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社会的インパクト投資レポートvol.1:「インドネシア小水力発電支援ファンド」シリーズ

2018年6月18日、当社は「社会的インパクト投資宣言(※1)」を発表しました。社会的インパクト投資とは、貧困層支援や教育問題など社会的課題の解決に取り組む企業や領域に投資し、経済的なリターンと社会的なリターンの両立を実現する投資手法を指します。この社会的インパクト投資レポートでは当社の各ファンドシリーズが具体的にどのような社会的リターンを実現するかについて定量的かつ定性的にお伝えしてまいります。
※1当社の社会的インパクト投資に対する考え方についてはこちら(https://crowdcredit.jp/about/social-investment)もあわせてご参照ください。

今回社会的インパクト投資レポートの第1弾としてお伝えするのは、当社初の小水力発電支援ファンドシリーズであり、2019年8月、6号ファンドの募集をもって資金調達が完了しました「インドネシア小水力発電支援ファンド」シリーズです。

1.持続可能な開発目標(SDGs)に貢献する小水力発電

SDGsとは、2001年に設定されたミレニアム開発目標(MDGs)に続き、2015年に国連サミットで採択された、2030年までの国際目標です。SDGsは、持続可能な世界を実現するための17のゴールから成っています(下図)。

SDGsのロゴ画像


出所:外務省ホームページ

このうち、「7. エネルギーをみんなに そしてクリーンに」という目標は、「すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」ことを目指しています。

SDGsのロゴ7番

これには、
① 再生可能エネルギーの割合を大幅に増大させること
② 安価で信頼できる電力への普遍的なアクセスを実現させること
などが含まれており、目下、新興国を含めた各国がその実現に向け積極的な取組を行っています。

また、「13.気候変動に具体的な対策を」では、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)に基づいて、地球温暖化など世界的な気候変動への世界的な対策を講じることを目標にしています。

SDGsのロゴ13番

これらの目標の達成には、太陽光・水力・風力などの再生可能エネルギーが果たす役割が大きいと考えられます。これらの再生可能エネルギーの1つに、小規模な水力発電である「小水力発電」があり、新興国の電力のアクセス拡大への貢献が注目されています。

小水力発電とは、河川の水の流れの力を活用してタービンを回すことで発電を行う再生可能エネルギー手法の1つです。山など高低差のある地形を利用した大きな水車の発電、というとイメージが湧きやすいかもしれません。

昼夜を問わず年間を通じて安定した電力供給が可能で、火力発電所のように燃料を積載する大型タンカーがアプローチ出来る港湾がない地形であっても、河川に一定の流量と落差があれば、小水力発電に活用することができます。

このため、山間部のへき地でも、河川を活用してクリーンで安定的な電力供給を実現することができるのです。小水力発電は、新興国における電力アクセスの向上に注目されている再生可能エネルギーの1つになっています。

2.インドネシアと小水力発電

それでは、インドネシアの再生可能エネルギーの取組みに目を向けてみましょう。

インドネシアでは、内需拡大を背景に2000年代に石油の純輸入国に転じて以降、電力需要増に対応するため、再生可能エネルギーの利用拡大に積極的に取り組んでいます。2006年に10MWまでの再エネ発電設備から電力買い取りをインドネシア国有電力会社(PLN)に義務付け、2009年以降に固定価格買取制度(FIT)を順次導入しました。2017年にはPLNに対する新たな買取規則を導入するなど、再生可能エネルギーの利用を後押しする買取制度の整備が進められています。

長期的なエネルギー政策としては、国家エネルギー政策や国家電力総合計画を策定しているほか、これらの長期政策に基づき、政府と国有電力会社PLNが協同で向こう10年間の方針を定めた電力供給事業計画(RUPTL)を毎年公表しています。最新のRUPTL(2019~2028年)によると、電力需要の拡大に合わせ発電量を2019年の282TWhから2028年には501TWh(年率+6.6%)まで拡大させることを目標としています。またエネルギーミックスについては、石炭の割合を現状の6割強から54.4%、石油の割合を現状の4%程度から0.4%に低減させるとともに、現状1割強にとどまっている再生可能エネルギーの構成割合を2028年に23.2%まで高めるとしています(下図)。

