百合漫画寸評022 - 三角形の壊し方
はじめに
個人的には、「やが君」「わたゆり」「今日カノ」に次ぐ2023年間大賞レベルの作品だと思っているので、まず読め。
損はさせません。
本編
作品概要
あらすじ
永理香、琴、あや。当時の三人は互いに思いを寄せ合う仲だった。しかしある日――琴が思い切ってあやに告白したその直後――、あやは失踪を遂げてしまう。
それから時は経って七年後、同窓会の帰り道。大学生となった永理香と琴が、あの頃の路をなぞりながら思い出話に耽っていたとき。
失踪していたはずのあやが突然、二人の目の前に現れた。
そこまでの情報であれば、ただの失踪者発見で済む話であったのだが、それが『常識ではあり得ない事態』であることを一瞬で二人は悟ってしまう。
その彼女の姿は――七年前の失踪当時と全く同じだったのである。
作中環境
基本環境:中学生、成人
百合要素:SF百合
辛い要素:C
ポイント
・ストーリードリブン系統百合の最先端
・不穏な空気、些細な違和感と対比する「思い出作り」
SF(すこし・ふしぎ)
前々から言っているが、自分がこういう怪しい感じのお話について無条件に高評価をつけてしまいがちであることを鑑みても、唸らされる素地というほかない。
あくまで登場人物の殆どは自分たちと同じ現実に立地させつつ、たった一点の『不思議』によって巻き起こる騒動、という伊坂幸太郎じみたこのストーリーに惹かれない人はいまいよ、と大言壮語をぶち上げてしまってもいいぐらいの序盤の疾走感に、すっかり小生の心は鷲掴みにされてしまった。
なお、このようにノッケから大きなイベントを巻き起こしていくのは富野由悠季や大河内一郎イズムにもある、信頼された手法であることは付しておきたい。
不穏な空気
とはいえ、話が幸せなキス平々凡々なラブチュッチュで終わるかと言われるとかなり怪しく、登場人物の話とあやの失踪当時の言い分に微妙な食い違いがあったり、あや本人にも並々ならぬ事情があったりと、『絶対にただ事で済ます気はない』という雰囲気が常に漂っており、目が離せない。
そんな空気感とは裏腹に、三人は今まで通りの(七年前の延長線上にあるはずだった)日常を何とか取り戻そうと少しずつ歩み始めていくところで、1巻は終わってしまう。
エピソード毎の細かい部分に思うところがないわけではないが、全体を通してどこかの演出でもやってらした?というぐらいに話の構造が巧い。
さいごに
2023年はいつもの年末総決算を除けば、本記事が最後の予定です。
また来年にお会いしましょう。
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