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24の質問で強みがわかる!?「性格的強みの評価票」の開発の試み

こんにちは。紀藤です。本記事にお越しくださり、ありがとうございます。
さて、本日ご紹介の論文は、(超平たくいうと)「強みアセスメントで有名なVIA-ISを、めっちゃ短く24の質問にしてみた」という研究です。

本当なら240の質問を、1/10にして、本当に使えるのか…?
その結果がなかなか面白いものでした。またこの評価票がめっちゃ使えそうで、ワクワクしました。

ということで早速みてまいりましょう!

<今回のご紹介の論文>
『性格的強みの評価票(CSRF):性格的強みを評価するための24項目の評価尺度の開発と初期評価』
Ruch, Willibald, María Luisa Martínez-Martí, René T. Proyer, and Claudia Harzer. (2014).“The Character Strengths Rating Form (CSRF): Development and Initial Assessment of a 24-Item Rating Scale to Assess Character Strengths.” Personality and Individual Differences 68 (October): 53–58.


30秒でわかる論文のポイント

  • ピーターソンとセリグマンら(2004)によって開発された強みアセスメント「VIA-IS」が強みの研究にも幅広く用いられている。

  • VIA-ISは24項目の強みを各10の質問で明らかにする、合計240問のアセスメントである。この24項目の強みについて「性格的強みの評価票(Character Strength Rating Form:CSRF)」として、24の質問に絞る試みを行った。

  • 成人211名に対して人生満足度との関連、年齢や因子構造などを調査した結果、VIA-ISの結果とCSRFは有意な相関を示していた。このことから、CSRFは、性格的強みを評価するための有効な尺度であることが証明された。

とのこと。さて、ではどんな内容なのでしょうか。

アセスメントをどこまで短くできるのか?

以前の記事で、「VIA-IS(通常版)」を「VIA-120(短縮版)」へと半分の質問にした結果、信頼性や妥当性は高く、その他の結果も変わらなかった、という論文をご紹介しました。

短くなれば、時間の短縮になる。
短くなれば、より強みアセスメントも利用しやすくなる。
研究者にとっても、利用者にとっても、いいことがたくさん。

・・・ただし、その「信頼性」が担保されていれば、の話。

今回は大胆にも(!)「性格的強みの評価票(Character Strength Rating Form:CSRF)」として、24項目を1つの質問で聞いちゃおう。そして良好な結果が得られるのか調べよう!という調査と分析を行ったのでした。

短くなれば、研究にももっと使いやすくなるはず。

調査と分析方法

さて調査方法ですが、ドイツ語を話す成人211名に対して、

●「性格的強み評価表(CSRF:Character Strength Rating Form)」24項目
●「性格的強み(VIA-IS:Values in Action Inventory of Strengths)」240項目
●「人生満足度尺度」5項目

の3つの項目と、人口統計的な情報(年齢、学歴、性別)をアンケートで答えてもらいました。

そして、相関分析・因子分析等を行い、CSRFとVIAーISの関連がどの程度あるのかを確認したのでした。

ちなみに小話ですが、CSRFを作るときにポイントとなったことの一つに「9段階のリッカート尺度」にしたことがあります。通常VIAは5段階(1:私らしくない~5:私らしい)で回答します。(よくある質問のパターンです)
しかし、CSRFを5段階にすると「天井効果」(皆が高い得点をつけてしまいバラツキが制限される影響)が出てしまうことがわかりました。よって9段階にして答えるように尺度を設計しました。(こういう工夫も質問紙の設計では大事ですよ、というお話ですね)

結果わかったこと

諸々の調査結果、何がわかったのでしょうか。以下いくつかポイントをまとめています。

わかったこと1:「強みの順位」は相関していた

「強みの順位」について調べると、その結果は類似していました。たとえば、回答者の結果は「好奇心」はCSRFで1位、VIA-ISで2位でした。また、「学習意欲」はCSRFでは2位、VIA-ISで1位でした。全体としての強みの順位間は平均0.85と高い相関が示されていました。

わかったこと2:「強み尺度の相関」も有意であった

VIA-ISでは10の質問を1つの項目(好奇心、熱意など)にまとめています。一方、CSRFでは1つの質問=1つの項目です。だいぶ元となる質問の量が違いますが、これらの相関がどの程度あるのか、についても分析したのでした。結果、24の強み尺度の相関係数は全て0.41~0.77と中程度から大きな相関があることがわかりました。

わかったこと3:「人生満足度との相関」も同等であった

次に、人生満足度と関連している強みを、VIA-ISとCSRFで比較しました。その結果、希望・熱意・愛情・感謝・好奇心の強みは、どちらも強い正の相関を示し、またVIA-ISとCSRFの相関係数も、0.84と高い数値を示しました。

その他の、強みの尺度間の相関も、正の相関があるものと、負の相関があるものなどの傾向がありますが、これらも類似した形を示していました(例:年齢とスピリチュアリティ、好奇心・学習意欲と教養は正の相関がある等)

またその他にも、24項目の強みを因子分析をすると (1)対人的な強み、(2)知的 な強み、(3)感情的な強み、(4)自制心の強み、(5)神学的な強み と5つの因子構造となりましたが、これもVIA-ISとCSRFは同じでした

CSRFの日本語版の紹介

さて、ここまでCSRF,CSRFとおまじないのように唱えておりますが、この「性格的強み評価票(CSRF:Character Strength Rating Form)」とは一体どんな内容なのでしょうか?

残念ながら本論文には書かれていませんでした・・・。しかし別の論文においてその内容が紹介されており、かつ「日本語の翻訳」を試みたものがありました(!)。よって、以下引用をいたします。この内容は、強みを簡易的にアセスメントするものとして使えそうだな、と思いました。

Aoki, Tazuko, Minglu Li, and Liqin Cao. 2022. “Values in Action Inventory of Strengths の簡易版, Character Strengths Rating Form (CSRF) の日中翻訳.” Bulletin of Graduate School of Education, Okayama University 181: 41–45.

まとめと個人的感想

本論文では、CSRFの信頼性を一定程度支持しながらも、「VIA-ISの代わりになるものではない」と述べています。まとめると、このようなお話でした。

・CSRFの項目尺度との各項目の相関は、VIA-IS より低いものもあったが、全体として、関係の大部分は同程度の大きさであった。CSRFの要因妥当性も支持された

・全体として、この知見は勇気づけられるものである。短い尺度しか使用できないような大規模な研究(例えば、縦断的研究)において、性格的強みの評価票(CSRF)を使用できるようにした。

・ただしCSRFは、この分野の標準的な尺度であるVIA-IS(Values in Action Inventory of Strengths)に取って代わるために開発されたのではなく、特定の研究目的のため の短い尺度を提供するために開発されている。

・よって、標準的な場面ではVIA-ISの使用を強く推奨する

こうした1つの質問票をめぐっても、どこまで短くできるか、また通常版と、短縮版をどのように使い分けるかなどを考えるよい機会になりました。

上記のCSRFの日本語版なども、たとえば、リーダーシップ研修等で、自分の強みの自己認識を深めたい。でも240の全ての質問を答えるのは時間的に難しい…などの場面で目安としても使えそうだな、と思いました。

最後までお読み頂き、ありがとうございました!

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