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カントリーのGuitar Slingerたち(Talecaster編その1)

カントリーミュージックシーンには数多くのギターの名手が登場する。
RCA Nashvilleのカントリーミュージック部門の責任者(Vice President)でもあったChet Atkinsはもちろんのこと、近年ではBrad Paisleyがスーパーテクニックでカントリーギターの世界を塗り替え続けている。

そんなカントリーギターで最も多用されている楽器はおそらく、FenderのTelecasterだろう。カントリーギタリストの名手の多くがTelecaster使いである。

Fenderのテレキャスターについては、他にも詳しく書かれたページがあるので、詳しい説明はそちらに譲ることにしよう。1950年に世界初の量産型ソリッドボディーのエレクトリックギターとしてFenderより発売されて以来、今日までエレクトリックギターの完成形の一つに君臨するギターである。

カントリーミュージックにおけるテレキャスタープレーヤーの第一人者はJimmy Bryantであろう。彼は、ペダルスティールギタープレーヤーのSpeedy Westとコンビを組んで、数多くのレコーディングを行なっている。Speedy WestはFender 400、Fender 800やBigsby製の特注ペダルスティールを使いこなす名手で、Jimmy Bryantとともに物凄く速いテンポでジャズの影響を受けたカントリーミュージックを奏でていた。
レコードジャケットの写真を見るとJimmy Bryantはテレキャスターのブリッジカバーをつけたままの状態で弾いている。ブリッジミュートはしていなかったのか、それとも写真撮影の時だけつけていたのかはわからない。ピックガードはJimmy Bryantの名前のエングレイブが入ったレザー製のものに交換され、いかにもカントリーギタリストらしい自己主張の強いギターである。

私は、このJimmy BryantとSpeedy Westのコンビが好きで、レコードも何枚か持っているのだが、かつては彼らの演奏がカッコよすぎて、上手すぎて全く聴く気になれなかったこともある(嫉妬か?)。Speedy Westなんて、動画で見ると、まるでスタートレックに出てくるキャラクターみたいな顔をして、一心不乱にスティールギターを弾くもんだからちょっと恐怖心さえ芽生えるほどだ。

Jimmy Bryantの次にテレキャスター使いとして有名なのはBuck Owens & His BuckaroosのギタリストのDon Richか。リーダーのBuck Owensもテレキャスター使い(一時期はG&LのASATを使ったりもしているけれど)だが、彼のバンドのサウンドの根幹を形成しているのはDon Richのテレキャスターサウンドだろう。
彼のギターサウンドこそ、カントリーにおけるテレキャスターのサウンドの典型である。トレブリーでギラギラしていて、食い付くようなフレージング、今日のカントリーミュージックのリードギタリストで彼のサウンドの影響を受けていない人はいないのではないだろうか。

Don Richの楽器は金ピカだったり、トリコロールだったり、星条旗の模様があしらわれていたり、リーダーのBuck Owensのギターよりも目立っているんじゃないかとちょっと心配になるぐらいド派手だ。もっとも、カントリーミュージックの方々はみんな派手な衣装を着ているから、ギターもちょっと派手じゃなければバランスが取れない。

Don Richのギターサウンドを堪能したければ、”The Instrumental Hits of Buck Owens and His Buckaroos"というアルバムがあるので、ぜひ聴いてみて欲しい。
リーダーのBuck Owensはシンガーなので(ギター・ボーカル)なので、インスト曲集だと、肝心のリーダーは登場しないではないか、という不安もあるが、まあ、この際そこのところは置いておいて、聴いてみて欲しい。

そして、もう一人カントリーミュージックのギタリストとして絶対に外せないのがJames Burton。もしかしたら、テレキャスター使いとして筆頭にあげるべきなのはJames Burtonだったかもしれない。(少し反省している)
James Burtonはエルヴィス・プレスリーのギタリストとして有名だが、彼のスタイルはカントリーの王道である。
彼は、ほとんど自分名義のリーダーアルバムがなく(私の知る限りラルフ・ムーニーとの共演盤を含めて2枚か?)、誰かのバックで弾いているのがほとんどなのだが、彼のテレキャスターサウンドはカントリーのみならず、ロカビリーや古いロックを聴く方々は必ず耳にしているのではないだろうか。それほどまでに彼の参加作は多い。

James Burtonの楽器は一貫してFenderのTelecasterだ。エルビスのバックだったころは、赤のボディーのテレキャスター、メイプル指板で3プライのピックガードが付いているから、1966年ごろのものか。この楽器は彼の数少ないリーダー作(Ralph Moonyとの共演盤)のジャケットにも登場している。
もう一台は1968〜69年製のピンクペイズリーのテレキャスター。これもエルヴィスのバンドで使っている。

彼は、ペイズリー模様が好きらしく、1980年台にFenderから発売されたJames Burton Signature Telecasterも黒のボディーに金でペイズリー柄が入っていた。個人的には、現行のJames Burtonモデルよりもこっちの方がカッコいいと思う。

彼のシグネチャーモデルのピックアップレイアウトは通常のテレキャスターの2シングルではなく、ストラトキャスターのような3シングルである。しかも上記の初期のシグネチャーモデルには下記のLace Sensorピックアップがマウントされている。

Lace Sensor Blue Neck Pickup
Lace Sensor Silver Middle Pickup
Lace Sensor Red Bridge Pickup

ブリッジもハードテイルのストラトのような6連のブリッジである。

私個人的にはLace Snsorは好きではないのだが、James Burtonモデルであれば許せる。いや、むしろJames BurtonがLace Sensorを使っているのであれば、それが一番正しい形なのだろう。
現行のFenderから出ている彼のシグネチャーモデルには、Lace Sensorではなく、Fender製のLace Sensorそっくりのピックアップが搭載されている。私も一台彼のシグネチャーモデル(赤のホットロッドペイズリー柄のやつ)を所有しているのだが、Lace Sensorに交換して使っている。音は、Fender製もLace Sensorも殆ど変わらない。

カントリーのGuitar Slinger(Telecaster編その1)はこのぐらいにして、次はもう少し近年のギタリストとかロック寄りのギタリストを紹介したい。

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