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宇野維正先生考察第七十八段 FM COCOLO Whole Earth RADIO ポップカルチャー2022 映画テレビシリーズ編の宇野先生編(12/4)

今回の宇野先生考察は12/4にFM COCOLOでオンエアされたWhole Earth RADIO ポップカルチャー2022の後編 映画テレビシリーズ編にタナソーと共に出演した宇野先生の発言をピックアップしていきます。



『映画音楽ジャーナリストの宇野維正です』
『先週に引き続き今回も我々がお送りするポップカルチャー2022。音楽と映画を中心に世界の最新エンターテイメントについてお話しです。2週目の今回は映画とテレビシリーズについてのお話』 
『まずは海外テレビシリーズについて。そっか、映画より先にテレビシリーズ。まあ、それが割と当たり前になってるのが現実ですね。』
『ただし本当にコンテンツが飽和状態でNetflix、Amazonプライム、U-NEXT、ディズニープラス。他のプラットフォームの方は申し訳ないんですけど、まあまあこの四つを観てれば最新物、重要な物は抑えられる。逆に言うとこの4つに入ってないと抑えられないって言う。四つ合わせたら一カ月何千円ですか?って言う結構そこのハードルがある中でどれだけ皆さんと共有できるのか?と言うのもあるんですけども、正直、この四つに入らないと分からないよね。でも、どうでしょうね。日本って年間映画に行く本数って言うのが平均すると1.4本なんですよ。と言う事は三千円ぐらいじゃないですかね。年間でね。そうなるとハードル高いじゃないですか。』
『それこそ我々二人の関心で言うと先ずはマイケルマンのTOKYO VICEに盛り上がったじゃないですか。あれとかもHBOの作品なんだけど、WOWOWと共同制作なんだけど、日本だとWOWOWでしか観れないじゃないですか』
『キリングイヴとかもWOWOWでしか観られないからね』
『パラマウントプラスが日本にローンチしてないからスタートレックみたいなビッグタイトルが日本で観れないんだよね』
『これはメインの四つぐらいを契約してる人は共有できる話だと思うんですけど、今年の春から夏にかけて一旦の休止はあったものの、ベターコールソウルと言うピークTV時代のゲームオブスローンズと並んで最高傑作と呼ばれているブレイキングバッドのスピンオフと言う風に始まったんだけど、ブレイキングバッドより一話多く、ある種ブレイキングバッドを超えてしまったと言う素晴らしい、多分、エミー賞とかゴールデングローブ賞とかでも話題になると思うんですけど、それだけを毎週楽しみに生きていて、これが終わったらベターコールソウルロスになったらどうしよう?と思っていた訳ですが、案の定、ロスになりかけた所にU-NEXTでハウスオブドラゴンと言うゲームオブスローンズの前日譚が始まって、それも毎週でそれで生き繋いできた感じはありますよ。けど、そう言う人は結構いるはず』

『全話一気配信よりは毎週配信された方が盛り上がるって言うのが見えて来ましたね』

『ストレンジャーシングスも前半と後半と分けて配信されましたけど、これだけ作品が飽和状態になると全て一気に観るのは難しいみたいで』

『僕とタナソーさんでも観てるものが全然違って、でも、それが当たり前になっている。みんな自分の観たいものを観る時代』

タナソー「僕はNetflixで配信されてたDCのサンドマンを観ていた。でも、誰にも勧めない」

タナソー「ソウルトゥソウルのキープオンムービング」



『MCUがディズニープラスで去年からですけど、ワンダビジョンから始まって、今年もムーンナイトとかシーハルクとかミズマーベルとかやってるじゃないですか。僕も観てますけど、大変そうね。作品をとにかく、だから毎週観るって言う習慣って言うのが、一気配信よりも主流に戻って来ているっていますけど、ディズニープラスはMCUかスターウォーズのテレビシリーズを毎週、新しいのをリリースしないと契約を切られると言う恐怖の中で作り続けていると言う中で、まあまあ粗製濫造と言わざるえない状況になりつつあるのかな?と』
『これだけどんどんどんどん細分化していったらさあ。時間の奪い合いで大変ですよ。』
『そんな風にみんなでテレビの中の時間を奪い合ってる中で私Movie driverと言うYouTubeの番組を立ち上げましたよ。リアルサウンド映画部と言うそれ自体が僕が立ち上げに関わってるサイトなんですけどその中のYouTubeチャンネルの中でMovie driverと言う車を運転しながら映画について話すと言うね。まあまあ頑張ってるんでね。
我々も世の中のコンテンツの飽和状態に加担しているってことですね。そうして一つ一つの実入りは少なくなっていると言う。切ないなあ

