中学校で習う知識をほとんど使わず論理だけで数学の問題を解く方法の一例

ここでは、中学校で習う範囲の数学の問題の一つを、中学校の後半で習う知識を使わずに、もっと基本的な演算と論理だけで解く方法の例を示そうと思います。

  • 丁寧に論理を追えること

  • 正解までの先が見えなくても記号に対する機械的に可能な操作を行うこと

ぶっちゃけて言うと、解の公式を覚えたり問題のパターンに慣れたりする方がほとんどの人にとっては圧倒的に簡単でしょう。そのことを実感するために良い例だと思いますし、地道に論理を積み重ねればどうにかなることを実感するためにも良い例だと思います。


問題

以下の式を満たす数の組$${(m,n)}$$が無いことを示しなさい。

$${ \displaystyle{\frac{1}{m}}+\frac{1}{n}=\frac{1}{m+n}  }$$


普通の解き方

まず、$${m}$$も$${n}$$も分母になっているので0ではありません。
問題文の式の左辺を通分して足し合わせます。

$${\displaystyle{\frac{m+n}{mn}}=\frac{1}{m+n}}$$

両辺に$${mn(m+n)}$$を掛けます。

$${\begin{array}{}\displaystyle{(m+n)^2}= mn  \end{array}}$$

左辺の括弧を開いて両辺から$${mn}$$を引きます。

$${m^2+mn+n^2=0}$$

二次方程式の解の公式を使い$${m}$$を求めます。

$${  m=\displaystyle{ \frac { -n\pm \sqrt {n^2-4n^2} }{2}}=\displaystyle{ \frac { -n\pm \sqrt {-3n^2} }{2}    }    }$$

$${n}$$は0ではないので、右辺の$${\sqrt{~~~~}}$$の中がマイナスになります。だから、解はありません。つまり、元の方程式を満たす$${(m,n)}$$の組はありません。


二次方程式の解の公式を使わない解き方

符号で場合分けをします。

まず、$${m}$$と$${n}$$が同符号の場合を考えます。共に負の場合は問題文の式の両辺を-1倍することで共に正の場合と同じになるので、共に正の場合を考えればよいと分かります。なので、共に正の場合を考えます。

すると、$${m+n>m>0}$$なので、

$${ \displaystyle{\frac{1}{m+n}< \frac{1}{m} } }$$

が成り立ちます。これを問題文の式と合わせると、以下の事がわかります。

$${ \displaystyle{\frac{1}{m}} + \frac{1}{n} =\frac{1}{m+n}< \frac{1}{m}  }$$

右辺と左辺に着目すると、次のようになります。

$${ \displaystyle{\frac{1}{m}}+\frac{1}{n} < \frac{1}{m}  }$$

両辺から$${\frac{1}{m}}$$を引きます。

$${ \displaystyle{\frac{1}{n} < 0}  }$$

ここで、$${n>0}$$なので、これを満たす$${n}$$が無いことが分かります。つまり、同符号の$${(m,n)}$$は問題文の式を満たしません。


次に、異符号の場合を考えます。$${m>0}$$かつ$${n<0}$$としましょう。逆でも解き方は同じです。また、$${m+n}$$が問題文の方程式の右辺の分母になっているので、$${m}$$と$${n}$$の絶対値は異なります。同一ならば分母が0になってしまいます。

$${m}$$の方が絶対値が大きい場合、問題文の式の左辺はマイナスになり、右辺はプラスになります。だから、この場合には問題文の式を満たしません。

$${n}$$の方が絶対値が大きい場合、左辺はプラスになり、右辺はマイナスになります。だから、この場合も同様に、問題文の式を満たしません。


以上より、問題の式を満たす$${(m,n)}$$は存在しません。

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