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クラウドファンディングにて

札幌にある、SOUND CRUEというライブハウスのクラウドファンディングに参加した。

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chikyunokiki / 喃語 / the hatch / Discharming man『unevenus』
KIWIROLL『Demo』
KIWIROLL『キウイロール ラストショウ 迷子の晩餐』

予算上の都合もあり、ザ・実利、みたいなチョイスになってしまったが、ちょっと無理して出して良かったな、と思うような内容だった。

普段は入手困難なアイテムに言及してもしょうがない、と思っているのだが、今回だけは許してほしい。

北海道、ローカルの音楽を追いかけてだいたい5年になる。

最初のきっかけはROTH BART BARONが地元に来るということで、わかりやすくビッグネームに釣られた形だ。それが地元バンドによる招聘で、共演のchikyunokikiやtoilet、A Quiet Eveningといったバンドたちはナタリーに載るようなバンドでなくてもかっこよくて、昔見かけた、「田舎のロックってやっぱなあ」みたいなバンドとは違う、強烈なオリジナリティと同時代性をもって僕に衝撃を与えた。

地元で、地元のアーティストを観るようになり始めたある日、札幌にDOIMOIが来る、という話を聞いた。大好きなバンドながら名古屋まで行くことはなかなか出来ずにいたため、ありがたいなと思いながらチケットを取った。

『Dream Violence』、かつてキウイロールを率いた、現Discharming manの蛯名啓太による主催のイベントである。

同人誌『CONSOMME CUBE Vol.01』にもレポートめいたものを書いたのだが、このイベントは本当に衝撃的だった。

招聘されたDOIMOIはもちろん、Discharming man、水玉さがし、DON KARNAGEといった札幌勢がとにかくすばらしく、特にDischarming manの蛯名啓太という人には心から驚かされた。

この話に関しては色んな所で何度も書いているのだが、物理的にデカくて迫力があるとかそういう話ではなく、本当に『音楽が人の姿をしているような』その存在感に圧倒された。のだ。

『音楽が人の姿をしているような』なんて、なかなか人に使える形容ではない。僕はもうひとりだけ、存命だった頃の吉良知彦(zabadak)に同じものを感じたことがあったが、四半世紀、音楽を聴くということを続けてきてこの二人だけである。

体中から音楽がみなぎっているような人、というのは何人か、いや、何人も観てきた。本気で音楽をやるというのはそういうことなのだと思う。しかし。

その先に、存在が音楽である人間、というのがいて、彼らはもう、音楽が人の姿を借りて現世に降臨しているのだ、と僕は大真面目にそう思っている。

KIWIROLL、キウイロールというのは蛯名啓太が以前やっていた、彼の名を一躍有名にしたバンドである。もつれたまま倒れてくるような衝動をハード・コアに表現した初期は『北のあぶらだこ』なんてことを言われたりもしたようだが、個人的にはもう少し直情的に感じた。

中、後期となってくるとヒットシングルも生まれ(代表曲「バカネジ」はカラオケにも入っている)、札幌のみならず東京にもその名を広く知らしめることとなる。

時代はbloodthirsty butchersがいてeastern youthがいて、というシーンのど真ん中。彼らも、そのインパクトと朴訥と言っていいくらいに素朴な良さを持つ楽曲群によって今もなお伝説のひとつになっている。

彼らの録音は今だとサブスクリプションで概ねカバーすることができる。(アルバム『その青写真』を中心に、もちろん抜けはある)

バンドとしてキウイロールがいかに凄かったか、リアルタイムではない僕は知らない。しかし、今回のクラウドファンディングによって、2004年ラスト・ライブの映像と、97年のデモテープが届いた。繰り返しになるが、僕は自慢したいわけじゃなく、手元にいいものがあれば広く薦めたい方だ。しかし。

『キウイロール ラストショウ 迷子の晩餐』DVDの裏面に小さく入っている『NOT FOR SALE』という文字が、なんだか、ほんの少しだけ、誇らしく感じてしまう。

もちろん、もう一枚のCDも『今』あまりにもヤバいことになっている北海道の、札幌という土地の凄みを一発で理解できるものだし、今のところ他の入手経路がないことが残念である。

ただ、ざまあみろとまでは言わないけれど。ただちょっと、僕はあなた方よりもいい音楽に触れたぞ、という優越感が、少しだけ。

宝物が増えたことを、少しだけ自慢したい。少しだけ、浸っていたい。

北海道に住んでて良かったな、って少しだけ思えたから。


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