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社会的インパクト投資レポート<番外編vol.2>:海外資金需要者が語る社会的インパクト

2018年6月18日、当社は「社会的インパクト投資宣言(※1)」を発表しました。社会的インパクト投資とは、貧困層支援や教育問題など社会的課題の解決に取り組む企業や領域に投資し、経済的なリターンと社会的なリターンの両立を実現する投資手法を指します。この社会的インパクト投資レポートでは当社の各ファンドシリーズが具体的にどのような社会的リターンを実現するかについて定量的かつ定性的にお伝えしてまいります。
※1当社の社会的インパクト投資に対する考え方についてはこちら(https://crowdcredit.jp/about/social-investment)もあわせてご参照ください。

2019年10月1日、当社は『海外資金需要者による来日セミナー』と題して「中東地域ソーラー事業者支援ファンド」シリーズの貸付先(海外資金需要者)GES社(※2)の親会社で、中東地域でソーラー発電ソリューション事業などを手掛けるODASCO社(※3)Vice PresidentであるYahia Saad Odeh Al Salem氏をお招きし、特別セミナーを開催しました。
※2GES社の正式名称は「GLOBAL ENERGY SYSTEMS – FZE」といいます。
※3ODASCO社の正式名称は「ODEH ASALEM AUTOMATION SYSTEMS – ODASCO LLC」といいます。

この「中東地域ソーラー事業者支援ファンド」シリーズは、当社の社会的インパクト重視ファンドの一つであり、本セミナーは実質的な貸付先(海外資金需要者)の経営陣の一人が日本の投資家の皆様に自社の社会的インパクトを含めた事業について直接ご説明する貴重な機会となりました。そこで今回は本セミナーの模様をご紹介いたします。

『海外資金需要者による来日セミナー』

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【登壇者】
・Odeh Asalem Automation Systems LLC(以下「ODASCO社」)Vice President  Yahia Saad Odeh Al Salem氏(以下「Yahia氏」)
・クラウドクレジット株式会社商品部マネージャー 白坂 彰久(以下「白坂」)

1. ODASCO社の会社概要と提供サービスについて

白坂: 初めまして。クラウドクレジット商品部の白坂と申します。本日は月初めのご多用のところ、お集まりいただきましてありがとうございます。これより、当社の実質的な貸付先(海外資金需要者)であるODASCO社と一緒にお話をさせていただきます。今、7号(注:2019年10月1日時点)までファンドを募集していますが、組成の検討の時期も含めるとこちらのYahia氏とは既に1年ほどコミュニケーションを取っている関係があります。私個人で認識しているものと、皆さまが資料を通して知っていただくことには情報に差があると思います。こちらでの説明に漏れがあることもあるかと思いますが、逐次ご説明をさせていただこうと思っております。

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当社商品部マネージャーの白坂

白坂:まず、この会社は何をやっている会社かというところを頭出しさせていただきますと、ソーラー関係のEPCというのが1つの事業でございます。EPCとは、Engineering and Procurement Construction(エンジニアリング・アンド・プロキュアメント・コンストラクション)と言いまして、エンジニアと建設施工を行う会社でございます。なので、逆に申し上げますと、ソーラーパネルを作るメーカーさんではありません。あくまでエンジニアリングを行う会社であります。中東を拠点に25年以上にわたって事業を展開している会社でございます。こちらの説明をYahia氏からお願いしたいと思います。

Yahia氏:皆様、こんばんは。Yahiaと申します。ODASCO社のNo.2、Vice Presidentを務めております。ODASCO社は家族経営の会社で、社名の「ODASCO」は「Odeh Al Saad Company」と父親の名前を由来にしています。ドバイに本社を構えており、中東地域で25年以上事業を続けております。

我々は本社のあるドバイを含めた中東地域をカバーしています。アラブ首長国連邦の首都アブダビ、クエート、ヨルダンのアンマン、そして最近ウクライナにも拠点を設けました。会社の設立は1994年のヨルダンのアンマンに遡ります。私の父親のSaad OdehがCEOで、グループ全体で200名以上の従業員を抱える会社です。

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ODASCO社Vice PresidentのYahia氏

白坂:ODASCO社の提供しているサービスについて補足しますと、まず生産施設自動化事業。生産施設に関してコンピューターでモニタリングできるようなシステムの導入、水や重油を送るためのパイプラインの漏れを検知するシステム導入を行っています。

次に電化事業。低電圧・中電圧・高電圧の設備の設置、配電盤の工事、鉄道も含めた送電設備の対応を行っています。さらに低電圧特化設備事業。これは監視カメラ用の配線、商業施設の調光システムなどです。

そして特に注力しているのが再生エネルギー事業。これはソーラー関係や蓄電を使った夜間電力対応の施工、通信関係の電化になります。最後に通信インフラ事業。光ファイバー導入やWi-Fiを特定の建物に施工しています。

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2. 通信施設向けオフグリッドソーラーシステム(送電系統と繋がっていない太陽光発電システム)事業とその社会的インパクト

