私にはずっと忘れられない旅館がある。

それは、十数年前に訪れた、とある岐阜の温泉旅館。

巨大な樹木に囲まれ、緑の匂いがたちこめている。

自然がいっぱいで、部屋の窓をあけると鳥のさえずりが聞こえる。

温泉では肌がつるつるになる。

愛想のいい中居さんとの楽しい会話。

そこには私が求めていたものがすべてあった。

なんとも心地のいい旅館だったのだ。

＊

いつか長期で泊まりたい。

絵を描いたり、音楽を聴いたり、文章を書いたり、ミステリー本に没頭するなどして思いのままに過ごしたい。

ほかにもたくさん温泉旅館があるのに、私にとってはこのときの温泉宿がいまだに頭に焼き付いている。

あのときのままかな。
どこかリノベしているのかな。

あの旅館に、こんどは少しばかり長く滞在したい。
それが、私のいま一番かなえたい夢。