インドネシアの電力ミックスの見通し

インドネシアの電力ミックスの見通し

出所:インドネシア・エネルギー鉱物資源省ホームページよりクラウドクレジット作成

このように、インドネシア政府は再生可能エネルギーの利用拡大を後押ししており、河川など水が豊かなインドネシアでは、安定的な電力供給に小水力発電の果たす役割が非常に大きいと考えられます。

3.「インドネシア小水力発電支援ファンド」シリーズがもたらすインパクト

「インドネシア小水力発電支援ファンド」シリーズは、インドネシア政府が掲げる再生可能エネルギーのアクセス拡大に向け、10MWの小水力発電のプロジェクトコストの一部を、プロジェクトの株主であるPT Anantaka Hidro Indonesia(以下、「Anantaka社」)への融資を通じて支援しています。

プロジェクトの場所は、世界最大のカルデラ湖であるトバ湖近郊の、北スマトラ州フンバン・ハスンドゥタン県の河川です(下図)。既存の電力供給網はあるものの、近年の観光業を中心とした地域の発展に電力供給が追い付かず、恒常的な電力不足が課題となっていました。当プロジェクトは新たな小水力発電所を建設することで、環境負荷の少ない持続可能な社会生活の発展に寄与することを目指しています。

プロジェクトの地図画像

プロジェクトコストは約USD28百万ドルで、Anantaka社が51%, パートナー株主の日系企業が49%出資する、当プロジェクトのために設立されたSPC(特定目的会社)が運営を担います。SPCに対して、日系企業本体もしくは現地日系企業が設計、土木工事、施工管理、運営・メンテナンスのマネジメントを提供すると共に、小水力発電機器一式も納入します。

プロジェクトは2018年5月頃より着工しており、2019年12月完工予定です。

プロジェクト現場画像

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取水堰エリアの建設の様子

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パイプの設置

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発電所エリアの建設現場

当プロジェクトが完工すれば、どの様な影響をインドネシアにもたらすことが出来るのでしょうか。

① 電力アクセスの実現

当プロジェクトはトバ湖に隣接するDolok Sanggu区を中心とした約6万9千世帯に小水力発電のクリーンな電気がPLNの電力網を通じて届くことが予定されています。当プロジェクトのSPCとPLNとの売電契約は25年間であり、最短でもその期間、電力供給が約束されています。

トバ湖一帯は観光業が盛んな地域であり、安定的な電力が届くことで、現地の産業の発展(観光業・飲食業の事業収入増)や住民の生活環境の改善(夜間に電力が利用できることによる、子供の教育レベルの改善・内職による収入向上)が期待できます。

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プロジェクトサイト近隣の農村

② 二酸化炭素排出量(CO2)の削減

地球温暖化リスクの軽減には、CO2などの温室効果ガスの削減が必須です。

当プロジェクトが実現することによるCO2削減量は、年間42,711トンと見込まれています。これは、約3百万本もの杉の木が1年間で吸収する二酸化炭素(CO2)に相当します。

プロジェクト現場画像7

(1)電力供給が不安定だった村落への電力アクセスを実現すると同時に、(2)CO2の削減を通して気候変動対策へも貢献するという、2つの側面からSDGsの達成に寄与していきます。

当プロジェクトが稼働したタイミングで、改めてご報告をさせていただきます。

◇ファンドの手数料およびリスクについて
ご出資いただく際の販売手数料はいただいておりません。
なお、出資に対して、年率換算で最大4.0%の運用手数料を運用開始時に(または運用開始時および2年度目以降毎年度に)いただきます。
また為替手数料その他の費用をご負担いただく場合があります。
為替相場の変動、国の政治的・経済的なカントリーリスクや債務者の債務不履行等により、元本に欠損が生じるおそれがあります。
ファンドごとに、手数料等およびリスク内容や性質が異なります。
詳しくは、匿名組合契約書や契約締結前交付書面等をよくお読みください。クラウドクレジット株式会社
第二種金融商品取引業:関東財務局長(金商)第2809号
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