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学芸員って、何をするひとなのだろう?と思ったから

 人生のこれまでに、あちこちの美術館には行ったのに、そこで働いているらしい学芸員さんという専門職についてはほぼ知らなかったし、特に興味も無かった。

 武蔵美の通信教育課程で学芸員の勉強をしてみようかと考えたのは二年前だった。学芸員の勉強、それは芸術文化学科というところで勉強できるらしかった。

 武蔵美には卒業後も、サークルの人たちとの同窓会がてら、何度が芸祭の時に訪ねていたから校内の勝手もわかっている。スクーリングでまた食堂やパン屋さん(当時は無かったけど)に行けると楽しいなーぐらいの感覚だった。入学案内は、家族のために取り寄せたのだけれど、それが必要無くなったためジーと眺めているうちにそうなったのだった。
 現職の学芸員さんが退職するような年齢なので、もちろん就職のためではないのだけれども、「学生時代には何を専門に勉強してたんですか」という会話があった時、専門ていえるほど何も勉強しなかったなーと思うのだった。教職だって挑戦しなかった。

 短期大学時代の中途半端な実技や、すっかり忘れてしまった西洋美術史などを思い出すと、それらはやり残している大きな宿題みたいな感じがした。もう一度、鷹の台の学生をやってみるのもいいかもしれない。
 武蔵美で学芸員を育成する課程は、どのくらい前からあるのかサイトの沿革には記されていないみたいだった。短期大学があった頃は、資格といえば教職で、油絵科や日本画科、彫刻科の学生で教職を選択している人は比較的多かった気がする。進路といえば、自分のようなデザイン系の学生は、美術の先生になるというよりはそのまま、企業のデザイン部やデザイン事務所のような場所へと就職していった。だから、学芸員になるための勉強をする学科とは、美大ではなくて、当時は一般大学の文系や教育大学などだったのではないだろうか。

 通信の芸術文化学科とは、主にレポートが中心で卒業制作も論文である。学芸員になりたい人が選択するコースでもあって、学芸員課程は付いてくる(他の学科の場合、学費の追加料金が要る)。

 この学科と文学部(第三類・文学)の両方を経験した身としては、芸術を研究するこのコースは限りなく文学部に近い気がした。最近は美大でも入学試験にはデッサンの無い学科の受験があるけれど、確かに、ここが文学部なのだったらデッサンしなくていい。
 ある大学の文学部では、創作、つまり「小説」を書くことが卒業論文になる場合があるようで、そこは芸術研究とはちょっと違うけれど、独自の研究をするという点では、卒業論文は文学部でも芸術研究の分野ではあるのだろうから、芸術研究と文学研究はきっと親戚くらいの近さがあるのではないかと感じられた。

 で、二年勉強した後で、少し、わかった。
 学芸員さんというのは、博物館や美術館などに行った時、「あ、そこまでは入らないでくださいね、触らないでねー」と、観覧者にひっそり注意してくれる黒スーツのスタッフではなくて、展覧会を企画したり、所蔵品を保存し、調査したりする研究者である、ってことだった。

 学芸員になる、とは、研究者になる、ということだった。通常は、展覧会の表には出ていないようだけれど、たまには居るのかもしれない。

 昨年中に単位を取れなかった科目があるので、卒業してもまだ勉強が続くのだけれど、自分ではならない「学芸員」を研究してみようかと思う。

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