『例えば、キネマ旬報で年間ベスト出してくださいとか言われるけど、劇場で掛かった作品だけですと。えっ!?みたいな。ご存知のようにテレビシリーズも映画も監督も役者も横断して仕事しているんだけども、言ってみればレガシーメディアみたいな所はフォーマットとして追いつかなくなってる中で、せっかく自分がやるんだから、今度も年間ベストとかやっていこうと思ってるんだけど、そこだけでは日本映画も外国映画も日本のテレビドラマも海外のテレビシリーズも全部合わせてトップ10みたいなのをやって行こうと思ってるんですけど、その中で確実に入って来そうなのが、ジェニファーローレンス主演のその道の向こうにと言うですね。Apple TVですね。おおっ!さっきの四つの中にApple TV入れるの忘れてたわ!今年はApple TV凄いのよ。まずパチンコって作品があってあれも素晴らしいドラマで、他にもテヘランとかテッドラッソとか。だけど、Apple TV重要だった』

『素晴らしい作品なんですけど、ジェニファーローレンスと言えばハリウッドのトップ女優じゃないですか。そういう作品が埋もれてるんですよ。まあまあ仕方ないんだけど、配信映画って言うのはこれからNetflixでも重要な作品も控えてますけど、全部を見渡さないと行けないけど、それは不可能みたいな所でですね。より悩ましくなっております』

タナソー「リコリスピザとフレンチディスパッチとケイコ目を澄まして。この3本は圧倒的でした。

僕も劇場で公開された作品だとリコリスピザを超える作品は考えられないので。』

『お気付きの方もいると思うんですけど、ハリウッド映画が本当に減ってます。コロナ禍で製作が減ったり、延期になってり配信にシフトしたりとかして。ここ数年の流れなんですけど、もう構造的に戻らないです。メジャースタジオの作品が年間で80本ないんですよ。凄いでしょ?そして、来年のそうらしいですよ。と言う事は再来年もそうで、今後増える事はないと思う。月に6本ぐらいしかメジャースタジオから作品がリリースされることがなくなってしまった。当然、その中に日本に入って来ない作品も多い。特に黒人が主演の作品だと日本だと興行的に難しいんじゃないか?とかコメディでアメリカだけで人気のある作家の作品だとか。最終的にソフトや配信では大体観れる作品が多いけど、劇場公開されない作品が多いから。これは大変な事です。』

『で、ディズニーのように劇場公開をした作品も約7週間後に配信をしてるからロングヒットにもならない。と言う所でですね。分からない固有名詞たくさん出して申し訳ないんだけど、そんな中で日本で映画界どころか世界の映画界を救ったと言えばトムクルーズ主演のトップガンマーヴェリックで。誰もがヒットはすると思ったけど、みんなが想像していた何倍もヒットして。そう言うイベントとしかないと。日本でもありますよね。ワンピースとか雀の戸締りとか。そうやって特定の作品に観客がやたらと集中する。それで何とか皆さんの街の映画館は生き延びてはいるけれどマジで薄氷の上を歩くような映画産業がしばらく続いてるいると言う感じ。雀の戸締りは鬼滅の刃、呪術廻戦のように一日何十回回すんだ?と言う感じになりましたけど、それと同日に割と割りを食った感じだったブラックパンサーワカンダフォーエバーでタロカンって言う海底の国に入った時に流れた曲を聴いてください。』




聴いて頂いたのはスペイン語の曲で日本語に直すとそよ風のようにってオリビアニュートンジョンですか?って

『今回のブラックパンサーはバーナボーイ、テムズ、ファイアボーイDML、ピンクパンサレスと。タナソーさんが最近推して来たアフロ系のアーティストが沢山参加しますが、もう一方でこういうスペイン語系のルッドウィックゴランソンはわざわざメキシコの方まで行ってもしマヤ文明の文化を引き継ぐ事があったとすればそれはどんな音楽なのかを想像しながら作ったと言ってましたけど、その結果がこの宇多田ヒカルみたいな音楽だったと』

『僕はブラックパンサーワカンダフォーエバーは重要なテーマを扱った作品で正直言うとこの1年間、スパイダーマンノーウェイホームは良かったですよ。日本だと一月公開なので。あれ以来、とにかくマーベルには盛り上がる事がなく来ましたが、ブラックパンサーはフェーズ4の最後の作品ですが、これでフェーズ5も追って行こうと思いましたよ。もしブラックパンサーがダメだったら、本当に飽和状態の中で俺はもう切っちゃうよって感じでした。本当に語るべき事が沢山ある作品だったなと思っているのでね』

