見出し画像

東京満喫


ムクドリ

先月久しぶりに上京した。一年に一回は上京するが、昨年は四月下旬だったので、趣味のバードウォッチングには、渡り鳥がだいぶ少なくなっていた。そこで今年は三月初めに計画した。去年今年訪れたのは東京港野鳥公園。そこは羽田空港を造るときに大規模埋め立てをし、その後そこに自然にできた池や草原に鳥が集まるようになり、一九七八年に公園になったところだ。長い年月が経って今ではそこは自然豊かな公園になり四季を通じて野鳥の姿が見られる。東の水辺の鳥たちの区域と西の森の鳥たちの区域に分かれている。昨年は東の水辺のゾーンだけ訪れ、今年は森の鳥たちの西のゾーンにも行ってみた。

カイツブリ

ボランティアガイドの話によると今年は水辺の鳥たちは数が少ないそうだが、それでも去年よりかなり多くの種類の野鳥を見ることができた。その公園にはたくさんの鳥見小屋があり野鳥たちに感づかれずに、鳥見小屋に作られた窓から撮影することができるのだ。

マガモの水浴び

眼レフのカメラを持った人たちもたくさんいるが、広いのでゆったりと鳥を楽しむことができた。東京に息子二人が住んでいるが、彼らもやって来て三人でまわった。長男は、私が手持ちのコンパクトデジタルカメラでは、カバーできない部分があると話したのを覚えていて、自分の一眼レフカメラを持ってきてくれた。試してみたが重すぎて,撮ることさえ難しく、まして野山を持ち歩くことはできず、残念だが断念した。こうして午後の数時間を鳥を探して野鳥公園を親子でまわった。一番の収穫はカンムリカイツブリとツグミを初めて撮れたこと。次にたくさんのオオバンが広大な池で潜って水草を採っては、水面に上がって来て食む様子を鳥見小屋から見ることができたこと。マガモたちの水浴びの様子も太陽の光をバックに水しぶきまで遠くから撮影できた。親子三人で一緒にこんな風に歩くのは十年以上ぶりのことだった。風が強かったが快晴で気持ち良いお天気に恵まれ幸せないい時間を過ごせた。

巨大マッシュルームの鉄板焼き

 夕食にはテレビ番組で見た、美味しそうなスペイン料理のレストランを予約していたので移動した。都内で距離はそうないものの、地下鉄やJRで乗り継ぎ約一時間かかった。息子たちの話では、こういう時は乗り換えずに済む場所を選ぶらしい。そこは住宅街にあるスペイン食堂。暗くなって人通りも少なくなっているのにその店だけはひっきりなしに来店する人がおり、多くの人が満席のため断られていた。予約していて正解だった。名物の巨大マッシュルームのメニューはどのお客さんもオーダーするほどの人気メニュー。私が予約しているコースにも含まれていた。見たこともない大きなマッシュルームを逆さにして刻んだプロシュットを載せ鉄板で焼いただけのシンプルな料理だが、優しい味のマッシュルームに、塩味控えめのプロシュットがマッチして噂通りのおいしさだ。スペイン料理の定番の前菜にコンフィ、アヒージョ、パエリア、スペインの黒ビールやワインもおいしくいただいた。 

豆浆:台湾式朝ご飯どうじゃん

翌日は二十五年ぶりで同級生と会う予定だったが、風邪で寝込んだと連絡が入り残念だった。彼女は会えないときもいつもエッセイを読んでくれているので、またそのうち会える気がする。一人にはなったが予定通り、翌朝は以前から行きたかった東京豆浆生活という店へ朝食に向かう。豆乳を緩く固め、上にヨウティァオと言う揚げパンを刻んだものを飾り、少し辛みのあるオレンジ色の蒋(じゃん)をかけてある。やさしい味が何とも言えず美味しい。実はこのお店は二回目だ。昨年は到着が午後だったため一番人気のおかゆは売り切れていた。今回は朝到着でお店の前に「おかゆあります」の看板があり安心していたら、並んでいた前の人までで売り切れてしまい残念だった。毎朝豆乳からいろんなメニューを作っているこのお店は健康ブームの今一人で来ている女性客が多く、大きなテーブルに相席で陣取った。ちょうどお隣はおしゃれなフランス人。

食べながら話すと、彼女も二回目で二回ともおかゆを食べ損ねたと言う。彼女はおなかが弱いので東京でもおかゆ屋さんを探しては行っているようで、私にもその店を教えてくれた、彼女はフォトグラファーで撮影のため東京に出張中とのこと。前回は三か月で北海道から沖縄までを自分の好きな場所を撮って回ったそうだ。これからどこへと聞かれたので、私はバードウォッチングが趣味でこれから明治神宮の御苑に鳥を撮りに行くと話した。カメラを見せてと言われて、写真が撮れたら見せてねとも言われた。プロの写真家で腕違いなのに優しい人だと思って別れた。インスタグラムを交換していたので、それからやり取りしたが、彼女の写真は、幻想的なものやモダンなもの最先端の感覚のものと素晴らしい作品が投稿されていた。

素敵な人と出会えて短いけれど良い時間を持てた。彼女もそういってくれて嬉しかった。日本中の撮影でどこが一番良かったか聴いたら、山陰の城崎が一番好きだったと。私の好きな作家志賀直哉の「城の崎にて」の舞台となったところ、なんだか嬉しかった。その後帰国した彼女から、日本が恋しい、六月に再び行くのであなたの街を訪ねたいとメールが届いた。わずか半時間ほどの出会いで、自分の街を紹介することになろうとは、旅は新しい出会いを生むものだ。鹿児島では一緒に写真を撮りましょうと言われ、通信教育の写真講座で若い頃一年だけ学んだ私が、プロのフォトグラファーと一緒に撮影できるとはいろいろ学ぶことがありそうだ。

明治神宮参道

その後予定通り明治神宮の御苑へ、さすがに歴史のある神宮は参道から大きな木立に囲まれていて、あちこちから鳥の声が聞こえる。珍しい鳥はいなかったが、じっくりと腰を落ち着けて鳥たちの自然な姿を見て撮ることができた。御苑内を散策しているのは日本人より外国人の方が多いくらいだった。池を見渡すベンチに陣取り、鳥の動きを追う。時々やって来ては飛び去る鳥。つがいで仲良く水草を食む水鳥。その後は今は干上がっている菖蒲池を囲む森や池に続く湿地を、時間のあるかぎりゆっくり見て回った。ふだんでもこんなにのんびりと鳥見をしたことはなかった。
 

その後は最寄り駅の原宿駅反対側にあるIKEAへ。地元にはないこのスウェーデンの家具雑貨店で、スウェーデン料理のランチをとった。平たいパンで野

ランチ

菜やエビやソーセージを巻いたツンブロードに定番のマッシュポテトとミートボールおいしくいただいた。店内をちょっと見渡すと素敵な家具やカラフルで上品なデザインの雑貨が所狭しと並んでいる。ホテルをチェックアウトすると同時に必要最小限のもの以外は送って身軽になっていたので、おしゃれなデザインの軽くて丈夫な袋数種類、レトルトの珍しいマッシュルームとココナツミルクのスープ、柄の良い紙ナプキン、機能的で斬新なデザインのレモン柄の保冷バッグなど、一番大きな袋に詰めて、結局は大荷物となり満員の電車で羽田へ向かった。こうして一年ぶりに東京を満喫した。わずか二日間なのに旅は日常生活をリフレッシュさせてくれると実感した。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?