見出し画像

vol7. 通訳と翻訳の壁

みなさんどうも、こんにちは。

通訳者マッチングアプリ「COTOBA(コトバ)」広報の長谷川です。


この前、こんなニュースを読みました。


冒頭を引用します。

語学の勉強をしなくても世界の人々と意思疎通できる時代がやってきた。人工知能(AI)を用いたニューラル機械翻訳(NMT)技術が猛烈な勢いで発展しているからだ。言葉の壁は大幅に低くなった。翻訳業界は再編が始まった。街中では自動翻訳機が急増中で、観光業界や店舗、運輸、病院などに普及し始めた。将来的には自動翻訳機が1人に1台、普及する可能性も出てきた。

SFか何かですか?

昔々読んだSF小説でこんな感じのものありました。


どんな言語でも瞬時に翻訳される未来。もう語学の勉強は必要ありません。

これで英単語の小テストで泣きを見る中高生を見なくて済むようになるわけですね。


……ところで、通訳と翻訳って何が違うんですかね?もし自動翻訳が瞬時に完璧になされるようになった未来、通訳という職業は本当になくなるんでしょうか。


というわけで、今回は通訳と翻訳の違いと、通訳の将来性について考えてみたいと思います。

通訳はアート、翻訳はサイエンス

通訳も翻訳も共通項は「ある言語で表現されたものを、違う言語に変換して再表現、再構成しなおす」ということです。

となると、表現物を理解する→別の言語で変換する→言語にあった表現を行う、というプロセスになります。

それでは両者の違いを見ていきましょう。

両者の違いをざっくりと考えると、

翻訳は、文書に書かれた文章を他の言語で記述することを指します。通訳は、口頭で述べられた文章をそのつど他の言語で表現しなおすもので、「書き言葉」と「話し言葉」という大きな違いがあります。翻訳の作業は、より適切な表現を志向し、文章に推敲を重ねるといった点が比較的重視されます。これに対して、通訳は、臨機応変にその場・その時の意思疎通を仲立ちしてコミュニケーションを成立させることが重視されます。(Weblio翻訳より引用)

つまり翻訳は書き言葉、正確性重視。通訳は話し言葉、意思疎通を重視したスピード重視といった違いになります。

翻訳では文書自体および意図を正しく理解し、正しく別言語でアウトプットするという非常に正確性を要求されるお仕事です。

意味を正しく、ロジックで判断していく。翻訳はある意味でサイエンスです。

対して通訳は正確に伝えることも大事ですが、通訳依頼者のバッググラウンド、場の雰囲気、理解しやすい言い回しを瞬時に判断してアウトプットするという「語学とコミュニケーション力の総合格闘技」です。

場の空気と言語を調和させ、人々の交流を円滑にする。人の感性に訴えかける部分も多くあり、通訳はアートと言えるでしょう。


通訳、翻訳、ver2.0

ただ、どちらも訳すだけではこれから生き残ることは不可能に近いです。


なぜなら、機械翻訳という脅威に近年脅かされているからです。

機械翻訳では大量の文章を学習し、通訳や翻訳における「パターンの蓄積」に非常に強い存在です。

通常、人間は言語を変換するときに「A=B、B=C、だからA=C」だというようにパターンを用いて変換します。通訳や翻訳を生業とするのであればこういった言語の変換パターンに関して膨大な数を頭に叩き込む必要があります。

この「ある一定のルールのもと、パターンから答えを導き出す」ということについては人間がAIに勝てる余地はありません。残念でもなく当然ですね。


しかし、自分の職業や特技がAIに代替されては困る。

AIは「ある一定のルール」をもとにパターン学習で答えを導き出すと述べました。とすると、ある一定のルールを作る側になる、もしくは変える必要が出てきます。

例えば、通訳であれば従来の「伝わればいい」という価値観から「より気持ちよく、よりよく伝える」というように通訳の意義を再定義してしまえばいんです。

言語の壁はとにかく厚い。だからこそ、人々は「伝わる」ことに重きを置きがちです。しかしながら、伝えるときには伝える相手の宗教や生まれ育った場所、社会状況などあらゆる情報を加味する必要があります。そういったことに気を配り、「より気持ちよく、人々の関係を向上させる」通訳としてアップデートしていく必要があるのではないでしょうか。


AIに代替されない職業、人間とは

昨今「AIは人間の仕事を奪う」といった言説がブームになり、本屋に行けばその手の本がたくさん売れている現状があります。

AIは言語を理解し、使いこなします。いわゆるCanの概念です。

そして、社会的な要請から加速度的にその技術は発展しています。いわゆるMustですね。


しかしながら、AIは「瞬時に自動で翻訳する社会」にしたいというWillがあるでしょうが、その先は未だ議論されていません。


「言語が瞬時に伝わる社会になったとき、あなたはどう価値を発揮したいか」という答えのない、ある種哲学チックな問いを自分の中に投げ続けることになるでしょう。そんなときに新しい価値を発想し、概念を作るのはAIにはできないことです。それこそがAIに代替されない価値であり、あなた自身の価値となるはずです。


あとがき

なんだか哲学チックな話になってしまいました。

結局、「どちらの仕事も伝わればいい」ということだけを考え続けるとどこかで詰むよね、という話でした。

そうではなくて、どんなことでも自分なりの価値を添えていくことで数年後はAIに代替されない人間になることができるでしょう。

自分もそうなりたいものです。


自分なりの価値の載せ方を練習したいという方はぜひこちらからポチっと登録してみてください。


以上です。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?