見出し画像

宇野維正先生考察第二十段  POP LIFE THE PODCAST まだまだ米津玄師を褒める宇野先生シリーズ四回編

前回に続き今回は米津玄師回の本題。四回シリーズの宇野先生の発言をピックアップしていきます。前回に続き基本的に米津玄師を褒め続ける宇野先生です。


#091 米津玄師の“感電”は何処がどう凄いのか? Guests: 有泉智子(MUSICA編集長)、佐藤栄太郎(indigo la End)、宇野維正


『俺は有泉ともタナソーさんとも親しいじゃん。その立場で言うとこの二人の相性は絶対良くないので。間に入って何かあったら仲裁するなりの役割のつもりで来ました。』
タナソー「2010年のムジカのインタビューでとにかくTwitterが凄いという話をしていた」
『タナソーさんが!?のどかな時代だねー。』
『スヌーザーでもTwitter特集してましたよね』
『140文字の革命とかやってましたよね。それが今じゃ宣伝しかしない。』
『僕がこれまでやった中で一番楽しかったのがサザン回だもん』
『佐藤さん、前回のサザン回は呼び出されたりとかしなかった?』


タナソー「前に番組で言ったけど二人の母親と然るべき関係が結べなかったからミソジニストになりました。」
『その回めんどくさいから聞いてないや』
三原さん「笑い声」

タナソー「改めてご挨拶を」
『宇野維正です。前回の磯部さんの時続き。米津さん、米津くん?』
タナソー「僕は米津くんって言っちゃうんですよ」
『嫌ですね。何かね。米津さんの話もしたんですけど。今回、有泉が来るっていつから心配になって。有泉が仕事で一番リスクあるかもよ』
『始まったら意地悪の質問するかも知れない』


タナソー「これまさちゃんは映画業界の未来の事はいつも心配してるけど音楽業界のことなんてどうにでもなってしまえとか思ってない?」
『うーん…なんだろう… あれですよね。海外の音楽シーンに対する物と日本の音楽シーンに対する物とちょっと違ってとは言えね。ムジカで有泉と雑誌を作ってた事もあったよね?一年半ぐらい。』
『その時にスターサッカーというサッカー雑誌をやってるはずだったんだけどそれが休刊と言う名の廃刊になって。で、宇野も手伝えと言われて一年半手伝ったよね。だから、日本の音楽シーンって知ってるじゃん。知ってるが故のあれがあるよね。うん…』
『だってタナソーさんだってそうじゃん。』
『芸能もね。悪いことばっかりじゃはい。そこで作られた物で素晴らしい物も沢山あるので。』
『ただその重力が物凄く強いので。』
『三原さんだって日本のアーティストを語るのはリスクあるよね』
『アーティストに対して優れたアーティスト沢山いるし信頼もしてるけどその周りにいる人たちがどんな人たちか分からないって言うのはありますね。』
『僕の中で有泉は音楽業界で珍しいタイプのライターで海外の例えばインディペンデントなコアなビートミュージックが好きなのね。それと同じ情熱で日本のバンドミュージックが好きで。でも普通どこかで本音と建前みたいな物が出て来るじゃん。好きな物と仕事で。だけど有泉に関しては一緒に仕事した時もその後もコアな物とベタな物を同時に矛盾なく愛してるタイプの編集者、ライターでそこに嘘がなくだからこそ信頼されてるんだなと思う。』
『いや、ぼくは今もリアルサウンド映画部のアドバイザーもやってますけど海外と日本映画を分けた年間チャートは絶対やるなと言ってます。今僕はキネマ旬報でも仕事してますけどキネ旬とかが海外映画と日本映画を分けると言う事が今の日本の姿を作ったと思うのね。ある程度権威を得ちゃってる。そこがやっぱり一緒に考えるべきだろうと。』
『だってさ、フランスのカイジシネマはフランス映画と海外映画を分けたチャートは作んない訳じゃん。当然だよね。それと同じで音楽もそうであるべきだし。ムジカは鹿野さんに世話になってるから洋楽チャートと邦楽チャートで分けて出してくれって言われたら出すけど極力一緒にしたい。ある年だったら宇多田ヒカルがフランクオーシャンと一緒に入って来るだろうし、米津玄師のストレイシープも年間のトップテンにダベイバーと一緒に入る訳。どっちも聴いてるんだったらフラットにやりたいなって言うのはあるよね。』


