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「面接にて」〜さやか編〜

類はカッコいい。いつも鼻歌を歌っている。音程も凄くいい。鼻歌なのに歌詞が聴こえるくらい。

類とは入社試験の面接の時に初めて出会った。

背は私より少し高い位だけど、凄く大きくみえた。

面接の控え室でも鼻歌を歌っていて「この人余裕なんだ」と思い、私は余計緊張したのを覚えている。

私はもしこの会社に類と一緒に入社する事になったら、告白しよう。と合格発表が来るよりも、恋に落ちるよりも早くにそう決めた。彼女がいるとか居ないとかは気にならない。そう言えば私もこの時まだ彼氏がいたんだっけ。

好きになるかどうかは別として、とても気になる人であるのは間違いなかった。

私は類を未来の同僚と位置付けることで就活という現実から逃避を試みていたのかもしれない。

そして運命の悪戯と言わんばかりに、類はその面接の帰りに最寄駅で私に話しかけてきた。

「さっき一緒だった、、ですよね。あ、急に話しかけてすいません。あの、知ってる顔だと思ったので、とっさに知り合いの誰かだと思って声かけようとして、そしたら、アレ?誰だっけ?あ、そうだ!さっきの面接の時の、、、」って。

「あはは、私を知り合いの誰かと思ったけれど違ったから慌ててるってワケなんですね。でも、声かけてくれて嬉しいです。まだ緊張が残っていたので、なんか和みます」

「いや、ほんとにすいません。あ、でも一緒に受かるって事もあるかもしれませんよね」

「私、受かるって思ってますよ。私達2人共」

「あ、そういうのわかる人なんですか?」

「え?わかる人って?あ、そういう意味じゃなくて、どちらかと言うとそうなって欲しいなあってほうです」

「あ、それなら僕もですです」

その時に初めてお互いの目が合った。類の瞳には私が映り込んでいた。その時の私の瞳にも類が映り込んでいたはずだ。そんな事を気にするなんて本当に恋してるみたいな気持ちになってしまった。あまりこれ以上自分の気持ちが昂ぶらないように心を落ち着かせ、

「じゃ、そろそろ」と言い、

社交辞令のような会話をこれ以上続けてもどうしようもないので、私の方から切り上げた。

類は「また会えますよね?」と言い、もうすっかり社会人のような安定したスーツ姿と表情で私を見送った。

その1週間後に内定通知が届いた。

そして、次類に会ったのは半年後の入社説明会の時だった。




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