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写真集に特化したアートブックフェア「Photobook JP」

2019年2月28日早朝、自宅のある茨城から横浜へ電車を乗り継いでいた。外は雨。いつも通りのクソ大荷物で乗る都会の満員電車は周囲の迷惑そうな目に会場に着く前から心が折れそうになった。「荷物は会場に郵送しろよ」という声もあるが、金がもったいないのと直前にならないと支度できないのと「おれなんか苦労すればいいんだ…っ!」という謎の原罪を抱えているため、最終的には「ジンスタは手で運ぶもんだろ」という意地のかっこつけになりそれが簡単にできないのだ。

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晴れるとめっちゃ気持ちいいんだけどね…(去年の写真)

ということで今回は、2月28日から3月3日に横浜大さん橋ホールで開催されたアートブックフェア『 Photobook JP 2nd edition 』の様子をレポートする。

text & photo / 大滝( crevasse

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Photobook JP は去年第1回で、今回が2回目開催の写真集に特化したアートブックフェア。ありがたいことに今年も呼んで頂き、参加できることになった。去年若干の オイタ をしていたので、呼んでもらえるのか心配だった。

あらためて書くが、crevasse は写真集だけを取り扱っているわけではない。それでもこうして誘ってくれて、こっちもその好意に甘えて写真集以外のZINEも堂々と持っていき販売してしまっている。

周囲が立派な写真集出版社のなかでそんな感じなので、僕らは少し変なやつらなのだが、去年の出展とその半年後に開催された 写真集飲み会 にも誘って頂いたおかげで、世間的な認知度はわからないが少なくとも出展者の多くが僕たちを覚えてくれていてすごく嬉しかった。

日本での僕らの認知度は、現状ここ頼りになってる気すらしてくる。

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これが今回の crevasse のブース。今年のメインビジュアルは 星野佑奈 さんにお願いした。かなりいい仕上がり。満足満足。

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テーブルに平積みしているのがベースのラインナップで、立ててずら~っと並べてるのが最近始めた 3RULEszine という新しいラインナップ。新しいラインナップは今回これが初お披露目だったが、来場者も1冊1冊全部チェックしていってくれたりとそこそこ評判よかった。常にひとの顔色が気になる心の弱い僕はこういうところでほっとする。

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今回は忘れてはいけない、もうひとつ新しい試みをした。それは、東地雄一郎 のパフォーマンス(公開制作)だった。

photos / Sayuri Nishiyama

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crevasse でも販売している『 A=A A≠A(mountain) 』の厚さ4cm・販売価格12000円の本を真っ二つに切った。作家自らの手で。いやカッターで。

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正直だれもどうなるのか分からなかった。「あの本を切ろうと思うんです。真っ二つに。ブースの近くに場所とれますかね?」という東地からのメールが来たのは25日の夜だった。僕も「面白そうだからいいんじゃないっすか。場所はなんとかなりますよ」くらいのテンションだったと思う。

「ちなみにやったことないのでうまくいくかよくわかってません」

という東地の言葉が印象深かった。この場合の「うまくいく」ってなんだろう。

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30分かけて切られ、倍の厚みになった本をテーブルに並べた瞬間「あ。なんか今いいな。すごくいい」と思った。

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こうして記録写真を見ていると、おおげさでもなんでもなく東地さんは厚さ4cm以上の何かを切り開いた気がしている。少なくとも crevasse にとっての新たな地平を見せてくれた。

なお、現物はオンラインショップで販売している。値段は24000円。厚さが倍になったから値段も倍なのだ。

ルーシーの骨の60% vol.6 / 東地雄一郎
https://crevasse.buyshop.jp/items/17752448

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今年の参加は station books という出版レーベルも増えて、自費出版系が増えて嬉しかった。嬉しいどころか、このイベントの直前に急ごしらえで設立したらしいのにむちゃくちゃレベルが高くて「おいおい、なんだこいつらは…」ってなった。

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culture centre (spew) から出してた 築山礁太 さんの写真がかっこよかった。全ページジップロックに写真とローションを入れて綴じた写真集は異彩を放ってたし、Sayuri Nishiyama が購入して帰りに既にジップロックからちょっと漏れてたあたりは最高すぎた。

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最後に。

出展中から今日まで何通ものメールを頂いている。いろんな話で。海外からも。

反響があって本当にありがたい。

「crevasseでリリースしたいんですけど!」とか言われるとまず「僕らの規模感、分かってますか?」と心配になってしまうようなこんな小さなレーベルに、だ。もうこの歳になって隠す気もないがヤンキー的田舎根性が心のどこかに今も染みついているようなこんな人間に、だ。

これからも参加してくれてる作家に置いて行かれないようがんばります。

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「ジンスタは手で運ぶもんだろ」の図。


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