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ただ好きだというだけで。

演奏会が終わって、そろそろ一週間。
この演奏会を終えるまで非常にいろんな感情があって、次に向かうことができずにいたのだけど、ようやく整理がついた。


わたしは自分の所属している吹奏楽団が、とても好きだ。めちゃくちゃ好きだ。団員であるけど、ただのファンでもある。
ファンだからこそ「こうでなきゃ」「こうあって欲しい」みたいな理想も持っていて、その理想は、もしかしたら団内でいちばん強いかもしれない。

でも それは『理想』なのだ。しかも『私ひとりにとっての』。妄想、勝手な押し付け、と言い換えてもいい。
だから理想と現実とはぜんぜん違うこともある。それはいいとか悪いとかじゃなくて方向性の違いとか相性とかの関係ってだけだったりするし、現実のほうが理想より素晴らしいこともある。わたしの理想なんて ただの個人の感想なのだから、そういうものだ。

だから私は、私の理想をこの団に押し付けたくない。
そもそも一人だけの都合を押し付けるものでもない。価値観もスタイルも優先順位も違う人間が集まっているのだから、誰か一人が正しいなんてことは絶対に言えない。その『違い』を寄せ集めて進んでいけばいいし、『違う』という大前提に対して自分がどういう立場に立つのか、それをしっかり軸に出来ればいい。集団っていうのはそういうものだ。

そう思っているくせに、そこで止まれない瞬間がある。
あるいは、もう少し主張したほうがいいのに、飲み込んでしまう瞬間がある。
その辺りのバランスを取るのがわたしは非常に下手くそで、今回のシーズンでは そういう自分にちょっと疲れた。
疲れたからと言って正直に「疲れた」とも言えない。誰にどういうタイミングで言ったらいいのか、相変わらずそこでストップしてしまう。毒を吐き出せなくて自家中毒を起こす問題は まだ解決していない。(が、これはまた別の話だ。)それで余計疲れるのだから世話ない。


そういうシーズンだったわけだ。この演奏会に向かう数か月は。
そうやって迎えた本番は、終わった時に何の感想も浮かばなくて、我ながらびっくりした。
悪くなかったと思うけど、良かったかと言われると よく分からない。
楽しくなかったはずがないけど、楽しかったかと言われると断言できない。
しかしどうやらお客さんやアンケートの反応を見る限り、自分で言っちゃうけどけっこう素晴らしい演奏会だったようで、なのにこんな状態の自分って何なんだろう、と ずいぶんダメージを受けた。

このまま続けていくと、わたしは音楽やこの場所を嫌いになる気がする。
本気でそう思って、三日三晩悩んだ。比喩ではない。数時間の誤差はあるが文字通りだ。演奏会が土曜日に終わって、わたしはこの答えを水曜日の昼間に出した。

わたしは楽器だってうまくない。ちょっとうまくなったかも、と思っても、同じパートのメンバーを見るとぜんぜん敵わなくて へこむ。
耳がいいわけでもない。リーダーシップがあるわけでもない。裏方の能力が高いわけでもない。
多少威張れることと言ったら、曲中の移動がわりと早いことくらいだ。そのほかは特に自慢できることもない。練習には出来る限り参加しているとか(出席率は仕事の関係なんかもあるので、欠席が多いからって悪いわけではない)、なので各種の連絡はよく聞いているとか、合奏中にきちんと反応するとか、引っかかるところは確認するとか、目標を立てて練習するとか、あとは掃除やら片付けやら雑用やら、そういう誰にでも出来ることしかできない。
そんな奴がここにいてもいいのかなって悩んだこともあった。でもそれは、もう しばらく前に終わった。演奏ならうまくなるしかない。自分で自分が認められないのなら、理想の自分になるしかない。そんなこともやらないでぐちぐち言っている奴こそ、この場所にいる資格がない。そう思ったから。

そう思ったのは、ここにいたいと思ったからじゃないか。
足りなくても情けなくても、それでもいると決めたじゃないか。この場所で続いていく物語と繋がっていたいと、そう願ったのはお前じゃないか。
それを、今更、ギャップがあるからって立ち往生して、どうする?

引っかかりの原因が解消されないかと、たしかに いろいろ試したりはした。
でも全部じゃない。まだ全部じゃない。諦めるにはまだ早いし、諦めるなら、もう、遅い。


この場所が好きだ。
ただそれだけが、ずっと真ん中にある。


これからも追いかけていこう。
この感情が続く限り。



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