主演俳優が亡くなってブラックパンサーを継ぐシュリのストーリー展開には正直、無理は生じていたとは思うんですが

『大変なんですよ。ディズニーはちょっと経つとディズニープラスで観れちゃうから。映画館もロングラン出来ないから力が入らない』

『あと面白いなと思ったのはベターコールソウルもハウスオブザドラゴンもそうでしたけど、日本でも民放のドラマが年に1本、2本ぐらいは出てましたけど。それこそ逃げ恥とかカルテットとか。僕はリアルサウンド映画部ってサイトやってるから。朝ドラは毎回話題になりますけど、ゴールデンタイムのドラマは如実にPVに影響する。そこらへんやリアルの数字が出てる。タナソーさん知ってるか知らないけどサイレントってドラマが当たってるの知ってます?』
タナソー「僕の後輩は7人全員観てました」

『それに比べると限定的かも知れないけど僕の周りだとエルピスって言う渡辺あやさんが脚本書かれたドラマが話題になっていて、毎週新しいエピソードを期待するって言うのがまだあるんだなと言うのと結局、民放のドラマが話題になるんだなと』
『みんなTVerとか配信で観てても結局、民放のドラマは他と比べても安定感があるなと言うか。逆に言えばディズニープラスとAmazonもNetflixもローカルコンテンツ作ってますけど、だらしないなと。だって同じロジックで作ってるんだもん。同じロジックで作っているんなら民放の方が一日の長がありますよって言う所に落ち着いてしまっていますね』

『昔の映画監督のレトロスペックは本当に盛んになっている。映画館の役割が図書館のように教養的な物に変わっていくしかない。オペラ、歌舞伎、落語みたいになっていくのかも知れない』

『2023年3月に映画の本を出します。映画界に翻弄されて遅れましたけど。気にしてください。いよいよ三カ月後に出ますので』

『今起こっている事は何十年に一度の転換期だと思う。映画はなくならないけど、映画の役割は変わっていくって言うのは確実に言える。特にハリウッド映画はかつての役割とは変わっていく』
『これからアバターがありますからね』

『ジェームスキャメロンは5本予定してると言ってるけど当たらなかったから2本でやめるかも知らないと言ってる』

『FOXはディズニーの連れ子みたいな関係で冷遇されていたけど、アバターは親会社のディズニーも久しぶりに力を入れている。僕は25分のラッシュを観れるけど凄かった』
『だけど、アバターそれだけじゃ救えない。今年は洋画はトップガン頼りだったけど、来年もトムクルーズ頼りになりそう。来年の7月にミッションインプッシブルの新作がある。しかもパート1。』
『最近の映画は一本では終わらない。テレビシリーズですか?って。映画は一本では完結しなくなっていく多分これからは』
『アバターも三時間以上観て典型的なクリフハンガーが来ますよ』

『短い良い映画はそっとApple TVとかにあげられる』

『僕はルカグァダニーノの話とかしても良いけど、日本公開決まってないもの。来年期待するのはトムクルーズのミッションインプッシブルって言うことで最後に聴いてください。』





『もはやは映画を救うのはミッションインプッシブルってことですよ。』
『僕は引き続きYouTubeのMovie driverが軌道に乗りつつあるのでやりながら久しぶりの単著かつ初の映画のみの本を出しますので、ここで初めてタイトルを言います。「ハリウッド映画の終焉」です。集英社から出ます。自分自身にプレッシャーをかけて何とか三月に出せるように頑張ります』
『来年のゴールデンウィークとかにまた来ることもあると思うので、イベントも是非来てもらったりしてラジオでもまたお会い出来ればなと思います』

【総評】
毎回恒例のFM COCOLOのラジオ出演。今回も基本的にはラジオモードなのでおとなしい宇野先生でした。当たり前ですが宇野先生ウォッチャーなら聞いた事がある話が多かったですが、このラジオでまさかの情報初出しになったのが宇野先生の映画の本のタイトルですね。当初は渋谷陽一社長の書籍『音楽が終わった後に』にオマージュで『映画終わった後に』というタイトルを検討していたが反応が薄かったため『ハリウッド映画の終焉』という刺激的で本屋で目を引きやすいタイトルになったようですね。









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