春の遊泳。

画像1 土煙を巻き上げ、歩道から山から轟く春が押し寄せている。土の奥底の生命が吹き上がる、桜の満開。
画像2 峠の先へ先へ走るほど、視界のほとんどが淡いピンクにひらめいている。夕方の空は胡粉を掃いたような薄淡いトキ色。映し取る川は溶けた飴のよう。
画像3 黄色にピンク、緑の葉叢に眼ごと頭ごと突っ込んで、玄関口にたどり着いた末、ようやく我にかえる。
画像4 ホーローの盥に移るのはいつだろう。じっくり見る暇もない。靴音、手や頭の影に、私自身が気付く前に飛んで隠れる。ああ、手ずからオタマで掬って、あの真っ白な器に放ちたい。
画像5 少しずつ青みが力強くなっている。雪に人にネコにテン。諸々踏みつけられても、あのふしぎな染み入る青が必ず湧き出す。それぞれ必要なことを必要なだけ、ちょうど良い頃合に。寄り道や定点、行く先々で、あちらこちらの今を嗅ぎ歩いている。

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