『意味のイノベーション』を主題に冠する国際学会”4d conference"から得たインスピレーション(思索メモ)

先日、10/21-23(オープニングイベントを含むと10/20-23)大阪国際会議場にて開催された「意味のイノベーション」をテーマに据えたデザインの国際学会である4d conferenceに出席した。
学会のチェアでもあるお世話になっている先生の勧めもあり、当初は論文投稿を目指したもののフルペーパーを書き上げるに力(頭)及ばず、抄録の投稿と口頭発表での研究発表の機会をいただく運びとなり、自身としては挑戦的かつ意欲的なテーマであったこともあって未消化・未完結の発表となってしまい、発表後の質疑応答では研究の仮説設定、および提案したフレームワークの至らぬ点に対する愛情あふれるとってもキビシイ突っ込みをセッションチェア直々にいただくなど反省点は多々ありながら(汗、自身にとってはじめての国際学会での口頭発表の機会となりとても良い経験になった。
(余談ではあるが、この学会の前週まで出張先のカナダで述べ5日間の足止めをくらったことも重なり、10月は人生の新たな経験値を積みまくりの月となった。ありがたい、ありがたい。。。)
自身の発表はこんな感じで、未だ研究・実践中であるがぼくの研究のことなんてものはどうでもいいのだ。
(ごめんなさい。ちょっとばかり手応えを感じたので、この実践的研究は引き続きブラッシュアップします。)


なにより、学会2日目に行われたDean of the School of Design at NewSchool of Architecture & Design in San Diegoで教鞭をとるElena Pacenti先生の

”from designing to projecting for new humanism”

と題された基調講演が非常に興味深く、今後のデザイン(デザイナー)の役割について示唆に富んだものであったので、自身の整理と記録のために書いておきたい。

講演の冒頭で、

・現代はますます複雑なシステムをデザインすることが求められているが、多くのことはテクノロジーの進化によってもたらされる方向に偏重しがち
・デザインは誰もが取り組める活動として民主化されつつあり、人々の営みにおいて普通のこととなりつつある
(筆者意訳解釈)

という2つのムーブメントが提示された。
そのような背景が強まってきているからこそ、デザインは次のステージに進むべきであり、その進むべき(変化?進化?すべき)方向の捉え方であり、新しい文化として提示された考え方が、

デザインからプロジェクトへ (form design to project)

というものであった。

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projectという言葉には、「投影する」という言葉の語源として「遠くへ飛ばす・投げる(to throw ahead)」という意味があるらしい。
これからのデザインとは、まさに本来あるべき・起こるべきことを想像し(to imagine)、ビジョンとして明確化し(to envision)、現状を超えるものを見る(to see beyond exist)行為である、と提言した。
自分自身もこれまで幾度となく、これから未来に向かう中でdesignという表現を今後どのようにアップデートというか、捉え直せばいいのだろうか?と適切な言葉について逡巡していたが、Elenaの言った”envision”こそが、現時点でもっともしっくりくる表現なのではないかと感じた。
もちろん、別にデザインという言葉を捉え直す必要はないのかもしれないけれど、長い歴史の中で”デザイン”という言葉はあまりに使い勝手がよかったこともあり、いろいろな意味を担わせすぎたのではないか?これからの”デザイン”の役割をより明確にする意味においても、その意味をより捉えやすくしたほうがいいのかもしれない、ということを実務家としてデザインが担うこと、貢献することを現場に落とし込む立場のひとりとして悶々としていた、というのが正しいのかもしれない。
とにかく、”envision”という捉え方は非常に腑に落ちた。

そして、「知ること(knowing)」と「見ること(seeing)」、そして「考えること(thinking)」の3つが融合することによってうまれる「想像すること(imagining)」が、単に問題を解決を解決する(problem-solving)だけではなく、

・構想(to envisioning)
・機会(to opportunity)
・センスメイキング(to sense making)

を生み出すエンジンとなるべき、デザインのこれからの役割を明示した。

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加えて、projectingとはアイデアを発想することに重点を置く従来のデザイン思考的なデザインアウトカム以上に、アイデアに対して批判的に捉え直し(critical sense)具体的に物体化(materiarize)することと、実用的な落とし込みの状態を見極めること(practical sense)を組み合わせることである、という提言もなされた。

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一連のElenaの話は、ここしばらく個人的に『意味のイノベーション』について興味を持ち、時分なりに解釈を試みながら実践で試しつつある僕の視界を実にクリアしてくれた。
講演の終盤で彼女が言った、

「デザインするということは、理解すること(understanding)ではなく意味を翻訳するという行為(interpriting)になってゆく」

という。

デザインという行為が誰にでも開かれ、民主化され、参画しやすい(すべき)営みになりつつあるいまの社会であるからこそ、デザイン、およびデザインプロフェッショナルが担うべき役割と貢献価値について非常に論理的かつビジョナリーな提言であったと感じた。


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