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経験は財産になる

片付けを進める中で、すっかり忘れていた懐かしいものが出てきました。
小学6年から10年程習っていた、「鎌倉彫り」です。

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これは昭和62年と書いてあったので、14歳の時の作品です。
鎌倉彫は図案も彫り方も決まっていて、規定通りに彫らないといけません。
「この形に彫る図案はこれで深さは○mm」という風に全てが決まっているんですね。
ピアノでいう、バイエルみたいな感じでしょうか。
教本的な、基本はコレ、みたいなものです。

盆や皿に彫るのがほとんどでしたが、鏡や箱なんかもありました。

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仕上げは漆なんですが、これは職人さんに依頼して塗ってもらいます。
これが、お高い。
当時は子供ですから、漆塗りに出すのにいくらかかっているなんて知りませんからね。作品が大きくなれば、それに比例して塗り代も高くなりますから、親は大変だったと思います。
ただ1作品仕上げるのに数ヶ月かかるので、回数が多いわけではないんですが、10年も習っていればそれなりに数はありますから、結構な出費だったでしょう。
それを思うと、習わせてもらったことに感謝しないといけませんが、10代のワタシはこの「彫り方に決まりがある」ことに当時ものすごく抵抗感がありましてね。

ボタン、椿、ユリなどの花がモチーフになっていることがほとんどなので、花に興味なんて1ミリもない思春期のガキンチョが楽しめるわけがないんですよ。
でもこれはどうしようもないので、彫らないといけない。終わらせないと次へは進めませんし、たとえ進めたとしても次の図案も花かもしれないと思うと、なかなかモチベーションが上がりませんでした。

そんな時に、「作品展に参加してみる?」と先生からお話をもらいましてね。
鎌倉彫りは「彫雅会」という大きな組織があり、ワタシはそこに所属していたのでその会の作品展に出展してみますか?ということだったんです。
作品展に出すものは教則のモノではなく、オリジナルで彫らないといけないらしいんですが、「絵柄は好きなものでいい」という先生のひと言で心が一気にトキメキましてね。

何でもいいのか。
自由でいいのか。
それならやってみるか。

ってことで、出展用の作品作りが楽しくなり、それがあったから10年続けられたと言っても過言ではありません。

「こんなもの彫ってたのか」と記憶にないものばかりですが、今描いている絵の感覚に近いものを作っていました。

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幾何学模様が多かったですね。
中でも「お、いい感じ」と思ったのがコレ。

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トランプ柄の茶托。

全然鎌倉彫りって感じじゃないんですけど、数十個ある作品の中でコレが一番のお気に入りです。
彫っていて楽しかったのを思い出しました。

社会人になったのを機に時間が合わずやめてしまいましたが、鎌倉彫りを習った期間は本当に貴重な経験でしたね。
先生からはプロの道を薦められましたけど、鎌倉彫りオンリーの仕事は考えにくくそっちの道は選びませんでした。
もしそっちを選んでいたら今の自分はいないわけで、現在絵描きをしている意味なんかも振り返ったりして、今回の片付けは今を見つめるいい機会になっています。

みなさまのご支援に感謝します。