239. 右眼の上方注視が制限された6歳の女児

A 6-year-old girl with restricted upward gaze of her right eye

Tuli S, Tuli S. Pediatr Rev. 2012 Aug;33(8):e53-6. doi: 10.1542/pir.33-8-e53. PMID: 22855935.


ブラウン症候群は、内転時に眼球が挙上しないことを特徴とする非共同性斜視症候群である。
・原発性ブラウン症候群は、上斜筋腱が伸展しないために起こると考えられている。しかし、この疾患には除外しなければならない多くの二次的原因がある。
・上方視の際に眼球の位置が大きくずれているにもかかわらず、ブラウン症候群の患者は通常、正面視による視力低下や複視を認めない。
・麻痺性斜視とは異なり、牽引試験は制限を示し、Parks 3 step testは麻痺筋を示さない。自然治癒することが多く、術後の症候性上斜筋麻痺の発生率が高いため、外科的治療は通常適応されない。

※コメント
-本文抜粋-
ブラウン症候群の特徴として、眼球の内転時および正中方向への移動時に上方視が制限され、外転時には制限が少ないか全くない。
牽引試験では、眼球を上方および内方に動かそうとする際に眼球が制限されることが明らかになる。Parks 3 step testの時に上斜筋過動はない。
ブラウン症候群のその他の所見としては、下方視時におけるダウンシュートや下斜視、内転時の瞼裂の拡大、複視を防ぐための変則的な異常頭位などがある。
ブラウン症候群の診断は基本的に臨床的である。内側に動くと眼球は挙上しないが、外側に動くと眼球は挙上するという所見は、正面視で眼球を一直線に並べた状態で、ブラウン症候群を強く示唆する。診断を確定するには牽引試験が必要であるが、この年齢(6歳)では全身麻酔が必要である。他の原因を除外するためにMRIが必要な場合もある。

鑑別診断
さまざまな斜視がブラウン症候群に類似することがある。下斜筋麻痺はまれであり、先に述べたParks 3 step testで診断できる。また、牽引試験で制限がないことが明らかになる。Double elevator palsyは、外転時に内転時と同等かそれ以上の上転制限を伴い、眼瞼下垂も伴う。筋の巻き込みを伴う眼窩底骨折は、ブラウン症候群によく似ている。牽引試験により筋の制限が明らかになる。外傷歴と眼窩CT所見が2つの症候群の鑑別に役立つ。甲状腺眼症は、筋への脂肪浸潤や筋の脂肪インピンジメント(衝突)により上斜筋が侵されている場合、ブラウン症候群によく似た運動異常を引き起こすことがある。ブラウン症候群と甲状腺眼症の鑑別には、頭部のMRI検査が必要である。

ブラウン症候群は先天性、後天性ともに自然治癒する症例が多いため、一般的に手術の必要はない。手術の適応となるのは、正面視時でも眼球ずれがあったり、上方視の際に複視によって患者が著しく不快感を感じているような、非常に重症の症例である。関節リウマチやループスなどの炎症性疾患や、外傷や腱鞘炎の後に腱にコルチコステロイドを注射するなどの根本的な原因を治療することで、自然治癒を早めることができる。Brown症候群には多くの手術法が用いられており、完璧な手術法はないことを示唆している。手術は基本的に、腱切断術、Z形成術、silastic expander、腱退縮術などにより、上斜筋を弱めることを目的としている。残念ながら、これらの手術後の上斜筋麻痺のリスクは、症例の20%から40%と幅がある。

PIR2012072 53..56 (psu.edu)


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