有泉さん「元々ムジカは4:6で洋楽、邦楽の雑誌にしよう思っていた。」
『けどなり立たなくなったよね』


『00年代後半以降の洋楽メディアの困難さ、成り立たなさは2010sでもタナソーさんと語ったことだよね。』


『インディゴラエンドの最近のシングルは相当良いですよ。』
佐藤さん「本当ですか?」


『手元に高山さんのSpotifyの高山徹ワークスのプレイリストがあるんですけど、そうそうたるメンツだよね。』
『体感と実際のBPMの違いは意味があるってことだよね。』
『僕も今来る時、皇居の横を感電を爆音で掛けながら一緒に歌ってきましたよ。あれは凄いね。』
『タナソーさん今の言い方だとインディゴ落としてますよ。佐藤さん目の前によう言うは思ってしまった。』
『僕みたいなツッコミ大事にしたほうが良いですよ。』
『反面教師だけどハマくんのラジオにタナソーさんと一緒に行った時もハマくんとかタナソーさんにビビっちゃってんだもん。みんなビビっちゃってんだもん。』
『僕もつなげようとも思わないし大概、反面教師としてね。知りますよ。』
『みんな比べるの避けすぎてから。それは明らかに批評を弱くしてる。それは落とし入れるためじゃなくてそこから見えて来る物がある。』
『僕の大学の卒論ボリスヴィアンですから。』


『座右の銘も泡沫の日々の中にあります。「僕はいつでも機嫌が良くて機嫌が良くない時は寝ている」』
『僕の座右の銘かっこいいでしょ?僕いつも機嫌良いもん。』


『僕の卒論はどちらかと言うと彼が架空の黒人作家になって黒人文学のパルプフィクションを書いてたんですよ。そっち系の話を書いた訳ですけどね。僕の中では彼はマイルスデイビスなんかとも交流があってジャズプレイヤーでもあったんですよ。こんな何でもやる方だったんですよ。野坂昭如みたい。ちょっと違うか?いや、結構近いと思うんだけど。僕は野坂昭如さんも大好きだけど。中二病って言われるとあれだけどそうじゃなくて僕の卒論はパリにおけるブラックカルチャーとの需要みたいな事を書いたんですよ。それは僕のジェイムズボールドウィンへの関心にも繋がってるんですよ。』
『僕は米津玄師の不真面目な所が好きって言ったんだけど、ストレイシープは不真面目なんだけどそこに責任感があるって言うのが僕の聴いたときの印象で。不真面目さは相変わらずでそこが彼の凄いチャームポイントだと思ってて、それが他の日本のビックなアーティストには余りない傾向。それは桑田さんにはあった傾向なんだけど。不真面目さ。そこに僕は反応するんだよね。だけど無責任ではないんだよね。そこに責任感があったりする。僕はアーティストのインタビューあんまり読まないけどこの間のインタビューで「自分の音楽にbootlegで小学六年生の時に出会った子は中3になっている。その事をどうしても考えてしまう」とけど、そうだよね。とは思うしもっと無責任で良いのにとも思うけど、その責任感みたいな部分が聴いててもどかしい所もあるけどそれがこの作品のチャームであり彼の資質なんだろうなと思いながら聴いたな。』
『シニシズムもあるけど。斜に構えてるんだと思うよ前提は。』
『不真面目さは不良性と言っても良いんだけど。そこがない音楽にあんまりセクシーさを感じない。』

三原さん「タナソーさんこんなに褒めるの珍しいですね」
タナソー「そうだね」
『別にタナソーさんが言うからなんだって話ですけどね。』


『けど、有泉の話も佐藤さんも話もタナソーさんの話も面白かったし充実的な回だったんじゃないですか。』
『何気に序盤、司令塔的な役割でパス回してましたよ。』
有泉さん「宇野さんと話すとき絶対そうな役割してくれないのに」
『うん、僕はタナソーさんといる時そういう役割をするんですよ。気持ちよくプレイ出来る様に。』
『有泉といる時は無責任なお兄ちゃんみたいな。』

【寸評】

宇野先生の座右の銘が聞けた貴重な回となりました。機嫌が良いらしいです。いつも。

宇野先生は突っ込みだと自己分析しているようです。はい。

POP LIFEがホモソーシャル的だと批判されてそれについて語る回に「東京の女の子、どうした?」で有名な宇野先生がいなかったことがネットで色々言われてしましたが本人は聞いてないそうです。



