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初音ミクはクリエイティブよりも上位のイノベーションな存在

2015.09.05 「マジカルミライ 初音ミク」日本武道館

2年前、 クリプトン・フューチャー・メディアの伊藤社長のお誘いにより、本拠地札幌での感謝イベント「雪ミク」のトークセッションに参加、その際に同祭にあわせた初音ミク・ファミリーのライブを拝見させていただいた。

そして今、ミクさんとそのファミリーは、大いに表現力も解像度も、舞台でのアクトも飛躍的な発展をみせていた。

アイドルは、ティーン前半からたどたどしくも成長をみせ、その成長をファンたちは我がものとして愛でるのであるが、その後、大人になり、色恋沙汰もあり、そして老いていく。

今年でデビュー8年を迎える、初音ミクさんは、その練度の蓄積と、テクノロジーの新たな実装により、スキャンダルも老いも、契約問題のお家騒動もなく、クリプトン・フューチャー・メディアのチームの情熱が続く限り、より繊細により、大胆に、より豊かな表現力、そして時代にあった容姿と表現をもって、絶え間ない成長をデジタルに纏う永遠の姿とともに続けるのである。

それはまるで、英語でいうidolと同じように、世の人々の願望と期待を一切引き受ける神と重ね得るべき存在である。実際に、科学技術館に展開していたファンサービスホスピタリティの場では、神殿らしきものが、たとえば「ミク拝」とよばれる人々の手によって建立されていた。

Idol への投影、それは、クリプトン・フューチャー・メディア社による、今までの人工音声の中立的であるという概念を打ち破って個性ある「ボーカロイド」発声DTMソフトウエアという特性から生まれたものである。人々は、idolに自らの想いを注ぎ、声を与え、容姿を描き、セカイをつくることを可能とする。これらの無数の想いによる表現が、あたかもルネッサンス期の人間らしきidolたちの表現、敦煌莫高窟での数多な仏たちと同じように、生み出され、それを人々がサーバースペースから選び、お気に入りとして行く。その数多な創造の連鎖が、初音ミクさんやそのファミリーに常に。破壊的な創造、すなわちイノベーションを与え続けているのである。

○ イヴェントはファンの感謝のために

伊藤社長は「世界中からミクさんに来てもらいたいとの声をファンからいただいている。なるべく多くの場所にミクさんがファンの前に現れるように努力を続けている」と、今もなお、語ってくれる。

ミクさんのライブは、興行であるが、それ以上にファンへのサービスである。そのファンへの期待に応えるために、クリプトン・フューチャー・メディアのチームは、最高のバックバンドクルーと、自社コントロール比を高め続けるステージとテクノロジストによって、現時点最高のステージをつくる努力を続けている。

2年前との見違えるミクさんのパフォーマンス表現は、このファンへの期待に応えようという、感謝の姿勢が生み出す賜物であるということができる。

札幌で雪まつりの期間中おこなわれる「雪ミク」も、元はといえば、札幌市内のファン有志が「市民雪像」枠でミクさんをつくり始め、多くの市民がミクさんで盛り上がりたいという声を、クリプトン・フューチャー・メディア社が応え、つくりだしたもので、ミクさんで盛り上がる市民たちのためのミドルグラウンドである。ユーザーが創作をし、その創作に対する想いをクリプトン・フューチャー・メディアが受け止め、感謝を最高のコンテンツにしてユーザーに還元する。

この創造と感謝の互酬的スパイラル、そして誰もがその創造と評価に関われるオープンさが、初音ミクさんによるクリエイティブ以上のイノベーションをもたらしているのである。このスパイラルが続く限り、老いることがない初音ミクさんは洗練を続けていき、idolであり続けるのである。

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