見出し画像

英語のやる気はどう育つ? 言語学最先端の動機付け研究と「オンライン英会話」

「英語を使う未来の自分」を具体的にイメージすることが、英語学習に真剣になり、長続きするために重要だ。「英語を使う未来の自分」への強い思い入れと、そのために時間とエネルギーを投資する気持ちこそ、英語のやる気のもと。

言語学の最前線の「言語学習の動機付け学説」“L2 Self” を紹介し、「オンライン英会話」で「英語を使う未来の自分」を具体的にイメージするコツを探ります。

「英語を使う未来の自分」のイメージとやる気
やる気の研究、言い換えると「動機付けの研究」では、従来から自分の中から生まれるやる気「内発的動機」と、外の環境の報酬に対して生まれるやる気「外発的動機」が重視されています。

英語の勉強についておおざっぱに言えば、英語っておもしろい、英語がわかるようになった、と知的好奇心によって生まれるのが「内発的動機」。英語の試験の成績、入試、昇進などのための勉強は「外発的動機」という説明です。


イギリスで言語学の動機付け研究の最先端を行くZoltán Dörnyeiは、グローバル時代の英語をはじめとした言語の学習を「内発的動機」と「外発的動機」で説明するのは難しいと、新たに “The L2 Motivational Self System” という考えを提唱しています。略してL2 Selfとここではよびます。


L2とは、第一言語ではない言葉で、この記事では英語。Selfは自分です。つまり英語を使う自分。そのイメージが具体的で強ければ英語の勉強は真剣になり続くし、英語を使う自分のイメージが希薄だと勉強が続かないという学説です。

ヨーロッパ、アフリカ、アジアなど様々な国から、「英語を使う未来の自分」のイメージを育てることが、英語学習のやる気の向上に役立つと報告されています。

10年程前、この学説を初めて読んだとき、日本にとって重要な問題提起だと思いました。日本の多くの人にとって英語が自分に重要なのかよくわからない。漠然と英語が大事で将来に役立つと思うけど、具体的にどう役立つかはわかならない。親やまわりを見ても、英語を使っている人はあまりいないし、自分の今の生活も英語とは関係ない。


日本人の英語学習で動機づけや継続が難しいのは、この「英語を使う未来の自分」のイメージの希薄さ、自分の将来と英語の接点がわからないことに大きな原因の一つがあると考えるようになり、機会があるごとに確認してきました。


実際、日本の大学の授業で英語を何のために勉強するか、将来英語をどう使いたいかと聞くと、漠然とした答えが非常に多かったのです。「将来英語を使った仕事をしたい」「外国人と話せるようになりたい」「外国に行ったときに英語で話したい」。でも、そのイメージについて聞いてみても、漠然としているのです。


世界でも珍しいほど、日本は日本語だけが使われる社会(近年の変化は大きいと思いますが)なので、日本の国内で暮らしながら、日本語以外を使う自分のイメージが育ちにくいのはわかります。


実際、日本の学校での英語教育では、英語の面白さ、わかるようになる面白さを重視する内発的動機付けと、英語のテストの点数や、その結果の入試や昇進などの外発的動機付けはよく知られています。けれど、「英語を使う未来の自分」について考える機会はあまりない。


英語を話す自分の将来の姿についてもっと考え、具体的なイメージを育てることが、英語力を伸ばすのに効果があるというのが、この学説の示唆です。


実際、ヨーロッパで英語を勉強している若いヨーロッパ人と話すと、英語を使って何をしたいか、自分の将来に英語がどう役立つかを具体的にイメージしている人が多かったと思います。その社会的な背景は、ヨーロッパでは英語を使って暮らしているノンネイティブの人が身の回りにいたり、そんな人の話しを聞くことが多いこと。あんな風になりたいと思う英語の使い手のロールモデルが身近にいること。つまり、英語を使う未来の自分がイメージしやすい環境にあると思います。


L2 Selfについて日本でも研究されています。「英語を使う未来の自分」がイメージしにくい日本の学校でも、たとえば高校生が学生の英語会議に参加したり、短期留学すると、自分がどう英語を使いたいかイメージが具体化し、英語学習の動機付けや英語を使いたいという意欲に結びつくことが報告されています(後注)。


「オンライン英会話」で英語を使う自分のイメージを育てる
そこで、日本で暮らし、英語と自分の接点がよくわからない方にとって、「オンライン英会話」を使うことは、英語を使う自分を具体化にイメージする方法としていいのではないかと考えているわけです。

留学や学生会議、英語を話す友人などを、簡単に、自分の都合のいい時間に、気軽に探すのは困難です。でも「オンライン英会話」なら、一人で、いつでもできて、コストも割安、リスクも低い。


最初の記事で「オンライン英会話」を続けると、英語観が変わる学生が多いと書きましたが、実際受講した学生の多くが、英語を使う自分がをより具体的にイメージできたと答えています。こんなに世界中の多くの人が英語を使っているのに驚いた、自分も英語を話す人の仲間に入りたいと。


「オンライン英会話」では講師の年齢が20歳前半から様々な人がいるので、自分と同じ年頃の人を講師に選び、英語を使うノンネイティブのお手本、ロールモデルを探し、あんな風に英語を使えるようになりたいと思うのもいいと思います。英語を使うとどんなことができるか、講師の人とディスカッションするのも楽しいです。


「オンライン英会話」で英語を使う自分をイメージし、話すのに自信をつけてから、学生会議に参加したり、留学すると、いっそう英語を話すのが面白くなり、「英語を使う未来の自分」がますます鮮明になると思います。

すぐに英語を使う将来の自分のイメージはわからなくても、意識して考えていくと英語学習のやる気が育つと思い、大学の授業では意識してそのような機会を作っています。


注:L2 Self についての日本の研究の例

Ryan, S. (2009). Self and identity in L2 motivation in Japan: The ideal L2 self and Japanese learners of English. Motivation, language identity and the L2 self, 120-143.

Yashima, T. (2009). International posture and the ideal L2 self in the Japanese EFL context. Motivation, language identity and the L2 self, 86(1), 144-163.




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?