#092 米津玄師1st『diorama』と、その時代 Guests: 有泉智子(MUSICA編集長)、佐藤栄太郎(indigo la end)、宇野維正


『原稿書くのも喋るのも大好きだよ。インタビューはやるよりうける方が好きだね。』
『そう責任ある立場には立ちたくない』

『タナソーさんと有泉心配したけど仲良いんじゃん』
『柴は多分ね。今日の収録呼ばれるの何で俺じゃないの?思ってる。』
『山崎さんも言ってるし有泉も言ってるけど米津玄師が10年に一人の才能だとか言うじゃない。僕は当時音楽誌の編集はしてなかったんだけどその感覚が全然分からなかったんだよね。今思えば有泉なり山崎さんが正しかったのかな?と思うけど、彼の歩みを振り返っていく中でさ。精神性とか後じゃん。まずは音楽に興味を持っていってからその人の精神性みたいなものを知るわけで。だからそれさ、先に立たないんで、僕の凄いざっくりした。ムジカとかでレビューは書いてたけど気にはなってたから。ボカロ時代はボカロだし、米津玄師の名前で出てきたときは音楽だけ聴くとバンプが好きなんだなあとかボカロだなあーと言う感じで良さはあったけど全然気付かなかったよね。このレベルの才能だと言うのは。今はそう思うけど。そういう意味でははっきりと全然気付くのが遅かったなと言う自覚はある。けど、とは言え自分が気付くのが遅かったのではなく米津玄師が相当変わったんじゃない?というのはある。bootlegから曲で言うとナンバーナインとかルーザーからの流れからで、有泉が作ってくれたplaylist聴いても今でも昔の曲はピンと来ないんだよね。』
『いまさ、ちょっとさ過去に米津玄師に書いた事についてクラウドにあるから読むと声の事しか褒めてない。レビュー書くときそこに焦点当てるしかなかった。これは個人的なテイストの話だけど、これは今こういう言葉は使いにくいと言われてるけど俺はそう思わないからあえて使うけど、ブラックミュージック。ブラックミュージックのリファレンスとかそこの部分があるないで好き嫌いの価値観がはっきり分かれてしまうのね。僕の。そのテイストに合致する部分で入ってきたのはbootleg期からで、つい最近。』
『さっき佐藤さんが名前出したけどヨルシカとYOASOBIとずと真夜。その中ではっきりずと真夜だけが好きなんだよね。それはなぜかと言うと彼らは完全にブラックミュージックが素養になってる。メロディにせよリズムにせよ。ヨルシカとYOASOBIも良いなとは思うけど初期の米津玄師を聞く感じで自分の聴く音楽じゃないと思っちゃう。米津玄師に関しての自分がのめりこんだのはその距離感なんだよね。』


タナソー「ソイヤ、ソイヤと盛り上がって…」
『ソイヤ、ソイヤは一世風靡セピアだから。』
タナソー「来年ぐらいトラヴィススコットがソイヤ、ソイヤって言うと思うよ。
『まあ、ミーゴスもハンチョウ!とか言ってるからね。』


『僕は三原さんのことよく分かるんだけども。』



『バンプの生きづらさって言うキーワードにそこまで共振しなかったんじゃないの?』
『そこはやっぱり柴とかが米津玄師に共振すると思う。有泉はそこに共感するのか分からないけど。』

