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「オンライン英会話」のメリット・デメリットを検証。

「オンライン英会話」のメリットは、安く、いつでも、どこでも手軽にマンツーマンで英語が学べることです。
デメリットは、ITに慣れていないと苦労する、講師や授業の質が一定しない、教え方やカリキュラムに不安があるということでしょうか。


この記事では私の専門領域になる英語の学び方に焦点をあて、よく言われる上のような「オンライン英会話」のメリット・デメリットをじっくり考えたいと思います。特に、講師の質、教え方やカリキュラム、マンツーマンの長短所について今まで学んだり、考えたことをまとめます。


講師について
まず、講師の質です。特によく言われる「ノンネイティブ」の英語講師では不安、なまりがある、英語講師の資格をもっていないのが不安、などの指摘を考えます。


結論から言えば、「オンライン英会話」講師の質は総じて高く、ノンネイティブだからネイティブ英語講師より劣ると私は考えていません。以下その理由を説明します。


まず「ネイティブの英語講師の方がいい」というのは、日本人をはじめ英語学習者が陥りやすい錯覚です。ネイティブでもノンネイティブでも、いい英語講師もいれば悪い英語講師もいます。ネイティブとノンネイティブの言語の習得過程は違うので、単にネイティブで英語が流暢なだけでは優れた講師になれません。


実際、私はネイティブ講師を売りにしているオンライン英会話を受講したこともありますが、必ずしもいい講師ばかりではなく、いい講師の割合が特に高いとも思いませんでした。細部にこだわりが激しすぎる講師、いいかげんに流している感じの講師など、教え方ややる気に疑問の講師もいました。


英語を外国語として学ぶ人への理解や教えるのに適した性格、そして教えることを楽しめる講師であることの方が、ネイティブ・ノンネイティブの区別より遥かに大事です。


この点を、別の角度からも考えてみたいと思います。英語のネイティブの講師とは、どこの国の人でしょうか。お隣の韓国ではネイティブ講師のビザが発給される国は7ケ国に限定されているそうです。全部思いつきますか?

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アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドあたりはすぐわかります。あとはアイルランドと南アフリカです。多くが、日本より最低賃金の高い国ですし、ネイティブ講師の給料は国籍にかかわらずノンネイティブより高いのが世界一般の傾向です。


つまり、ネイティブの講師を雇う給料は世界的に高く、優れた講師を雇うにはさらに高い対価が必要です。手頃な価格で提供される「オンライン英会話」では、優れたネイティブ講師を確保しにくいのです。


一方、一般的なオンライン英会話の講師はフィリピン人などの英語ノンネイティブが中心です。日本より最低賃金が遥かに低くて英語が得意な人が多い国を選んで集中的にリクルートしているので、手頃価格のサービスの会社が払う給料でも比較的講師を雇いやすい。すると、教える意欲や知識、教えるのに適した性格の人などを選別して雇うことができます。

この「オンライン英会話」の国際賃金格差を利用したビジネスモデルについては、私はいろいろと考えることがあるので、後日別の記事にまとめたいと思ってます。


実際「オンライン英会話」のビジネスモデルでは、ノンネイティブ講師はネイティブ講師より、採用過程でより厳しい選抜に晒されるようです(英語の就職掲示板等の情報にもそうあります)。結果的に英語力が高く、アドバイスが的確なノンネイティブ講師が多くいるわけです。

私が「オンライン英会話」を取ったときも、中学や高校の現役の先生、英語教育歴数年以上の経験の豊富な講師、いろいろな工夫をして楽しい教え方をする講師など、同じ英語講師の目からみて感銘するノンネイティブの講師にたびたび出会いました。


そういうわけで、私は確信をもって、ノンネイティブ講師を中心とした「オンライン英会話」サービスで、かなりすばらしい講師たちに会えると考えています。


それでもネイティブに習ってみたいという好奇心は私もなんとなくわかります。そんな方は、値段は数倍ですが、ネイティブ中心のサービスを一度試して比較してみることをお勧めします。

