つなぐこと

画像1 こんなに食い入るように氷柱を見たことはなかった。風と気温の変化で刻々と光の入り具合が変わってゆく。その青や黄、白の輝きに、かつて出会った老婦人を思い出した。ショーケース越しに柔らかい笑顔で、切れた結婚指輪を繋いで欲しいと話された。指が太くなって自分の指輪の代わりに、亡くなったご主人のものをずっとつけているとのこと。ケースのとりどりのアクセサリーには目もくれない。純金だとよく切れるんだけど、そんなこと構わないからまた繋いでと。そう…他の何にも変えられない、美しい笑顔の人だった。
画像2 ものは持ちすぎると重くなり、こだわりすぎると見えなくなる。特にそんな風に思っていた頃だったから、彼女の想いの深さに圧倒された。切れた指輪の端に触れながら、立ち去る背中を見送った。いまも瞬間に刻まれる永遠が好きだが、こんなとき、あのふっくらとした笑みを思い出してしまう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?