【運用部コメント】ジョージア経済とジョージアラリを取り巻く環境についてのご報告

平素は格別なお引立てを賜り、誠にありがとうございます。

当社では2018年からジョージアラリ(GEL)建てのファンドを販売・運用をしており、これまですでにいくつかのファンドは満期償還を迎えました。このうち一部のファンドに関しては、ファンド資金を元に貸し付けたローンは満額償還したにもかかわらず、貸付通貨ジョージアラリの下落を受け、円建てでの元本割れが生じました。これを受け、この度ジョージアラリの下落についての背景等をご報告させて頂きます。

ジョージアの金利と物価

まずジョージアの政策金利ですが、2018年末には7.00%でしたが、今年の1月と3月にそれぞれ0.25%ずつ金利引き下げを行い、その後は6.50%で金利据え置きとなっております。

(出典:National Bank of Georgiaのデータを基にクラウドクレジット作成)

直近の7月24日に金融政策を発表した際に、ジョージア国立銀行は声明文 で、インフレに関して"It should be noted that the core inflation, which excludes food, energy and tobacco prices, stands at 1.4 percent, also indicating that the increase in inflation is only temporary."(食料品、エネルギー、タバコを除いたコアインフレーションは1.4%で、インフレーションの上昇は一時的なものである)との見方が示されました。

(出典:National Statistics Office of Georgiaのデータを基にクラウドクレジット作成)

ジョージアラリの下落が続き輸入品が物価上昇を牽引

今月1日に発表された7月消費者物価指数(前年同月比 季調前)は4.6%と前月の4.3%から伸び率は拡大しているものの、項目別では食料品が7.9%、アルコール飲料・たばこが13.7%と伸びをけん引しており、これらを除くと上のグラフからも分かるようにジョージア国立銀行のシナリオと一致していることが分かります。

(出典:National Statistics Office of Georgiaのデータを基にクラウドクレジット作成)

(出典:National Statistics Office of Georgiaのデータを基にクラウドクレジット作成)

ジョージア中銀は物価上昇を懸念しこれ以上の通貨安を牽制

ただジョージア国立銀行は、同時に"if the upward pressure on inflation stemming from the exchange rate will persist, then the Committee will consider the possibility of the monetary policy tightening. "(為替レートの下落に伴う物価上昇が顕在化してくるようであれば、金融政策の引き締めも考慮する必要がある)とも表明しています。ジョージアラリは、対ドルで過去最安値水準で推移しており、輸入物価の上昇に伴う、ジョージア国内でのインフレ圧力の上昇はジョージア経済に対する懸念材料の1つであると見られます。

ロシアが航空旅客輸送を禁止し、観光関連に打撃

ジョージア国立銀行はこの金融政策を発表した後、再度声明 を発表。そこでは” Despite positive domestic and foreign macroeconomic dynamics, amid tourism-related shocks and negative expectations, the exchange rate has currently reached the level, which may create a risk to price stability”(国内外の経済状況がポジティブである中、観光関連のショックや否定的な期待感の中で、物価安定を脅かす水準まで為替レートは来ている)とし、4000万USDのドル売却/ジョージアラリ購入の為替介入を行うとし、8月1日に3280万USDの売却を行ったと発表しました。

ジョージアの観光業に目を向けると、6月21日には、ロシアの航空会社によるロシアからジョージア向け航空旅客輸送を7月8日から禁止する大統領令 がプーチン大統領から出されており、ジョージア国立銀行は、上記を受けロシアからの観光客の減少が通貨市場に反映されていると発表 しました。

National Statistics of Office Georgiaのデータによると、2018年にジョージアを訪れた観光客のうち、20.9%がロシアからの観光客でした。ジョージア国立銀行の概算によると、現段階では正確な予測を行うことは困難ではあるものの、ロシアからの観光客の減少は、ジョージア経済に年2億USDから3億USD程度の影響を与えることが予想され、ジョージア経済への影響が懸念されます。

(出典:National Statistics Office of Georgiaのデータを基にクラウドクレジット作成)

実質実効為替レートで見たジョージアラリ

実質実効為替レートとは、特定の2通貨間の為替レートをみているだけでは捉えられない、相対的な通貨の実力を測るための総合的な指標です。具体的には、対象となる全ての通貨とジョージアラリとの間の2通貨間為替レートを、貿易額等で計った相対的な重要度でウエイト付けして集計・算出したものです。

ジョージアラリの動向を実質実効為替レート(ジョージア国立銀行発表 )で見ると、直近の今年6月時点で116となっています。以下の図は過去5年間の実質実効為替レートの推移となりますが、2015年5月に112.5、2017年11月に113.1をつけており、現時点ではいまだ底値には至っておりません。このグラフを見る限りでは下落余地もありそうです。

(出典:National Bank of Georgiaのデータを基にクラウドクレジット作成)

ジョージアラリの今後について

上述のように、ジョージアとロシアの関係性がジョージアラリに影響を及ぼす可能性は今後も高いと考えられます。とくに、政治的な緊張が高まれば、国外からの投資意欲が減退あるいは、資金の引き上げなどが起きやすくなるでしょう。しかし、一方で今後もジョージアラリの下落が続くようであれば、為替介入や金融引き締めに舵を取ることは予想されます。このジョージアラリのトレンドが変わるのか、またそれがいつになるのかといったところは不透明ではありますので、当社としましては、引き続きお客様に通貨分散や時間分散といった「分散投資」をおすすめさせていただいております。

今後とも投資家の皆様のお役に立てる情報発信に努めてまいりますので、引き続きご愛顧賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

◇ファンドの手数料およびリスクについて
ご出資いただく際の販売手数料はいただいておりません。
なお、出資に対して、年率換算で最大4.0%の運用手数料を運用開始時に(または運用開始時および2年度目以降毎年度に)いただきます。
また為替手数料その他の費用をご負担いただく場合があります。
為替相場の変動、国の政治的・経済的なカントリーリスクや債務者の債務不履行等により、元本に欠損が生じるおそれがあります。
ファンドごとに、手数料等およびリスク内容や性質が異なります。
詳しくは、匿名組合契約書や契約締結前交付書面等をよくお読みください。

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