僕の上で

《小説》

ミキは言った。

「わたしのどこが好き?」

「鎖骨から頸のあたりの白い肌。」

「だと思ったわ。」

「それにO型だしね。」

「あなたはB型。」

そう言って見下ろしたミキの額にウェーブのかかった前髪がかかった。

窓からは朝の光の粒が飛び込んできていて、身体の輪郭にそって後光が差し込んでいた。

窓は30cmほど開いていて、そこから吹き込んでくる初夏の風がレースのカーテンを、まだ男を知らない女子高生のスカートみたいにゆっくりと膨らませたり、しぼませたりしていた。それが、水槽の中をゆっくりとたゆたうクラゲのようだなぁ、ってぼんやりみつめていた。


僕らみたいなマイノリティがパートナーを見つけるのはそう簡単じゃない。

男子校に入った理由に、僕の性癖が関係していたのかどうかはわからない。

でも、三木と僕の出席番号が続いていたので、クラスで席が前後になった瞬間に、僕らはその独特の氣を感じることができたのだ。

僕の前でだけは、彼は言葉遣いが女性のそれになる。

高校生活が楽しいものになる予感がしていた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?