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エルレガーデンのワンマン

 に行った。4/5。ゼップ自体久しぶりだったし、エルレか、しかもライブハウスかと思ったら前日からめちゃくちゃ緊張してきて、ライブに行き始めて十年以上になるがまだこんな食欲なくすくらいドキドキできんのかよって、それもおもしろかった。整番5だったし。5!?
※セトリにふれているのでネタバレを避けたいひとはみないでね

 まあ始まったら楽しいだけだった。ライブってすごい。何百回も聴いたのとおんなじ曲で、CD音源のほうがずっと音もよくて聴きやすいのに、ライブで聴けたらなんであんなに、イントロだけでうれしいんだろう。瞬発的に体がバンバン動いてしまうあのうれしさはライブに特有のものだと思う。いや、ちがうのかな。ほんとはそういうことまあまああるんだけど、ウオーつって飛び跳ねて表現してもいいという場が特別なのかもしれない。

 Strawberry Margaritaがとてもよかった。かわいくて、でもちゃんと歳をとっている、シンプルで力強い一節がある。

You have a black tea
I have a tequila
two very different drinks just like us
well I do like it

 この曲は物語として聴いていたがライブで演奏されると自分ごとになる。Youがそのまま歌いかけられるわたしになり、”well I do like it”(僕はそれが好きなんだ)という明言がそのままわたしと歌っているバンドとの関係を指さしているように聴こえてくる。恥ずかしいくらい「おれの歌じゃん」と思うし、バンドの広い懐にしっかり受け止めてもらえて、この曲のこのフレーズの中に自分の居場所がいっこあったのだという新しい喜びがあった。自分が好きで聴いていてそれで満足だった曲に、曲のほうから、「好きだ」と言ってもらえたみたいな。一番最後の”I’m glad to finaly find you”もじんときた。こう書いているとほんとにシンプルでかわいい歌詞だ。

Mountain topは「同じように戦う人がいるなら」というMCから演奏された。

I’m the one who wants to burn out
I’m the one who needs to find out
I’m the one who craves the last match

 ここの主語は全部”I”だが、その場にいた人たちすべてをその”I”が包みこんでいるようだった。代表とか代弁でなく、バンドがいま鳴らす曲の中にひとりひとりが参与していて、それを、たまたまあの一人が”I”と歌っている、みたいな感じがした。不思議だ。爆音の中で体を動かしながら聴くと簡単に一体化するという作用はもちろんあるんだが、そうじゃなくて、やはり「自分ごとになった」という言い方が一番近い気もするが、自分だけのことでもなくて、なんといえばいいのだろう。わたしにはこの曲に頭から共感できるような経験はないし、そもそもこの曲とわたしとは異なる存在なので完璧に重なることはないんだが、でも、この曲を聴いて、たまんない気持ちがするとか、戦いに行く人の横顔をはっきり見たような気がしたのは、本当のことで、それは紛れもないわたしの経験だ、ということを、曲に合わせて腕を上げたり口ずさんだりしながら、その時点ではこんなふうに言語化できちゃいないが、実感していたと思う。そういう経験が、この目の前で楽しそうにしてるお姉さんにもあんだなとか。

 聴いてた位置がボーカルの真正面の、ちょっと足場が高くて顔のよく見えるところだったので、よけいに自分に向けられたように感じたのかもしれない。Strawberry Margaritaは前にもフェスで聴いたけど、そのときは上記のような感想をもたなかった。あの位置で"You always have a home here”などと歌われるとぐっと来ずにいない……なんにせよライブに行くと、行く以前には考えつかなかった解釈、というよりも見えてなかった曲の顔が、思考よりも感覚として電撃のように飛び込んでくることがあり、それは何度経験しても慣れることのない楽しい瞬間だし、輝いてる記憶になる。といって翌日になったらもうかなり忘れかけていてこわい。

 思い出したから追記。Goodbye Los Angelesをやるとき、その歌詞についてボーカルから話してくれたことがあった。ロサンゼルスはバンドがアルバムのレコーディングをした場所で、その時間への思いがつまっている曲だが、ロスのことを言った”city of the sun”という言葉が、ライブを何本か経た今ではこのライブハウスの空間を象徴するようにもおもえると。わたしがライブで聴いて曲の印象を変えるのと同じことが、歌う側にも起こっているらしい。考えてみればなにも不思議ではないが意外で、ちょっとうれしい話だった。曲、というか、つくられたものって、やっぱり自立した力を持っている。

 the Autumn SongとPerfect Summerを同じ日に聴けたのが嬉しかった。失われた夏の歌と、夏を自ら作りだす歌で、テンションも対照的だし、どちらもバンドの現在地をよく反映している曲だろう。Perfect Summerがセトリに入るとなんだか一気に厚みが出るような気がする。これについてはまた後日。

 ダブルアンコールが「金星」だった。これは本当に、本当にすごい曲だ。すさまじい曲だ……客席がふわーと明るくなったのも良かった。ここで生きている人にしか歌えない歌だとしんそこ思う。アンコール向きの曲だ。きれいな終わりかただった。

 たくさん書きたかった気がするんだが書いてみたら別に分量はなかった。たのしーうれしーと思っていたら終わっていた。エルレに対するきつい執着みたいなのがなくなってきたんだと思う。2階席で見てた友だちと、その友だちがライブ中に知り合った人と三人で飲みに行って、明日から仕事がんばれるねっつって帰った。楽しかったー!

本買ったりケーキ食べたりします 生きるのに使います