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『失注商談のリサイクル数』を10ヶ月で34倍にする方法

★10秒でわかる、時間がない人向けのまとめ★
・失注理由と次回アプローチ日の入力を徹底する
・フィールドセールスが保持できる商談の数を制限する
・掘り起こし商談の増加以外に、プロダクトチームへのフィードバックや各セールスの失注分析にも役立つ
・時間はかかる。でもやった方が良い

こんにちは。マーケターの牛と申します。今回はお手伝いしているとあるスタートアップ企業で実施した失注商談のリサイクル施策についてのnoteになります。

下記グラフをご覧ください。

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失注商談のリサイクル施策が始まった2月から11月までリサイクル商談の推移になります。初月時点では月間2件だったリサイクル商談を、月間68件まで成長させた10ヶ月の記録になります。

前提情報はこちらです。

①本施策に参加したのはインサイドセールス2名&私の合計3名
②CRMとしてSalesforceを使用しているも、まだ導入から1年ほど
③失注した商談はこれまで属人的に各FSが当たっていた。フォロー漏れが多発し、予算策定時期を外れたり競合に流れてしまうケースも
④メンバーは新規リード対応やセミナー運営などを行いつつ、本施策を実施
⑤本施策の予算は0円
⑥実施したのはBtoB向けSaaSを提供する企業で、ターゲット業界は問わず、ターゲット規模は中小企業〜中堅規模企業

広告費を使わず、外注もなし。準備が完了すれば後は自動的に商談化見込みが溜まっていくので、ぜひ今後失注商談のリサイクルに取り組みたいという方におすすめです。

現状把握と問題点の整理

下記グラフは、昨年9月から今年1月までに実施した新規商談の進捗を出したものです。
それぞれ水色が受注紫が失注赤が進行中となります。

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課題点は2つです。

①全体の半数以上を占める失注商談の扱いルールがなく、対応が属人化
②商談から5ヶ月が経っても進行中の商談が20%もある
(リードタイムの平均は29日)

リサイクルを行うには、まず失注商談をリサイクル可能な商談と見込みのない商談に分けなければいけません。これはSalesforceに項目を追加し解決しました。

並行して数ヶ月進行中のまま停滞している商談の詳細もセールスにヒアリングしました。結果ほとんどが「たまの電話やメールに返信がなく、ずるずると保持している」半ば失注した商談でした。

失注時に入力する項目

本施策を実施するまで、失注商談のページに残された履歴はほとんど0でした。中には履歴に「不要とのこと」とだけ残された商談もありました。

そこでフェーズを失注に移動する際、必須で入力しなければいけない項目を3つ(選択した理由によって入力する数は変動)追加しました。

1つ目が失注理由です。
失注にフェーズを変更する際、失注に至った理由を選択します。選択肢は【時期ネック】、【コストネック】、【機能不足】、【音信不通】、【コンペ敗北】です。失注時、セールスは必ずこのいずれかの理由を選択しなければ変更を保存できません。

2つ目が失注理由詳細です。
これは失注理由で【コストネック】、【機能不足】を選択した際に必須で入力を求められる項目で、それぞれの理由を深掘りします。具体的には、

【コストネック】を選択した場合→【コスト以上の価値を提案できず】、【前年の内に予算確保が必要】、【上申後NG】

【機能不足】を選択した場合→サービスが対応していないものの、先方がニーズを感じている業界が一覧で出ます。(例、飲食・IT・不動産など)

3つ目が次回アプローチ日です。
これは失注理由が【時期ネック】、もしくは失注理由が【コストネック】かつ失注理由詳細が【前年の内に予算確保が必要】を選択した場合、カレンダーの中から次回アプローチ日を必須で選択しなければいけない、というものです。

以上3つの項目を入力してもらうことで、インサイドセールスが掘り起こしを実施する際の指針としました。

保有商談数の制限

次に行ったのが、1人のフィールドセールスが保持できる進行中商談数の制限です。

施策実施前の時点で平均リードタイムを超過している、かつ前回のアプローチ(架電・メール・打ち合わせのいずれか)から3週間が経過している商談を特定し、過去の商談の傾向から適切なフォローを行う限界の商談数を算出しました。

この数字は企業によって異なるので詳細は省きますが、今回は1人につき60商談をラインとしました。60商談以上を保持している場合はアラートが飛び、制限内に収まるよう失注に落とさなくてはいけません。

このルールを決めたことで、数ヶ月前に実施した商談をズルズルと保持し続ける状況が改善しました。

運用開始後の注意点

運用開始後に修正や再度のすり合わせが必要になった点をまとめています。

①次回アプローチ日=インサイドセールスがアクションを起こし始める日であると再周知
来年度予算の策定が11月から始まる場合、インサイドセールスが10月に架電し当月中にアポイントをFIXさせなければタイミングを逸してしまう可能性があります。予算策定が11月なのに次回アプローチ日が11月1日になっている商談はないか、フィールドセールスマネージャーと注意深く確認して行きました。
結果想定よりも多くそういった入力が確認され、事業部定例の場で再度次回アプローチ日の意図を説明する時間を設けました。

②掘り起こし商談は必ず失注に落としたフィールドセールスをアサインするようルールを追加
考えてみれば当然ですが、このルールがないと掘り起こし施策はフィールドセールスにとってメリットのないものになってしまいます。日程調整の難易度が多少上がっても、掘り起こした商談は失注に落としたフィールドセールスをアサインするルールを追加しました。
スタートアップなので異動も多く、失注に落としたフィールドセールスがすでに異動済みの場合は別の者をアサインしましたが、その掘り起こし商談が受注した際は以前のフィールドセールスにも評価が加点されるようにしました。

結果

掘り起こし商談の数は冒頭記載した通りの効果となりました。

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また、月別の新規商談進捗に関しても、下記図のように大幅な改善となりました。

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その他のメリット

本施策を実施した結果、副次的に次のメリットが生まれました。

●失注理由を詳細に記載するようになり、各フィールドセールス毎の失注分析が可能になった。
●失注理由に対応したナーチャリング施策の実施が可能になった。
●機能不足の詳細がレポートで簡単に出せるようになり、プロダクトチームへのフィードバックが容易になった。

掘り起こしそのものより、むしろこちらの方が売り上げに貢献する度合いは高いのではないでしょうか。

最後に

掘り起こし施策は失注した商談が溜まり、そこから再商談に繋がり、さらに受注まで計測できないと効果を検証できません。実際このnoteにまとめられる結果が出るまで10ヶ月かかりましたし、途中で修正した部分の検証はさらに時間がかかります。

ただ、再商談の受注率は新規商談よりも圧倒的に高いです。具体的には平均で新規の1.5倍、丁寧に履歴を残すメンバーの場合2倍近く受注率が高いケースもありました。

やって損はありません。ぜひ取り組んでみてください。


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