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MMAでのバスターは禁止にするべきか否か…

UFC女子ストロー級タイトルマッチ/5分5R
ローズ・ナマユナス vs. ジェシカ・アンドラジ
2ラウンド2分58秒、ジェシカ・アンドラジKO勝ち。女子ストロー級新チャンピオン

腕を捉えたナマユナス選手を持ち上げ頭から落とし失神させる…

壮絶な結末となりました。それはPRIDEの頃から凄惨なシーンを沢山見てきた僕でさえ、うわぁ~っと血の気が引く程のものでした。

プロレスの場合は受け身を取ります。鍛え上げたプロレスラーが受け身を取ったとしても死に至る事があるという事実、三沢光晴選手の悲劇を思い出せば。どれだけ恐ろしい技か言わずもがなでは無いでしょうか?

MMAの歴史でも何回か似たようなシーンがあり、KOにつながる事は稀ですが一部を紹介します。

マットヒューズVSカーロスニュートン
三角締めを極められ持ち上げたヒューズが途中で失神しますが叩き落とされた衝撃でニュートンも失神するという珍しい事例。

ヴァンダレイシウバVS桜庭和志
ギロチンチョークを極められたシウバが桜庭選手を持ち上げ肩から叩き落とします。桜庭選手は脱臼しながらもラウンド終了まで闘いますがTKOとなってしまいます。

ランペイジジャクソンVSヒカルドアローナ
三角締めを極められたジャクソンがアローナをパワーボムで一蹴。

ケビンランデルマンVSエメリヤーエンコヒョードル

例外です。やられた方が何事も無かったように一本勝ち。

今回、ナマユナス選手は頭を打ち付けられる直前まで腕を取って技をかけようとしていましたから受け身ををとりそこねKOされてしまいました。ナマユナス選手の勇気と信念が仇になってしまった形です。

そして当然、あれだけの衝撃映像ですから、1つの議論が持ち上がりました。

「危険なので禁止にすべきでは?」

僕も心情的には同じなのですが、手放しで賛成!とは言いにくい自分も居ます。

というのも、僕は「禁止事項を増やして技を制限するという方法論」はMMAの根幹を揺るがすものだと思っているからです。 

良し悪しは別としてMMAの本質を求めるなら禁止事項は出来る限り無くすべきです。

かつてPRIDEで四点ポジションの膝蹴りが解禁されたときも同じような議論が起こりました。


そのルールが解禁された途端、それまでKOされた事の無かった桜庭和志やアランゴエス(桜庭和志と引き分けた戦績あり)が、四点ポジションの膝蹴りによってKOされてしまったからです。

各専門紙で論争が起こり、色々な人が各々の立場から様々な意見を飛び交わせていたものです。
その中で骨法の権威・堀辺正史先生のインタビューがあり、細かい言葉は覚えていませんが要約すると以下のようなものがありました。


「新しい技術にはそれに対応出来る技術が生まれる。心配しなくても格闘家達は進化するから大丈夫だ」

桜庭ショックに咽び泣く僕に勇気を与えてくれた言葉でした。

実際、その後四点ポジションのKOだらけになったかと言うとそんな事は無く、対策すれば大丈夫というのものに落ち着きましたし、同時にレフリーやファンのリテラシーも上がり、危なくなったらすぐに止めるという流れになりました。

そもそもMMAという競技は大変危険なものです。危険だから止めると言うのであれば競技事態やるべきではありません。

死人が出てからでは遅いんだ!という意見も良~く分かります。命の問題なので非常に難しい議論ですが、MMAの特性を考えて欲しいとも思います。

MMAの他の格闘技との差別化や存在意義は
間違いなく

「限りなく何でも有りに近い事」

にあります。そのルールの中で
「技術で相手を制圧する矛」と「技術で自らの命を守る盾」
のせめぎ合いこそMMAの根幹だと思っています。

そして今回の一件で、間違いなく「バスターで相手を叩きつける矛」に対する「状況判断を素早くし、技を解除して受け身を取る盾」の技術研究が加速すると信じています。

人命は最優先です。
アジア最大の格闘技団体OneChanpionshipでも頭から落とすような投げは禁止になっていますが、僕はこれはこれで尊重したいし、解禁しろとは思いません。しかし、現状認められているルールを改正し、禁止事項を増やしていく行為事態はMMAの根幹を崩す事にもなると言うのが僕の意見です。

ですから脊髄反射で「危険だから即禁止」にするのではなく
禁止にするのであれば、選手、レフリー、ドクター、ファン、出来るだけ多くの人の意見をまとめて慎重に決めて欲しいなと願っています。

ナマユナス選手には、まずは心と体をしっかり回復させて、彼女の人生に大きな後遺症が残らない事を祈るばかりです。


MMAに栄光あれ…

(※こんなときヒクソンなら何て答えるか知りたく無いですか?誰かインタビューしてくれないかな。)

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