アクセント
ノンネイティブ講師の英語力はわかるが、アクセントが心配という方がいます。私は次の理由で、それは杞憂だと考えています。


心配1:アクセントのある英語は聞きずらい
多少アクセントがある英語を聴くのはグローバル社会ではあたりまえなので、いい聴き取りの練習になります。
もし心配なら、「オンライン英会話」以外の場所で、アメリカやイギリスの「正統」英語を聴けば、違いもわかり多様な英語を聞き取れるようになると思います。


心配2:アクセントのある講師がお手本になるか心配。
私が出会ったほとんどの講師が、英語の会話がうまく、チャットを使った指摘も的を得ていて、多少のアクセントがあっても、日本人の手本になる優れた英語の使い手だと思いました。

もし、講師の英語力が自分より下手で練習にならないと感じるのであれば、すでに「オンライン英会話」を卒業するべき英語のレベルなのかもしれません。けれども、大多数の日本人には「オンライン英会話」は充分に挑戦的なトレーニング環境を作ってくれると思います。


心配3:講師のアクセントが自分の英語に移るのが心配。
多少アクセントがある人と話しても、そう簡単にはアクセントは移らないものです。その心配をするより、安価でたくさんトレーニングできるメリットが遥かに大きいと思います。アクセントがどう移るか、学術的な根拠になる論文に出会ったことはありませんが、イギリスに長年住んで、多くのマイノリティが、何年たっても自分のお国訛りのアクセントで話して続けるのが当たり前なのを見てきた実感です。

カリキュラムや教え方
「オンライン英会話」で英語を教えてもらえると考えていると、カリキュラムや教え方が整っていなくて不満があるかもしれません。ちゃんと教えてくれない、カリキュラムがその場しのぎ、ほめるばかりで文法などの間違いは無視しがち。などがよく聞く苦情でしょうか。


しかし講師になったつもりで素直に考えててみてください。1回25分の細切れの授業です。事前には生徒がどんな人かほとんどわからず、レッスン前の準備もなく、目まぐるしく30分ごとに生徒が入れ替わり、もらえる給与は発展途上国でも最低賃金に近い時給300円ぐらい。そんな状況で英語を「ちゃんと」教えることができるでしょうか?


私は英語教師をやってきた経験から、不可能と断言できます。ある程度は経験をもとにその場の即興で教えられますが、個人にあわせた長期的な学習計画などは立てようもありません。

実際、英語の転職掲示板などで「オンライン英会話」の講師の情報交換を読むと、講師には英語を教える資格は求められず、採用後の研修でもオンライン英会話で必要な簡単な教え方のテクニックを学ぶだけのようです。それでも「オンライン英会話」の講師に求められるルールは苛酷で、これも後日記事にまとめてみたいと思っています。

このような事情から、私は一般的な「オンライン英会話」を受講して英語を「教えてもらうおう」と期待すること自体に無理があると思います。むしろ、英語を使いながら自ら学ぶトレーニングの場であり、講師はそのパートナーと考えるべきだと考えています。私たちが払う対価はそれ以上を望むレベルではないし、「オンライン英会話」ビジネスモデルも英語教室の機能を前提とはしていません。

言い換えると、自分の英語上達戦略は自分でしっかり立てて、その達成のためのトレーニングの場として「オンライン英会話」を賢く利用するべきというのが私の考えです。


テニスの練習で言えば、「オンライン英会話」の講師は長期戦略を立てて技術指導をしてくれる「コーチ」ではなく、生徒が自分で決めた課題の克服や技術を身に着けるためのトレーニングをするため、選手のニーズに寄り添って打ちあってくれる「ヒッティングパートナー」です。

その「ヒッティングパートナー」の役割でも、私たちが払う対価には充分すぎるサポートをしてくれると私は考えています。それに、もっと率直に言えば、講師だって人間、何時間も英語を教え続けていたら、ついついお手軽に世間話しでレッスン時間を消化したり、決まりきったテキストレッスンを適当に選んで楽に流したくなるのも、ある程度理解できます。


