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Joey Meneses

0.はじめに
 19年シーズンの新外国人選手。ポストシーズンの最中、はやくも合意間近との話が挙がったのはオリックスでした。ジョーイ•メネセス(26)。18年のAAA(投高のIL:インターナショナルリーグ)で本塁打(23HR)と打点(82RBI)の二冠に輝き、打率(.311)でも2位、OPS(.870)で1位につけた右打ちの強打者です。今回はこのメネセスについて、少し雑談を交えつつ、どのような選手なのか皆さんにご紹介をいたします。


1.オリックスの新外国人野手のトレンド         以下の表をご覧下さい。直近5年間のオリックスが獲得した新外国人野手のリストです。12年にKBO(韓国球界)から獲得した李大浩は大活躍を見せた一方、その後16年までは米国球界やBCリーグから獲得するものの、1年を通じてチームを牽引するような選手を獲得することはできませんでした。失礼ながら決して獲得に長けた球団とは言えません。しかし、17年に転機を迎えます。オフに獲得したロメロ、途中加入のマレーロが大活躍。米球界産の選手で成功しました。

 彼ら二人に共通するのは、一言でいえば、「パワーツールとコンタクト力を兼備した中長距離砲」という点です。ロメロはAAA(打高PCL:パシフィックコーストリーグ)で.304 21HR 85RBI OPS.902 14.5K%(三振率)、マレーロはAAA(IL)で.284 23HR 71RBI OPS.838 15.6K%を記録しています。そしてメネセスはAAA(IL)で.311 23HR 82RBI OPS.870 20.5K%。今回の合意間近のスピードの速さを見ても、オリックスが上記のタイプを成功の型とし、トレンドに基づいて獲得に動いている線が濃厚だと言えそうです。


2.ジョーイ・メネセスの覚醒要因
 今季に大活躍だったメネセスですが、これまでのキャリアでは特筆すべき活躍は見せていませんでした。二桁HRを記録したシーズンはなく、打率や三振率からみても、まさに中距離打者といったタイプで留まっていたことが分かります。そんな彼が今季にAAAに初昇格し、HRとOPSで投高リーグ1位の数字を叩き出したわけです。一体どのような変化があったのか、マイナーの限られたデータの中で考えていきましょう。

 (出展:fangraphs)

実は、メネセスと似たような覚醒曲線を描いた選手が18年シーズンの新外国人選手にいます。41HRを放ち、セリーグ本塁打王に輝いたDeNAのネフタリ・ソトです。ソトは、マイナーで10年に21HR、11年にはキャリアハイとなる31HRを放つなど、キャリアの出だしはスラッガーとしての才能の片りんを見せていましたが、その後はAAAの壁に躓き、14-16年の3年間では長打力が大きく低下し苦しみました。ところが来日前年となる17年では、AAA(IL)での68試合で.293 14HR OPS.860 17.5K%と覚醒。今季のセリーグ本塁打王の姿へと繋がっているわけです。

 このソトの覚醒。様々な要因が考えられますが、その一つに「より長打が打てる打撃スタイルへのシフト」が挙げられます。上記の表をご覧下さい。マイナーでのキャリアハイとなる31HRを放った11年で、GB/FB(ゴロ/フライ)が0.90、HR/FB(ホームラン/フライ)が23.6と高い数値を記録したのを最後に、その後はそれぞれの比率が低下、特に低迷期の14-16年は打球が上がらずゴロ性の打球が非常に多かったことが見てとれます。そして覚醒した17年。11年の数値には及ばないものの、1.12GB/FB、19,2HR/FBと打球の質が戻ってきていたことがお分かりいただけると思います。つまり、DeNAのソトの獲得は復活傾向を見逃さなかった根拠に基づいた補強であった可能性が高かったわけです。(当時の映像を比較するとその差も歴然です。16年までは現在ほど足を高く上げて間を作っておらず、スイングも鈍い。) 一方で、メネセスは、スラッガーの片りんがあったソトとは異なり、もともとはミドルヒッターです。しかし、また彼も、今季に打球を最適な角度で打ち上げることで中長距離砲として才能を開花。AAA屈指の強打者へと変貌しました。


3.詳細データ
 せっかくですので、ソトを中心に比較しながら、もう少し細かく見ていきましょう。

下記の表をご覧下さい。ソトの圧倒的な安定感が光ります。右左の差はなく、球場の違いも苦にしない、またチャンスにも強いと、鬼に金棒です。一方のメネセスですが、左投手を大得意としており、右投手にはやや数字を落としています。この点はやや懸念材料ではありまして、ロメロ(PCL)やマレーロも含めても対右投手での成績減少幅が最も大きい結果が出ています。(本塁打のペースは同等程度)

ロメロ(16年);(349PA) .299 17HR OPS.884 16.6K%            マレーロ(16年);(408PA) .275 20HR OPS.837 16.2K%

ホームでの数字の低さについては、PHI傘下の本拠地LHVはILの中ではやや打高寄りの球場であるため、単純に球場との相性が良くなかったものと推察されます。また、得点圏の数字についても走者なしと比較すると、やや数字を落としています。とはいえ、表中に記載はありませんが、年間を通して不調になった時期が非常に短く、1年間高い数字を記録し続けたことは素晴らしかったメネセスです。

 また、守備については1B(一塁)、RF(右翼)、LF(左翼)で、主に1BとRFでの出場が多いです。走力には乏しいため、守備範囲はやや狭いものの、足を引っ張らない程度には無難に守れます。


4.映像
 最後に映像を纏めましたのでご覧下さい。


5.おわりに
 18年シーズンNO1のマイナー選手といっても差し支えなく、また26歳という若さを考慮しても、獲得できれば大きな存在になりそうなメネセス。ロメロ、マレーロに続き、自球団のトレンドとして「パワーツールとコンタクト力を兼備した中長距離砲」に早くも白羽の矢を立てました。「より長打が打てる打撃スタイルへのシフト」したことで中距離打者であった彼は覚醒しました。                               その一方で以下の点は懸念材料に挙げられます。

ロメロ、マレーロ、ソトと比較すると、三振が多く、また対右投手での成績が低く、対左投手で大きく数字を稼いでる点。(ただし本塁打そのものは右投手からも3選手と同等のペースで打てている。)

元来、中距離打者であり、今季の覚醒がフロックである可能性がある点。 →ロメロ、マレーロは過去に二桁HRを放ったシーズンが複数回あり、ソトは31HRを放つなど、3人もともと長打力のある選手でした。メネセスは、昨季までは二桁HRを放ったシーズンは一度もなく、パワーツールを発揮したのが18年が初といった状況です。この活躍を来期以降も継続できるかという点にやや不安が残ります。


まずは、17年のロメロやマレーロのような姿をイメージしつつ、どこまで成績を伸ばしてくるか、覚醒は本物だったのか、そのようなところに注目していきたいジョーイ・メネセスです。


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