Yahia氏:本日は、通信セクターに対するソーラー化サービスについて詳しくご説明したいと思います。基本的には、都市部から離れた地域、中でもディーゼルエンジンが唯一の社会的な電力となっているような砂漠地帯におけるディーゼル発電機を置き換えるソリューションです。何もない砂漠のような地域でも送電と通信機器があり、それらへの電力供給が必要です。

私たちが注力しているのは、ディーゼル発電機を100%ソーラー式の発電機に置き換えることです。このソリューションには、我々独自で開発した自動化システムが搭載されています。これにより、バッテリーの残量、チャージ量、電力レベル、電力消費レベルなどをモニタリングできることに加え、欠損がないかなどの安全性やバッテリーの冷却程度なども確認することができます。

実際のシステムがどのような構造になっているか、ご紹介します(下図)。過去15〜20年ほど使われているディーゼルエンジンの入ったタンクをソーラー式の発電機に置き換えます。置き換えることで、はるかに低いコストでメンテナンスができます。ディーゼル発電機がかつて排出していたCO2排出量と比べると、置き換えた後の現在のシステムではCO2排出量はゼロです。環境負荷は低いと言えます。加えて、ディーゼルエンジンは週に2回ほど給油が必要なことと、ディーゼルを最寄りの都市部から設置場所へ運ぶのに4〜5時間程度もかかることを想像していただくと、ソーラー式に置き換えることで人的コストも低くなることをお分かりいただけると思います。

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白坂:付け加えさせていただきますと、実際に見に行ったところでは、まだ置き換えが済んだばかりで旧来のディーゼルエンジンもその場に置かれたままでした。周りを見てみると、成分としては分かりにくいのですが、タールのようなものがエンジンの周りに落ちていました。人の居住区ではありませんでしたが、長くディーゼルエンジンを稼働させていると、NOx(窒素酸化物)のようなものが砂と結合してゴミが周辺に溜まっている、そのような現状がありました。フルソーラーになるということで、そういったものも排出されなくなる、環境への負荷が低くなるということです。この効果はそれなりにあるということが確認できました。

Yahia氏:以下は、「インバーター」という電力のコントロール・システムです。

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Yahia氏:そして以下の画像は、バッテリーの写真になります。バッテリーは金属で囲うと過熱してしまうため、グラスファイバー製です。環境に負荷の少ない空調設備を中に入れて、バッテリーの熱を制御し、バッテリー寿命が短くならないような対応を取っています。熱への対処を怠ると、1〜2年でバッテリーが消耗してしまいます。

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白坂:ODASCO社がなぜ中東で25年以上も事業を継続できているかというと、こうした過酷な環境下における施工のノウハウや勘所を分かっているのが1つの大きな要因と言えます。

Yahia氏:以下は砂漠地帯での実際の施工の作業風景の画像です。基本的には、砂漠の中で塔が立っているだけで、人は住んでいないような場所です。こうした電力提供に乏しい砂漠地域での通信塔は、主にオイル・ガスセクターの顧客に向けたものです。オイルやガスのパイプラインの感知システムに携帯電話の通信が使われることがあり、そうした用途のための通信塔です。

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Yahia氏:次に、実際に地盤の施工としてコンクリートが設置されている様子をご紹介します。以下の写真は4月頃に撮影したもので高さは75cmのコンクリートの塊になりますが、ご覧の通り高さも幅もかなりあるコンクリートを使用します。これは砂漠の砂で覆われることを避けるための施策で、砂漠地帯での工事の要の一つです。

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Yahia氏:以下の写真は当社のデザイナーがデザインした機器です。ある地域では最高気温が55度〜60度、反対に夜間は0〜5度という中東の寒暖差の厳しい気候にも耐えられるデザインになっています。

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Yahia氏:以下はディーゼルエンジンが設置されている時と、ソーラー式発電に完全に置き換わった後での、環境への貢献を表した画像になります。

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Yahia氏:ディーゼルエンジンのタンクがオープンスペースに設置された場合、ディーゼルエンジンが垂れたものや、ディーゼルエンジンが稼働したことで発生したNOx(窒素酸化物)のような何らかの汚染物質がその周辺土壌へ流出してしまいます。これに対して、右側は、排出量が少ないソーラーへ置き換わった状態の設備です。

また、通信セクターでは、電力が1秒遮断するだけで、10万ドル相当の影響が出てしまうと言われています。遮断1秒毎ですから、大きなコストになってしまいます。したがって、通信会社は、ディーゼルエンジンに頼らずに絶えず電力を供給でき、経験豊富で、停電の際に安全な自動化システムのある一部の会社とのみ提携することになります。

ODASCO社はEPC(Engineering and Procurement Construction)の会社として、絶えず安定した電力を供給するエンジニアリングができており、長く事業を継続できている理由の1つになっています。

ディーゼルエンジンからソーラー式発電へ切り替えることで、CO2削減や森林にも大きな影響を与えます。1年間で森林が1万1,000本以上守られ、約30万リットル分もの燃料が削減され、CO2についても736トン削減されることになります。

