いていないということがすごく対照的だと思うのね。
本当に近くで直に触れ合った人へしか、伝えることってできないんじゃないか、とか思ったんだよね。(劇場で演劇を観ることの意味、とかもちょっと思ったりした)
どんなに強い想いであっても他人を動かせるほどに伝える・届かせるのってとても難しくて、ごく身近な範囲にしか届けることはできない。人ひとりの影響力なんてそんなもので。でも、小さいけど、確かに、伝える。届ける。手渡す。受け継ぐ…それが積み重なって拡がる。社会・世界を良くするにはそれしかないんだなって。それを諦めちゃいけないのかなって。

コニタン東京楽だったのでセカンドカテコ幕の降りぎわ鹿賀さんからそっと差し出された手に恥ずかしそうに応えて握手☺️コニタン堪らず鹿賀さんの肩を抱く☺️
カテコ、村井くんが終始ニコニコ笑顔なのがいいよなぁ。鹿賀さんの隣に居られて嬉しい☺️っていうのが全開で出てる感じ。

大千穐楽までどうぞ皆さまご無事で!

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