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【宇宙の基礎講座プレイベント】月面探査の歴史とこれからの月面計画

2023年9月6日にコスモ女子は【宇宙の基礎講座プレイベント】を開催しました。
第一弾は寺薗淳也氏(以下、寺園氏)を講師にお招きして「月」をテーマにした勉強会、『月面探査の歴史とこれからの月面計画』についてお話しいただきました。

<プロフィール>
寺薗淳也氏

東京大学大学院博士課程中退。宇宙航空研究開発機構、会津大学などを経て、現在合同会社ムーン・アンド・プラネッツ代表社員。有限会社ユニバーサル・シェル・プログラミング研究所(USP研究所)上級UNIXエバンジェリスト。NPO法人日本火星協会理事。
専門は惑星科学、情報科学。月・惑星探査及び宇宙開発の普及啓発をライフワークとしている。
著書は『夜ふかしするほど面白い月の話』(PHP研究所、2018年)、『宇宙探査ってどこまで進んでいる?』(誠文堂新光社、2019年)など。


まずは知ろう!「中秋の名月」と月の基礎知識について

まずは寺薗氏より、「中秋の名月」についてお話しいただきました。
毎年、旧暦で8月15日の月を「中秋の名月」と呼ぶそうで、この日にすすきやお団子をお供えして月を眺める、いわゆる「お月見」を行います。
「十五夜」と聞くと馴染みのある方が多いかもしれません。
今年の「中秋の月」は9月29日になるそうで、満月であろうとなかろうとこの日にお月見をします。
四季ある中でなぜ秋の月が有名なのかというと、秋は空が澄み渡っていて月を見るのに一番いい季節なのだそうです。

▲中秋の名月について
(コスモ女子撮影)

また、月は数ある惑星の中でも地球の周りを回る唯一の天然の衛星。
そんな月に対して人類は多くの挑戦をしてきました。
人類の月への挑戦は、1950年代の人工衛星の打ち上げから始まります。

月探査の歴史〜人類の長い月へのチャレンジ〜

1950〜1970年代:アメリカとロシア(旧ソ連)の宇宙競争

1957年10月にロシア(旧ソ連)が初めて人工衛星(スプートニク)の打ち上げに成功してから人類の月への挑戦が始まりました。
ロシア(旧ソ連)は初の人工衛星打ち上げに成功すると、1959年10月に初の月面探査機ルナ1号の打ち上げや探査機の打ち上げに成功し、ルナ3号では初めて月の裏側を見ることに成功します。
60年以上も前から月の裏側にまで到達していたことを考えると、今からまた月を見に行く現代ではどんな発見があるか楽しみですね。

また、当時はロシア(旧ソ連)とアメリカが冷戦期だったこともあり、両国は武器を使わずして宇宙開発で競い合っていました。
最終的にはどちらの国が先に月に人を送り込むかという競争に発展していき、1969年7月20日にアメリカのアポロ11号が初めて月に人を送り込んだことで、米ソ宇宙競争は決着がつきました。

▲月探査の歴史について
(コスモ女子撮影)

しかしながら決してロシア(旧ソ連)が劣っていたわけではなく、ソ連崩壊後に出てきた資料から月面へ人を送り込むための研究開発が行われていたり、無人で操作可能な月面ローバーを送り込んだりしていたことが明るみになったそうです。

アポロ11号の功績後、次第に人々の月への関心は徐々に薄れていき、アポロ計画はアポロ17号を最後に月面探査は打ち切り、その後半世紀人々は月から遠ざかった生活を送ることとなります。
とはいえ宇宙自体から遠ざかったわけではなく、1980年代はスペースシャトルや宇宙ステーションの開発に重きが置かれるようになりました。
また、月の解析をするため、アポロ計画で持ち帰った月の石や砂の量はなんと380㎏。この解析と努力のおかげで月の正体も明らかになりました。

1990〜2000年代:月探査の復活と日本の月への挑戦

冷戦が終結した1990年代に入ると、国家間の競争のためではなく今度は世の中のために宇宙開発を進めていこう、と再び月面探査が行われるようになりました。
1994年アメリカがデジタルカメラが付いた月探査機クレメンタインを打ち上げ、月の全面の撮影に成功しました。
ここから世界各国から月探査機の打ち上げに乗り出してきます。
日本は2007年に「かぐや」の打ち上げに成功し、中国は2013年に「嫦娥(じょうが)3号」月面着陸に成功、「嫦娥(じょうが)5号」では月面着陸後月のサンプル採集に成功しています。
2010年代以降は国からだけでなく、民間企業から月に行くという計画が始まります。
2020年代に入ると、アメリカが有人月探査ミッション「アルテミス計画」を提案し開始しました。
今大変話題となっている「アルテミス計画」ですが、もしかすると宇宙飛行士として日本人が選出されるかもしれないとのことで、更に目が離せないトピックスですよね。