そんな事情があっても、「オンライン英会話」で自分にぴったりのトレーニングをするには、主体的に計画を立て、講師にわかりやすくやりたいレッスン内容をお願いするのが重要で、それは生徒の責任だと私は考えています。この英語の学習プログラムの立て方や戦略も後日記事にまとたいと思っています。


もし「ちゃんと」英語を教えてもらいたいなら、「オンライン英会話」でも、同じ先生が担任となって最適なレッスンプランを作って教えてくれるサービスがあります。ただ、こんな個人レッスンサービスの費用は高いので、その価値があるか、試して判断されるといいと思います。


マンツーマンレッスンの長短所
「オンライン英会話」はマンツーマンなので、25分好きなだけ話せます。これは45分から90分まで長さはいろいろあるものの、自分の考えを伝えるために英語を使う機会がほとんどないことが珍しくない(あるいはほとんどない?)中高や大学の授業とは画期的に違います。英語でたくさん会話し、英語を使いながら上達する訓練の場として理想的です。


さらに、自分の英語レベルにあわせたレッスンができるので、難しすぎる練習で自信を失ったり、知っていることに過剰な時間を使う退屈なレッスンも不要です。


まわりに他の生徒がいないので、恥ずかしがる必要もないし、自尊心が傷つけられることもないはずです。英語の上達の過程では、特に初期に、思い通りに話せずに悪戦苦闘する「すごくカッコ悪くて落ち込む時期」が必ずあります。講師たちは、そんな時こそ優しく励ましてくれます。人前で失敗をさらさず、こっそりカッコ悪い時期を通りぬける一番いい方法が「オンライン英会話」だと私は考えています。


しかも、興味にあった英語だけを練習できます。自分が全く興味のないテーマの英語を我慢して読む必要もありません。


こうやって並べると、マンツーマン授業はいいことばかり、問題はないのでしょうか?

私は2つの大きな課題があると思います。どちらも生徒自身が解決しなくてはいけないやっかいな問題です。


まず、一人でレッスンを取り続けるための意志とやる気が必要です。同じ先生が監視してくれたり、成績表があるわけでもなく、ちょっと気が滅入ったり、面倒に思ってレッスンを休むと、あっという間にレッスンを取らないままに日がすぎます。


とりわけ「オンライン英会話」のレッスンで思うように英語が口に出なかったり、聴き取れなくて自信をなくしたり、知らない外国人と話すのが怖くてストレスがかかったりと、「オンライン英会話」が嫌いな気分になると、なかなか次のレッスンが取れないものです。
英語の「やる気」の育て方は、あらためて記事にまとめる予定ですが、忙しい毎日を送る私たちには、ありがちな状況です。

もうひとつは、どんな英語を勉強したいかわからず、ほんわりと英会話レッスンをいきあたりばったりで「教えてもらう」だけだと、あまり効果が感じられないことです。毎回、同じような趣味や映画の話の世間話にはあきてしまうし、その場で適当な英語の教材を選び、読んで予め決まった質問に答えるスタイルではマンツーマンの良さがあまり感じられません。


上ですでに書いたように、「オンライン英会話」のマンツーマンのレッスンを生かして英語のスピーキング力を画期的に変えたいなら、自分がどんな英語力を身に着けたいかはっきりと自覚し、自分でやりたいことを講師にどんどん提案する必要があります。マンツーマンのレッスンを使ってスピーキング力を伸ばすための作戦は、いくつかの実例を入れて、別の記事にまとめたいと思っています。


というわけで、今日は長くなりましたが、オンライン英会話のメリット、デメリット、そしてよく聞く批判について考えてみました。

明日は、「オンライン英会話」が英語のコミュニケーションン力の習得にどう役立つか、言語学の視点で考えてみます。

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