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Fenderよ永遠にあれ

またRhodes Stageの修理・調整を行なっている。
今回は、Fender Rhodes Mark 1 Stage 88。

Rhodesはここ三ヶ月で4台修理・調整を行なった。4台ともStage。Suitcaseが嫌いなわけではないけれど、Suitcaseは自分の持っているやつを過去に修理した際に結構コストがかかってしまったのと、感電が怖いので扱わないことにしている。Rhodes Suitcaseのあのプリアンプの音は独特なので好きなのだけれど、最近はRhodesのプリアンプを再現したプリアンプが出てきていて、なかなか優秀なので、故障した際に修理しなくてはいけないリスクを考えるとStageに外付けのプリアンプを繋げて使った方がなんとなく理にかなっていると思う。

StageはそのままDIにつないでしまうというのも可能だし、完全パッシブなので電気系のトラブルがほぼ無いのが嬉しい。そういうことで、私はStageの方が好みに合っているのだ。

先日お客さんがRhodes を試弾した際に、

「Rhodesピアノってそんなに売れるんですか?」と質問されたのだけれど、そんなにぽんぽん売れるものではないというのは承知している。アップライトピアノやグランドピアノなんかよりもRhodesピアノを必要としている人の方が少ないだろう。(おそらく)

けれど、この楽器にはこの楽器でしか鳴らせない独特のサウンドがある。それに、持ち運びも頑張ればできなくはないというのも良いところだ。

今回調整しているFender Rhodesはハンマーが半分プラスチック、半分木でできており、ハンマーチップは四角いやつがついている。Fender Rhodesのシルバートップのようなハープアッセンブリーでは無いけれど、Fender Rhodesならではの仕様なのがなかなか嬉しい。

鍵盤はいわゆるフルスカートと呼ばれる、木の鍵盤をプラスチックがすっぽりと覆っている仕様だ。通常の木鍵盤のRhodesよりも少し重めのタッチになる。まあ、その辺りはどうにでもしようと思えばなるのだけれど。

Mark 2を立て続けに3台メンテナンスしたけれど、Fender Rhodes Mark 1をいじっていると、Fender社はCBSになって楽器作りに手を抜いたと言われているけれど、Rhodesピアノなんていう手の込んだ楽器を作っていたのだから、なかなか偉いと思う。鍵盤の素人の仕事にしてはRhodesはよくできている。(素人の仕事ではない)

フロントレールのオーバルピンなんかも、同じMark 1でもFender Rhodes期のものと70年代末のMark 1は違う部品が使われている。メンテナンスは後期のMark 1の方が少しだけしやすくなってはいるけれど、そういうところにもなかなかこだわりを感じる。

FenderってCBSに売られたタイミングよりも1985年にアメリカで楽器を作るのをやめて(フラトンの工場がなくなってしまって)日本で作るようになったあたりから(CBSから離れたあたり)ガラリと変わってしまうと思う。

もちろん、Vintageリイシューなんかが出始めて、90年代以降コロナ工場で作られた商品群は品質も安定するのだけれど、色々な(Fenderらしからぬ)商品を乱発して、楽器作りから商売優先に走っていく姿はCBS期よりもより顕著になってくる。

Rhodesブランドも手放して、「よく売れる」楽器に特化するのはまあ仕方ないとしても、エレキギターを「音楽を生みだす楽器」から「金を生み出す道具」に変えたのはCBSでなく、日本製のフェンダーになってからであると強く感じさせられる。

もちろん、Fenderのレギュラーラインも、メキシコ製だって良い楽器は良いのだけれど。

とはいっても、コロナ工場(フジゲンアメリカ工場?)のフェンダーもこれから少しづつ値段が上がっていって、そのうちVintageなどと呼ばれるようになるのだろう。いや、もうすでになっているのかもしれない。

そういう流れには抗えないし、むしろ比較的新しいものでも時を超えて評価するのは好ましいことではあるのだけれど、コロナ工場になってからFenderがまたちょっと迷走しているようにも感じてしまう。

現在、商売としては過去最高に成功しているFenderなのだが、楽器作りも過去最高でいてほしいと願う。私たちに常に夢を見せてくれてきたブランドなのだから。

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