『あんま好きな言葉ではないけどインキャのものだったんじゃない。そういう意味では僕とか三原さんは違うじゃない。』


『有泉の話もそうだけど2010年代はフェスカルチャーが大きかったけど米津さんがそこにリンクしなかったのは戦略的ではなく精神性と必然的があったってことだよね。』
『バンプに関してはどこかでキャリアの転向があったじゃない。』
『ライブのプロダクションの面でもね。』
『僕もSHISHAMO大好きだった。』
『タナソーさんが言ってるのは理想化された世界のことだと思う。』
僕がノーザンソウルの例を出したのは労働者階級のフットボールカルチャーにも近い世界なんだよね。僕が大好きな本に『When Saturday Comes 』って本があるけど、週末のサッカーゲームだけが我々の息抜きだって。』『SHISHAMOの明日へってフロンターレの曲でサッカーアンセムでもある。』
『フリーガンカルチャーは美しい物ではない。クソみたいなもの。』
『J-ROCK、フェスカルチャーについてはともかくそこでタナソーさんがSHISHAMOのあの曲を悪く言うのは違う。』
『たしかにそうやって消費されたのは事実だよね。』
『SHISHAMOの単独とか当時好きだから言ってたけどパンクっぽい曲で盛り上がる訳よ。宮崎さんってすっごいソングライターだと思うけど彼女のちょっとミディアムな曲だと客の温度が明らかに変わるのよ。あの空間でやってるとそっちに流されてしまうのは分かるけど。ちょっとあの空気だったなとはたしかに思う。』
『米津玄師のリスナーだってそれとは無縁ではないんだよね。最初、Spotifyに解禁された時一番再生多かったのはピースサインだったじゃん。ああそうなんだなと思ったけど米津の曲の中ではウォーウォーで始まるのはその磁場に近い曲じゃない。』
『もはや無縁ではないけど、その筋とは違う道を歩んで来たのは重要なポイント。』
『2017年ぐらいから変わって最近のバンドはフェスの文脈から出て来た訳じゃないのが多いぐらいじゃないですか。』


『僕はだから邦楽フェスの地場に関わってきた逃げ場はウルトラジャパンとか言ってたからね。』


僕はウルトラジャパンに何年かいって得たものも大きいよ。』
タナソー「ウルトラジャパンは配信で十分」
有泉さん、宇野先生『『そんな事ない』』


『欅坂はその商業化って所もあるけどね』
『有泉は客観的でちゃんとしてるなと思うね。』
『SHISHAMOがディスられたらいかんなと思って必死だった。タナソーさんが誤解を与えないようなアレを入れてるわけだから。』
『今回な話だとフェスorボカロみたいに話になってるけど、ボカロで語られがちなせYOASOBIにせよ、ずっと真夜にせよ。それこそゲスの影響って大きいと思うし、あと相対性理論の影響と大きいと思う。』


【寸評】

ジャーナリストなのにインタビューは受ける方が好きとはさすがの宇野先生です。

今回はやたら俺は三原さんと同じ人間。三原さんの事をよくわかってるという謎のアピールをする宇野先生でした。

SHISHAMOとウルトラジャパンとは全く正反対と言っても良い物を必死に擁護する宇野先生も興味深い。



#093 米津、セカオワ、ゲスの時代――2014年 Guests: 有泉智子(MUSICA編集長)、佐藤栄太郎(indigo la end)、宇野維正


『めんどくさいんでアイアンマンがどうとか否定とかしません。アイアンマンです。』
『面白いよね。今回。佐藤回にハズレなしと言うかね。』
『2014年。僕がウルトラジャパンに行ってた頃ですよ。』
『まあ二回前の話になるけど当時入れ込んでたのはメジャーだとセカオワ、マイナーだと相対性理論。みんな世の中舐めてる感じ。不真面目な感じがリンクしてる。』


『タナソーさんは真面目だと思ってる。たまにタナソーさんのその真面目さが耐えられなくなる。』
三原さん「私は?」
『三原さんは不真面目。』


タナソー「やたらゆうきちゃんを同じカテゴリーに入れたがるよね。」
『今日も何かさ三原さんは収録一時間前にほとんど裸で桃を食べてるとか言ってて僕もほとんど裸でタバコ吸ってて似てるなあって。』

『突っ込まれるから言っただけ。』
『僕の中のシンクロニシティを感じてる。勝手に。』

『やっぱりRADとかは僕は味噌汁'Sの活動が結構好きだったんだけど。中指立てるのを分離させて表現せざるえなかった。それはそれで面白いとは思っていたけど。』
『絶対タナソーさんとも有泉とも分かり合えないんだよ。』
『世の中ってさ。基本的に不平等なものだと思ってる。平等を求める人に水をさすつもりはないけど。』
『僕は人生は幸せを追求するものだと思ってるけど。』


『本田圭佑が若者の自殺が増えてるって記事を引用して。本田圭佑って極め付けの馬鹿なんで。これはカットしなくて良いんで』




『本当に世の中に害しか及ぼしてないと思ってる。』
『日本代表とミスターチルドレンって本も本田圭佑の発言に耐えきれなくなって書いた本なんで。』
『あんまり言うと宣伝になっちゃうから嫌だけど。』
『本田圭佑が調子こいた発言をしてる中で米津玄師くらいですよ。有名な人で批判してるの。』
『そういう信頼の蓄積が米津さんにはあって。』

