見出し画像

2020年10月15日のこと:須藤圭太

読書感想文 No,7
「日本美術応援団 オトナの社会科見学」
著者 赤瀬川原平×山下裕二

前に読んだ「ハウス・オブ・ヤマナカ」がマジメというか、かっちりとした内容だったので、今回はもっとラフに読書したいなと思い、選んだ一冊。

本書は美術家の赤瀬川原平さんと、美術史家/評論家の山下裕二さんのコンビが国内の観光地や公共施設を見て回り、それについて日本美術的視点であれこれ話しをするというとにかくお気楽で楽しい内容。
ただ、会話内容に抽象的なところが多いので、表現者と評論家の対話というより、オタク同士のマニアックな話として捉えるぐらいがちょうど良い。
さらに本書は日本美術応援団シリーズの第3作目ということもあって、基本的にはすでにお二人の価値観を良く理解している読者向けに書かれている。
例えば訪問先で、あれは良い、これは良くないと場所や物について批評はするものの、何がどう良いのか、どうして良くないのかはほとんど説明されない。
これはお二人が提唱する”日本美術の見方”が反映されているためだ。
日本美術の鑑賞法は西洋美術のように体系立てて良さを理解するのではなく、理由はないけどなんか良いと感じる、ぐらいでいいじゃんと言っているのだ。
お二人は美術館で歴史的作品を鑑賞する素晴らしさを説くと同時に、美術館にあるものばかりが作品ではないよねとも語っている。
住宅地の道端や古い商店街の店先など身近なところにも作品(の種)はあって、それが日本美術という世界観の源流になっているのだという。
また地方寺院の仏像や宝物が都内の美術館に貸し出された時にすごい数の来館者を記録するという、日本人の美術館信仰現象にも疑問を呈している。
他にもお二人のものの見方にはなるほどと思うシーンは幾つもあったし、意外にも評論家である山下さんの視点がかなり表現者よりで、赤瀬川さんとの”内輪ノリ”な雰囲気もまた面白い。
知識を高めてから再読したらそのマニアックな面白みをより深く味わえるのかもしれない。

※今回は図書館への返却時に表紙の写真を撮り忘れてしまったため、ネットに転がっていた画像を拝借している。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?