最新の月探査情報〜スリム(SLIM)、チャンドラヤーン3、そしてその先へ〜

2020年代に入ってからは、世界各国の宇宙機関や民間企業が再び月へ挑戦する機会が増え、月探査が非常に盛り上がってきています。
寺薗氏から、今まさに、そしてこれから月で活躍する探査機やローバーをいくつかご紹介いただきました。
技術の発達に驚くばかりでしたが、これからの月面探査が確実に進歩していくことに確信を感じる時間でした。
ここでは3つの探査機やローバーをご紹介します。

スリム(SLIM)

2023年9月7日に種子島から打ち上げられたJAXAが開発した月着陸機です。
スリム(SLIM)は、燃料節約のため3〜4ヶ月かけて月にゆっくりと向かい、その後1〜2ヶ月月の周りを周った後、月面へ着陸します。
スリム(SLIM)のすごいところは、着陸時に自分で障害物などを把握し狙った着陸ポイントにピンポイントで着陸する点。
着陸時は安定するために横に倒れて着陸するという変わった動きをするのも特徴です。
また、2種類の超小型ローバーを搭載しており、そのうちの一つ「SORA-Q」は丸い球体になっていて月面でパカっと割れると中からカメラが飛び出します。
クロール走行とバタフライ走行を駆使しながら月面を走り回り撮影などを行います。
数ヶ月先の月面着陸後の報告が待ち遠しいですね。

▲SLIMに搭載された小型ローバー「SORA-Q」
(コスモ女子撮影)

チャンドラヤーン3

インドの宇宙開発研究機関(ISRO)が開発した3機目の月探査機で、チャンドラヤーンはサンスクリット語で「月の乗り物」という意味。
2023年7月14日に打ち上げられ、2023年8月23日に月面着陸に成功しており、現在月探査で大きな成果も出しているそうです。

▲インドが開発した月探査機「チャンドラヤーン3」
(コスモ女子撮影)

YAOKI

株式会社ダイモンが開発したローバー「YAOKI」は走行性能が優れており、名前の由来となった通り七転び八起きでひっくり返ってもそのまま走れるほどの安定性を備えています。
耐久性も強く、高いところから落ちても走り続けられるそうです。
カメラも搭載しているため画像や動画の撮影も可能で、2023年後半にアメリカ月輸送プログラムで月面に送り込まれる予定です。
ちなみに未経験から宇宙業界へ転職されたコスモ女子のあずささんは、現在株式会社ダイモンで活躍されています。

他にも「アルテミス計画」では2024年に2号機の初の有人打ち上げが予定されていたり、2029年に月上空に宇宙ステーション「ゲートウェイ」が完成予定だったり、また日本はインドと共同で月着陸探査「LUPEX(ルペックス)」を実施予定だそうです。
これからの月探査は盛りだくさんでワクワクしますね。

さいごに

▲交流会を終えて(コスモ女子撮影)

勉強会後は寺薗氏に質疑応答する時間をいただき、交流会でもお話する機会をいただきました。
今回は最年少で小学生も参加して、大いに盛り上がりました。
10月には寺薗氏監修の書籍も出版予定で、こちらもぜひ手にとって読んでみたいですね。

【10月17日出版予定】
知れば知るほどロマンを感じる!宇宙の教科書/寺薗 淳也 (監修), 平松 正顕 (監修)

次回の宇宙基礎講座プレイベントは、10月10日(月)20:00から開催する「星」をテーマにした内容となっております。
こちらもとても楽しみです。

コスモ女子はこれからもより多くの方へ宇宙の魅力を伝え、仕事やコミュニティを通じて宇宙業界を盛り上げるべく活動してまいります。

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◆コスモ女子とは?
「宇宙業界へのキャリアを身近にすること」をテーマにした女性中心の宇宙コミュニティ」です。
勉強会やイベントを毎月開催。
星や天体の楽しみ方から、宇宙旅行・教育・宇宙ビジネスまで幅広いテーマで開催しています。
\世界初!/女性中心のチームでの人工衛星打ち上げPJを発足中!(2024年度中打ち上げ予定)

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