イオンモールは十徳ナイフ。 #おいしい監察 #フィールドワーク

先月の6日にフィールドワークを行った。場所は、イオンモール多摩平の森。そのアウトプットを書かなければ……と思いつつ長らく筆が進まず、気が付けば残暑も落ち着き9月の終わりが近づいているではないか……。

ここまでくればもはや遅筆というより完全に怠慢。言い訳をする余地もないほどの申し訳無さを抱えつつ、記憶の断片とノートのメモを頼りに、フィールドワークの感想をここに記しておこうと思う。

今回の観測テーマは、「イオンモール多摩平の森にいるスタバの人たち」。普段渋谷周辺を拠点に活動する僕にとっては、郊外のスタバは興味深い場所である。

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11:27 スタバ入店。この時点で、84名程度入る店内にいるのは10人程度。僕は店の奥の方に座っていて、その場所からはっきり確認できるのは、男性4名、女性2名の計6名。全員が一人できており、PCを開いているのが男女1名ずつ。本を開いてノートに何かを書いている人が3名。そして、何をするでもなくスマホをいじる人が1名いた。大学生なのか、分厚い参考書を開いて勉強をしようとしてそのまま携帯をいじってしまっているようだ。ちなみにPC利用者の中にMacを利用している人はいない。

ドリンクは、ホットを飲んでいる人が2名でアイスが3名。そして、水筒を持参している男性が一名。サイズはショートにグランデにカップ付き(フラペチーノ系?)と、さまざまである。

皆、それぞれに勉強をし、スマホをいじり、本を読み、長期滞在を前提としたスタイルのように感じる。待ち合わせをしている様子はほぼなく、「スタバにきて何かをする」ことが目的なのだろう。

人の出入りは多くない。PCや本、貴重品の類の一切を置いたまま10分近く離席する人まで現れ、ここのスタバは時間軸が渋谷とは違う。当たり前か、ここは多摩平の森だ。なんせ立川を越えてやってきている。僕の滞在した30分強で、新たなお客さんが来たのは3名。店内はさながら図書館のように静か。席数に対して客数が少ないため、プライベートスペースも十分に確保でき、これほど快適な空間はないように感じた。

こんなスタバが渋谷にもあればいいのに……と思うが、こんなスタバがある場所はもはや渋谷ではないだう。

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と、このように僕は1時間弱くらいの間、イオンモール多摩平の森のスタバを定点観測していた。フィールドワーク第2回目にして感じた難しさは、「先入観」との戦いだった。「都心と郊外におけるスタバ利用者の違い」みたいなぼんやりしたテーマを持って臨んだものの、「都心のスタバ利用者」は自分の頭の中のイメージでしかないし、そのイメージに都心のスタバ利用者を当てはめて、その上で「郊外のスタバ利用者」像を洗い出そうとしているようにも感じた。

たかだか1時間で何か正解へと導けるものでもないだろうに、脳内にある「正解」との答え合わせをしているのではないだろうか、という疑念が残った。フィールドワーク、あれこれ考えすぎるのも良くないな。ちゃんと溶け込めるよう、目をさらにして次回は臨みたい。

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イオンモールに来る人たちは、さまざまだ。

ブラっと適当に寄って靴屋さんの前のソファに誰を待つでもなくただ座ってるおじさんや、屋上の遊び場ではしゃぐ子どもたちを横目に日陰に佇むお母さんたちや、お昼時にフードコートでやっていた紙芝居を見るともなく見ている家族たち。みんな、イオンモールでしたいことがあって来るという感じではなく、イオンモールに来ることが目的、という印象があった。

イオンモールには、洋服屋があり、スタバがあり、ゲーセンがあり、本屋があり、遊び場があり、フードコートがある。全知全能の神ここにあり、といったように、私たちが求めるあらゆるすべてが揃う場所だ。それが故に、すべてが平均点前後のクオリティで成り立っている(ように感じられる)。僕も出身が地方だったから分かるが、ちゃんと洋服を買いに行こうと思ったら片道30分から1時間ほど掛けて都心へ向かわなければならないし、カフェや映画を見たり、デートする場所は地方だと限られてくる。それこそ、イオンモールは特に若いカップルにとって無難な場所かもしれない。(その無難さが、今の僕には何一つ響かなかっただけなのだが……)

僕は普段の生活が渋谷を中心とした都会っ子なので、基本的に日常生活の延長線上にイオンモールは存在しない。そして、外出する際は目的が比較的明確なため、「総合ショッピングセンター」は煩わしくてかなわない。一つで何個の役割も担う十徳ナイフは、かえって不便になる。

子どもや両親、親戚などと一緒に行くイオンモール。これほど助かる場所はない。しかし、東京の都心であくせく働く今の僕は、器用貧乏な(風に感じてしまった)イオンモールを必要としていないらしい。

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