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格闘技はお好きですか?

格闘技を好きな理由は?

皆さんなら何と答えますか?

好きなものに理由なんて無いので、言語化は後付けの理屈に過ぎないのですが、あまりにもバシっと府に落ちる理由が見つかったので語ります。 

シンガポール発の格闘技イベントOneChanpionshipが開催され、その中の1試合です。 

●猿田洋祐VS◯ジョシュア・パシオ
タイトルマッチ
4ラウンド、膝蹴りによるKOで新王者誕生。

内容も素晴らしいものだったのですが印象が脳内に焼き付いたのは解説の青木真也選手の言葉の力によるところが大きかったと思います。

以下要約。

猿田選手の逆転KO負けを受け…

「猿田選手は優秀なアスリート。表現者じゃない。思想信念主義主張はどこでも誰にでも貫かなくてはならない。僕も試合になったら、ともかく固く勝ちに行く。」

試合前にはプロモーションの為に色々するが、試合になったらイベントやファンの事など関係無く、己の形で勝負するべきと言う事です。

…重いし、肝にズッシリ来ました。

青木真也は表現者です。言葉で周りを巻き込む事に長けています。その彼の言葉だからこその重みです。

猿田選手は前回の試合でチャンピオンになり人生が変わったそうです。無意識に日本やイベントを背負ってしまったのではないでしょうか?

青木選手の言う通り猿田選手は「優秀なアスリート」です。何が何でも「固く勝ちに行く」べきだったのでしょう。
猿田選手もそのつもりだったのでしょうが、そこで勝ったパシオ選手目線での青木真也の言葉です。

「勝負に行ったから勝てた」

勝負に行くというのは博打ではありません。やらなければならない事を、勇気と勝算を持ってやる!と言うことだと思います。
それを実践したパシオ選手は勝つべくして勝ったという事でしょう。


ここで言葉を体現している青木真也の
試合を紹介させて下さい。

VS中尾受太郎(2004年DEEP)

初々しいプロ2戦目の相手は百戦錬磨のベテランでした。怖いもの知らずの青木真也は有利に試合を進めますが、全くらしくない「ぶんまわすフック」で相手のバランスを崩し、追い討ちをかけたところにカウンターを食らい派手にKOされます。
「自分の形を貫く事の大切さ」の洗礼をプロ2戦目にして受けた事が青木真也のファイトスタイルに大きな影響を与えた試合ではないでしょうか。

VSシャオリン(2009年DREAM)

柔術世界王者との寝技師対決という戦前の期待を大きく裏切ります。
序盤からミドルキックを蹴りまくり空間を支配する青木真也。意表を突かれたシャオリンは手立て無く、ただただ蹴られるばかりで防御する腕がみるみる変色していきました。
結局ほとんど蹴りだけで完封勝ちし
「ムエタイって面白いでしょう?」
とファンをも一蹴。
今思えば、寝技でやりあっても良い勝負になったのでしょうが、蹴りだけで勝てるならばその先に進む必要は全く無く、相手が詰んだ状態であるならば尚更正しい訳です。
むしろ、攻められるべきは打開出来なかったシャオリンの方でしょう。
文字通り「空気を読まず自分を貫いた試合」です。

VS自演乙(2010年Dynamite)

ご存知、これは貫けなかった試合の例です。1ラウンドはスタンド打撃のみ、2ラウンドは寝技解禁という変則ルールです。
批判の集まる1ラウンドは全く問題無いでしょう。カッコ悪くても逃げ切れば良いのです。貫いているので問題ありません。
そして運命の2ラウンドです。緊張から解放された安堵なのか、仕掛けたタックルは勝負を急いでいるように見えました。
カウンターの膝を会わされKO負け。いつもの青木真也の仕事はもっと丁寧です。タックルに入るにも手順を重ねて近道はしません。
いつもの自分を貫けず雑に行ってしまった事が敗因だと思います。

VSフォラヤン(2019年OneChanpionship)

最後は先日行われたタイトルマッチです。これは「勝負に行った試合」でした。
一度KOして自信をつけた相手は「倒されなければ勝てる」というメンタルだったと思います。そんな相手に開始と共に距離を詰めてミドルキックでプレッシャーをかけ続けるというのは、気持ちで相手を上回っていなければ出来ません。日々の修練から生まれる一歩踏み出す覚悟の勝利だと思います。



「思想信念主義主張はどこでも誰にでも貫かなくてはならない」
「勝負に行く」

格闘家でなくとも僕たちは皆戦っています。

女も男も営業マンも農家も大工もプログラマーも…

戦う人に、すべからく大切な言葉では無いでしょうか?

格闘技は僕たちの「勝負」を最も単純に分かりやすく、原始的に可視化してくれるものです。
だから格闘技には心を打たれるし、選手にも感情移入するのだと思います。

以上、府に落ちた屁理屈でした。

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