『本田圭佑は今より影響力ありました。いま彼なんてほとんど影響力ないけど。』


『まあ分かんない。自殺する人間像を決めつけてる事への怒りだと思うけど。』

『よっぽど我慢ならなかったんだよね。普段そんな事彼はしないから。』
『一応補足しておくと消していませんでした。』
『本当に目に余る事が多くて。有名な人は言わないんですよね。それの蓄積が彼への信頼になってる。』
『僕の知り合いだけど中野敬久さん。彼の影響かも知れないけどウィークエンドのマーチを着てたのが米津くんとバンプのチャマ。』
『僕もタナソーさんも当時行ったけどウィークエンドのポップアップストア、外国人しかいなかったじゃん。そんな中で買ってた事への信頼と積み重ねもあって音楽的にも好きになっていった。』
『それが僕の米津との距離。邪道だよ。』
『だからウィークエンドのオープニングアクトの米津さんを特別な思いで見てた。米津さん自身も特別な思いがあったと思うけど』
『そういう人が人気者で日本にいないからさ。』
『有泉が言ったのはブレーメンの音楽隊でありハーメルンの笛吹としてのアンブレイバーズ』
『僕も最近割と公言して憚らないですよ。ティーンへの思いを。銀杏BOYZの曲じゃないけど大人全滅だもん。』


『自分の反省だとロッキンジャパンに来てる子たちを愛せなかった。』


『スタートした時から関わってて。最初の頃はロッキンオングジャパンの読者とロッキンジャパンの客が近かったの。自分が何日も徹夜してつくった本を読んでる子たちを愛せないと思ったのが会社辞めた理由の一つ。』


『気が付いたらロッキングオンジャパンの読者とロッキンジャパンに来てる客がリンクしなくなった。』


『スターサッカーやってる時代にFC東京特集号を味の素スタジアムに売りに行くと千円札握り締めた小学生の男の子たちが買いに来てくれて。それを見て泣けてしまった。この子たちために頑張ると思ったのに廃刊してしまった。』


『けどその時にようやく正しい場所に来れたという感覚があった。それからフリーになってからは食うのが精一杯だったけど最近あの頃の思いを思い出して来た。』
『ゲスはその前年にセカオワが大ブレイクしてそのCMのタイアップ取り方や紅白に出方などを踏襲していた。2014年の年末はセカオワ。2015年の年末はゲスが国民的バンドになっていった。しかし年が明けると大変な事になった。』
『テレビフレンドリーなのがセカオワが作ったフォーマット。』
『その頃から割とフェス中心以外の成功例が出てきた。』
『僕は有泉が米津玄師を聴いてこれはとんでもないっていう感覚を2010年のセカオワに感じていた。』


『セカオワの当時のライブに誘われていったんだけどつたないけどこれは時代を変える。トップに立つなってその時点で分かった。』


『その思い入れが強くて。その時点でもう雑誌はやってなかったけど。タナソーさんがお前は日本の音楽業界がどうなってもいいと思ってるって言われたけどそんなことはなくて。網羅性を捨ててたんですよ。雑誌をやらないっていうのはそういうことだから。線としてはもう自分はおっかけなくても良いけど点としては追っかけた。』
『ゲスが出て来た時は音楽性は違うけどセカオワの成功例をトレースしてるなと思った。音楽的にはあのスタッカート気味のピアノを後世にめちゃくちゃ影響を与えたと思う。』
『スタッカートって今キーワードで。ダベイビーがなんであんなに人気あるかというとキレの良さですよラップ。ダベイビーの気持ち良さって語尾のクッとクッと切っていて。オッケー、レッツゴー。あれなんですよ。だからストリーミングの再生環境とスタッカート的な音のキレって相性が良くて。いまになってゲスの影響を受けてるアーティストを見ながらゲスって凄かったなと思ってる。ダベイビー聴きながら。』
『セカオワは曲によって違う面を出すのが売りだから。』
『米津玄師はブラックミュージックの要素だけでなく、ゲスやインディゴにも歌謡曲の猥雑性を感じている。夜の街を感じるという。川谷さんの音楽好きな部分があったね。』
『POP SMOKEなんてほぼ全部犯罪者の曲だからね。』
『ミュージシャンに限らず生きにくい社会の中でたくましいよ川谷さん。2010年代後半を象徴するソーシャルの炎上やキャンセルカルチャーと隣り合わせの中でやっているのは。』
『サチモスも米津さんもソーシャルに関わらないようにしてるって人も多い。表現に戻してる。健全だとは思う。』