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Yahia氏:また、世界銀行との取り組みを含めた海外のジョイントベンチャー案件として、これまで取り組んできたものとしては、ソーラーシステムだけはなく省電力化などのソリューションを提供するサービスがあります。アラブ首長国連邦では300カ所以上を対応し、インドネシアとミャンマーではターンキーと呼ばれるシステムの立ち上げのサポートを137件、モザンビークでは400以上の基地局に対してリモートで通信システムを提供するサポートを実施しています。

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Yahia氏:予算の課題を抱えるモザンビークでは、フルソーラー化するというよりは、発電機のモニタリングのみ担当しています。発電機の稼働状況、電力消費量などのモニタリングをすることは、こうした国々が来年度のソーラー化予算を立てるための重要な内部調査データになるのです。アラブ首長国連邦ではフルソーラー化を推進しており、踏み込み方は異なりますが、モニタリング部分の施策も行ってきています。

3. 新規事業「ヨルダンでの井戸水事業」の可能性

Yahia氏:新しい別の事業についてお話させてください。ヨルダンの井戸水事業です。ヨルダンは水の供給が乏しい国で、井戸水をどう効率的に供給するかという事業です。ヨルダンに行かれたことがある方はいらっしゃいますか?いらっしゃいませんね、残念です。

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ヨルダンでの水源の60%は雨季の雨などで自然に貯蔵されている地下水です。我々はこの地下水を吸い上げ、浄化し、供給しています。ヨルダンは水の供給が貧しいため、一般家庭では週に1〜3日しか水が手に入りません。私は首都アンマンに住んでいましたが、週に2度しか水は届きませんでした。したがって、ビルの上に大きな貯水タンクがあり、そこで水を貯め、一週間を生活する方法を取っていました。

以下は、ヨルダンの地下水脈の位置を示しています。

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Yahia氏:これまで我々は、水を掘り上げてモニタリングするという事業はすでに行っておりました。今回新しく取り組みを始めているのは、井戸がある土地の地主から、井戸自体をリースする形で借り上げ、ソーラーシステムを導入して汲み上げ、水漏れを感知・抑制し、水を供給・売却するモデルで、1つのプロジェクトとして商業化するものです。近年ソーラーの価格が低くなってきており、汲み上げの動力をソーラーにしても事業が回ると判断し、水事業のソーラー化を始めているところです。

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Yahia氏:Rusaifah地域での例をご紹介します。

Yahia氏:この地域は、すでに申しましたとおり、水の供給が乏しく、顧客は週の中日であっても水を供給できるようなシステムを求めていました。これまでは、1日あたり16〜20トンの水がトラックで運ばれるのですが、十分な量ではありませんでした。

地下水を地上まで吸い上げ、飲料可能レベルまで水を浄化するシステムを通して飲料水にします。また1,000平米ある井戸の土地のソーラー化を進めています。水の需要が高い水道局に水を販売したり、水のタンクを積んだトラックに積載させて商業利用者に提供しています。

Rusaifah地域では、水の透明度は地下から15mと比較的近いのですが、160mもの引き込み管がある理由は、夏は水位が減り、冬になると水位が上がるため、通年での安定した水の吸い上げのためです。地下には大きな水源があるものの、それが地上まで届いていないのがヨルダンの水の現状なのです。システムの技術的なところを申し上げますと、地面深くから水を吸い上げ、毎時150立方メートル程度の汲み上げの容量があるシステムを展開しています。

我々の水の販売先としては、1つに公共の水道局があります。水道局は政府機関ではありますが、水を汲み上げ供給するキャパシティや予算が十分ではなく、ヨルダン全土に水を供給できていません。水の需要があり、我々の水の買い手です。また、公共機関以外では、商業的に使うところに対しても水を売ることができています。

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白坂:各国で水の予算が異なっているようで、クエートでは水はほぼ無料のようですが、ヨルダンは国の体力がまだないため特定の値段で水を買い上げるものの、その値段の折り合いはなかなかつかない価格だということも聞いております。

Yahia氏:2020年以降のヨルダンでの今後の展開についてですが、非効率に管理され、水漏れが起きているような井戸が100も1,000もあります。収益を上げる部分とは別に、水を汲み上げる際の電力を減らしクリーンエネルギーにすること、そして最新のネットワーク技術ではないため、何万箇所も発生している水漏れを減らすことが重要だと考えています。ODASCOが持つソーラー化技術により、さらに効率的な井戸の運用を展開し、水の供給という課題を解決していきます。

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◇ファンドの手数料およびリスクについて
ご出資いただく際の販売手数料はいただいておりません。
なお、出資に対して、年率換算で最大4.0%の運用手数料を運用開始時に(または運用開始時および2年度目以降毎年度に)いただきます。
また為替手数料その他の費用をご負担いただく場合があります。
為替相場の変動、国の政治的・経済的なカントリーリスクや債務者の債務不履行等により、元本に欠損が生じるおそれがあります。
ファンドごとに、手数料等およびリスク内容や性質が異なります。
詳しくは、匿名組合契約書や契約締結前交付書面等をよくお読みください。クラウドクレジット株式会社
第二種金融商品取引業:関東財務局長(金商)第2809号
一般社団法人 第二種金融商品取引業協会 加入

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