表現について

例えばグループ展やお店の「〇〇フェア」などで出品を依頼された時、大抵何かのテーマがあってそれに沿った作品を制作する事になる。

自分の中ではこれを「お題」と呼んでいる。

その場合、普通にそのお題に沿った見る人大多数に「かわいい」と思ってもらえる手堅いモチーフをまず基本として制作する。

それにプラスしてひとつのモチーフに自分尺度のレイヤーを2〜3重ねた作品を考える。
作家としてはこちらの「レイヤーをいくつも重ねた作品」が、ものすごく重要だ。
人と同じ事をしても無意味だと思っているので。

前にフィジカルテンポさん主催で「HENTAI」というお題のグループ展に参加させていただいたことがあった。

フィジカルテンポは今の超一級の作家さんがこぞって参加されるイベントなのでいつも背筋が伸びるし勉強になる。
こんな自分でも出品者の皆さんをめちゃくちゃ意識するし、本当に生意気ながら「この人たち全員をアッと言わせる作品を作るぞ!」という意気込みになってとんでもなくやる気がみなぎってくる。

その時はまず基本の、みんなに可愛いと思ってもらうモチーフは「変態」を軸に考えて「パンティを被った動物」にした。
非常にスタンダードでありつつもポップなモチーフいわゆる「鉄板の作品」。

そこからさらにレイヤーを重ねる方のモチーフを色々考え、その末に「HENTAI」→「変体」→「シン・ゴジラ」。
そこから更に「変体するもの」から「調理」となり「コロッケとエビフライ」を思い付く。
その思考を基に「揚げる前のコロッケとエビフライのイヤリング」モチーフを制作した。

作品の名前はざっくりした調理工程でいくとパン粉をまぶしてあるこの状態が3つ目の手順になるので「変体中」=「第三形態」がいいなと思って「第三形態エビフライのイヤリング」「第三形態コロッケのイヤリング」となった。

この苦労して考え抜いた末のレイヤー重ねが閃いた時、いつもなんとも幸せな気持ちになる。
そこからすぐにノッて制作し作品が完成すると「こんな楽しい作品なんだから、見てくれる人がきっとみんな面白がってくれるに違いない!」と多幸感に満ちる。

が、だいたいの場合、説明をしっかりしないと本当に訳がわからないので理解されず全く売れない。
「第三形態エビフライ」も、作品の題名は表示したけどSNS上で軽く説明しただけだったので店頭には「ただの冷凍エビフライモチーフの変なイヤリングが並んでいる」という非常にシュールな状況になり全く売れなかった。
「攻めすぎ」たのと「完全なる説明不足」だった…。

制作するまでを楽しむのではなくて、それをきちんと説明して落とし込むまでのスキルを身につける、というのが永遠の課題なのかもしれない。

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