【寸評】

相変わらず三原さんを自分と同じ枠に入れようとする宇野先生です。

以前から本田圭佑の有名なアンチとして知られる宇野先生がPOP LIFE THE PODASTで本田についてここまで話したのは初めてだと思います。

敵の敵は味方論理で米津玄師にシンパシーを感じ好きになった宇野先生。

宇野先生がロッキングオンを退社した理由も興味深いですね。もちろんこれだけではないでしょうけど。邦楽フェス文化を批判する宇野先生がロッキンジャパンフェスを作り上げた一人と言うのは面白い話です。

スターサッカー時代の話も興味深いですね。スターサッカーが今でも存在すれば宇野先生も鹿野淳も未だにサッカー界にいたかもしれない事を思うと廃刊が本当に残念に感じます。スターサッカーを当時のメンバーで復活させて欲しいです。



#094 米津玄師、BUMP 、野木亜紀子、宮崎駿 Guests: 有泉智子(MUSICA編集長)、佐藤栄太郎(indigo la end)、宇野維正


『米津玄師のルーザーが2位になった時は1位がAKBそれぐらい世の中に届いていた。』
『一位AKBじゃなかった。K-POPのiKONだった。すいません。間違った情報伝えちゃうとまずいからね。』
『米津玄師作品に親近感を感じるようになったのはナンバーナインからだね。とはいえ同時代性みたいなことで言うと子慣れきれてない感じはある。あと、この時だったら海外の音楽シーンに近づいているのか分からない時だったじゃない。結果的に彼はこれから独自の音楽を作りだすわけだけど。例えばセカオワがドラゴンナイトとかでやってたこととは全然違う。この時には全然分からなかったよね。本当の凄みを感じるのはbootleg以降だけどね』


『そっか、Bremenまでがユニバーサルシグマでルーザーからがソニーなんだね。メジャーの中でも移籍があるんだね。』

『フローで言ったら米津さんも独自のフローを確立していったよね。あの民謡のようなこぶしが入る感じ。あのこぶしが好き嫌い分かれる要素だって書いたこともあるけど。今思えば彼の歌い方ってすごく考えてることなんだと思うよね。』

『米津玄師の曲ってカラオケとかで歌うと気持ちいいんだよね。民謡とか好きじゃないけど、やっぱりDNAを刺激される感覚があるんだよね。』

『シーンにおける米津玄師の独自性は相当画期的だなと思います。』
『サウンドプロダクションが海外に寄ったことにより逆の方向に向かうためのフローと言うのはすげー分かる。』

『そうだねフローと言うよりボーカリゼーションだね。』

『ボカロ由来かも知れないけどエディット感。細かいあの。海外のサウンドプロダクションを前提してやれること全部やるみたいな。』

『海の幽霊以降さ。今回、馬と鹿とか感電とパプリカとかのコラボレーターとして入ってる坂東 祐大さん。キーマンだよね。どう考えても。』
タナソー「トムヨークがジョニーグリーンウッドを見つけたみたいなことだよね」

『それぐらい大きなことかも知れない。』

『いよいよモテ期じゃないですか。坂東 祐大さん。』

『それぐらい凄みが今回のアルバムあるんだよね。』

『野田さんとのプラシーボ聴くと。自分のバースは自分で書くんじゃないんだって思った。野田さんなんて言葉の天才なんだからそれも見てみたいって思うね。そこは違うんだって。』

『宇多田ヒカルと椎名林檎の二時間だけのバカンスとかもさあ。だからこそも面白さもあるけど。』

『プラシーボめちゃくちゃ良い曲だからさ。だからこそのって言うのはあるよね。』
タナソー「コピーライトの問題もあるからね」

『そうだ、そうだ、それもあるわ。それも重要だわ。』

『元々ストレイシープは聖書の言葉なんで。米津玄師がクリスチャンとは思わないけど。それはどうでも良いことだけど。lemonを紅白で教会で歌ったもの…』
有泉さん「美術館」

『あっ、美術館か。』

『キャンドルの感じがチャーチっぽい演出だったじゃないですか。』

『米津玄師とクリスチャンキーは個人的に気になってるポイント。』

『それこそ小沢健二とかもそうだけどキリスト教的な価値観とかワードとかは使える人だなとは思ってる。』

『今回話にならなかったのは彼の絵とかもキリスト教とかにも関わってるのかな?とは思うけどそこは詳しくないので語れません。』

『米津玄師は宮崎駿さんに会いに行ってますからね。僕は勝手に次の宮崎駿さんの映画の音楽は勝手に米津さんだと思ってますよ。』

『米津さんの曲も結果的にタイアップが多くなってるしタイアップって批判的に語られるし僕も批判的だけどそれは大好きなアーティストがつまらないタイアップをやりすぎるから。だけど米津さんは彼のすべてのタイアップがうまくいってるとは思わないけど彼が直接働きかけてやってるところも含めて頼もしいな、そうあるべきだなと思ってる。』

『野木亜紀子さんの作品って僕はそんなに評価してないんですけどアンナチュラルから今回のMIUも含めてレモンと感電と言うのはセールスだけじゃなくて作品的な成果を生み出す大きな原動力の一つになってるし有機的なタイアップのあり方みたいな物も彼は一つリードしてるんじゃないですかね。』

『MIUは刑事ドラマがある程度警察を肯定的を描くのは当然だけど犯罪者に対してもある程度肯定的に書いてるのはそうですね。』

『ちょっと集中しすぎちゃってますけど星野さんも含めてね。野木さんドラマに関しては。あのだから強者連合的な感じは息苦しさは感じますよ。誰かが悪いわけではなく。』

『だってみんな失敗したくないもんね。みんな失敗したくない人が集まるとそうなちゃうよね。』

『野木さんの書くセリフはそんなに日本一ではないぞと言っておきたいですね。言葉に美学がない。ネットスラングを使ってるのを見るとビックリする。例えばマスゴミみたいな言葉を普通に脚本に入れられるのは信じられない所はある。』

『勝ちパターンが一つになってるのは息苦しいと思う。』

『ホラーに関しては世代によって変わって来てて若い世代はちょっとした怪談とかの読み物とかジャンプに連載されてる漫画とかちょっとしたホラー要素がある。鬼滅もそうですけど。距離が変わって来てますよね。』

『ポップミュージックの中でlemonみたいな明確な死をテーマにしてる曲じゃなくても人間の死をポップミュージックの中で対象として捉えてる音楽は求められていたんだと思う。特に若い世代は。僕ら世代より全然あるし。』

『図らずも大絶賛回でしたね。サザンはおじさん二人が初期が良かったって話をしてたけど米津さんに関しては今が良いよねとみんなが話してた。』

『一番売れてる物って結構良いんだよね、この国不思議だよね。前も言ったじゃん。サザンにしても村上春樹にしても一番売れてる物って良いんだよね。他は良くないのに。不思議だよね。』

『だから俺も一番売れてるライターにならないと。』

『2010sは部数的には一番少なくないけど出した本では少ない。』

タナソー「一緒にやるより別々にやったほうが売れる」
そうだね。ドレイクとDJ キャレドみたいに。
タナソー「どっちがドレイク?」

『僕!僕!』

『前回の磯部さんの回で暴言吐いても誰も拾ってくれなかったんで今日は暴言吐いたら拾ってくれて凄い嬉しかった』
タナソー「どこまでセカチューなんだ」

『そう言う役回りだと思ってるから。』


【寸評】

宇野先生はカラオケで米津玄師を歌うそうです。はい。

宇野先生はジャーナリストなのにヲタク的にノリでテキトーな事を言って問題になることがありますが今回は宮崎駿の最新作は米津玄師が音楽担当するとの事です。どうなることやら。

宇野先生は前から野木さん批判をよくしますが今回は具体的に批判してて興味深い。あと鬼滅の刃否定派でも有名ですがそれについての言及も。

俺はドレイク、一番売れてるライターになると相変わらずの宇野先生節が一貫しててそれは凄いと思います。

あと宇野先生は関係ないですけどレディオヘッドとかDJキャレドとドレイクとか米津玄師回で何の説明もなく比喩として出てくるの結構意味わからない人も多そうな気がしてます。米津玄師回だから聴いた米津玄師ファンには結構優しくないPODCASTですがそれがPOP LIFEだと言えばそうなのかも知れませんね。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?