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【お客様対談記事】個人投資家にとっての投資哲学

2019年8月現在、世界経済の動向の不透明感から、市場の価格変動も大きい状況が年初から続いています。

そんな中、短期的な相場の変動に一喜一憂するよりも、今一度、個人投資家の方がなんのために投資を行うのか、個人投資家にとっての投資哲学について、もともとご本人が職業でプロ投資家として活動をされ、個人としても10年以上にわたって資産運用を行われてきた、クラウドクレジットのお客様(以下、山田様<仮名>)と当社代表の杉山が対談をさせて頂きました。

山田様は個人の資産運用は、もともとはインデックスファンドでの運用から始められ、その後インデックスファンドでの資産運用に疑問を感じてアクティブ運用の投資信託や応援をする投資、そして寄付に方向を転じられます。NPOの活動への参画などお金がどこに届くか、つくられたお金の流れによって社会がどう変わっていくかに着目をされた資産運用を、クラウドクレジットだけでなくあらゆる資産運用において徹底していらっしゃいます。

アクティブ運用を行う意味は

杉山:クラウドクレジットのお客様の約85%はオンライン証券等で株式や投資信託での資産運用を行っている方で、資産運用に関わるリテラシーの高い方が多いです。もちろん、たとえば円高でファンドがマイナス数%のリターンで償還されるとびっくりされる方もいらっしゃり、当社として情報発信をまだまだ増やしていかなければいけないとも思っていますが、一般的にはかなりの方がリスク資産で運用を行うことに慣れていらっしゃいます。

そんな中でも、アクティブ運用で経済的リターンを出すことを目指しつつ社会的リターンも出すスタイルを前面にされている山田様のような資産運用のスタイルをとっていらっしゃる方は、当社のお客様でもまだ多くはないのではないかと思います。

そこで今回改めてお伺いします。山田様は、もともとは個人資産運用をインデックス運用で始められたそうですが、昨今の日本では機関投資家の運用でも個人投資家の資産運用でも、インデックス運用が存在感を急速に増しています。今年の1月に結果が発表された「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2018」でも、上位10本の投資信託が全部インデックスファンドであったことが話題になりました。

山田様はなぜ最初にインデックス運用に興味を持ち、その後なぜアクティブ運用と応援投資・寄付中心のポートフォリオに変わっていかれたのですか?

山田様: 自分の個人資産運用を本格的に始めた頃、最初はそれほど投資信託などの分野についての知識量が多かったわけではありません。まず、要は分散投資して低コストでやればよいという情報に触れ、それはそうだなとインデックス運用を行いました。インデックス運用は合理的、理論的だと今でも思います。ただ、インデックス運用をやめたというか離れたのは、みんながインデックスファンドで運用を行ってしまうと、市場が会社を、良い会社・悪い会社と選別する機能も失われてしまうと感じたからです。

それは長期的には社会にとってマイナスだと思うし、投資している私たちにとっても実はリターンが小さくなってしまう可能性がある。コストが安ければ良いとみんながインデックス運用ばかりを行っていたら、本来淘汰されるべき会社も残ってしまったり、逆に良い会社に投資する人が減ってしまって良い製品、良いサービス、良い会社というものが正しく評価されず、企業と市場の対話、市場からの圧力や、企業が投資家の期待に応えられない時は株式が売却される、というプロセスがなくなってしまったりします。

資産運用に占めるインデックスファンドの割合が増えてもそうはならないという意見もありますが、私はコストの安いインデックスファンドで運用を行う人が増えるというのは、アクティブ運用投資家にとっては収益機会が増えると思っています。

企業や経済全体を成長させるということに自分自身がどう参加をするのか、そしてその結果、社会的リターンを得る一方で経済的リターンもプラスアルファをとれる可能性があるのでは、ということで私の場合はアクティブ運用を行っています。

大切なのは、自分で考えて自分のスタイルをみつけること

杉山:ここ数年、資産運用の分野でもいわゆるフィンテック企業が新しいサービスを提供することが増えてきていますが、インデックス運用、アクティブ運用、応援投資を問わず、やはり運営企業自身が確固たる投資哲学や個人投資家の方にこのような資産運用を行って頂きたいという明確なビジョンを持っていると、投資家の方に運営者が目指す方向性が伝わり、その結果サービスもより多くの方に利用していただける、という風になってきていると感じています。

投資哲学があると、それを旗印として、どのような状況下でも運営企業の役員も職員も絶対にそれを続けるのだというコミットメントができてそこからブレることがない一方で、投資哲学がないとフラフラして企業としてどこに向かっているのかがわからなくなってしまう。

クラウドクレジットの場合は、2014年の開業以来、社会的リターンと経済的リターンを両立させる運用という旗印のもとにサービスの運営を行わせていただいています。

その一方で、個人投資家の方にとっても、ご本人の投資哲学があった方が短期的な損益に一喜一憂するというよりもより長期的な目線で運用を続け、結果的により高い運用リターンを得られる可能性が高まるのではないか、ということを最近感じています。

山田様の場合、資産を単に銀行に預金しておくだけにするのではなく、ご自身の資産が減ってしまうかもしれないリスク資産での運用を行うということを、どういうお考えのもとで行っているのでしょう。

山田様:個人にとっては、リスク資産での運用というのは無理にやらなくても良い、極端な話、別に預金をしているだけでも良いと思っています。「リスクはあるだろうが、ただ預金をしているだけだと老後の資金が不安だ」というような理由でリスク資産での運用を行うというのはあまりよくないと思います。

それだけだと、市場の動向等から損失がでてしまった時に資産運用を続けることができないリスクがあると思います。もっとお金についての教育が変わっていき、お金のこと、働くということ、経済について、などを子どものときから学ぶ機会が多くなってくると、なぜ自分が資産運用を行っているのか、自分にとっての資産運用の位置づけというものが頭の中で整理され、そうすると、損失が出たらそこで資産運用をやめてしまい結局何だったのだということにもならない。逆に言うと、そういう部分が自分の頭の中で整理されていないと、資産が減ってしまうとすぐに運用をやめてしまう、ということで終わってしまうリスクがあると思います。

杉山:山田様もインデックスファンドでの運用から個人資産運用をはじめられて、その後「違うな」と感じられてアクティブ運用、応援投資や寄付に重点を移されるという試行錯誤をされています。

現在は5年前、10年前と比べても個人の資産運用に関して良質な情報が書籍でもネット上の情報でも増える一方だと思いますが、逆に溢れかえっているともいえるこれらの大量の情報をどういう位置づけにしたら良いと思われるでしょうか。

山田様:情報を鵜呑みにはしないのと、自分の頭で考えるのがよいとは思いますが、難しい点ですね。

なるべく多くの考え方に耳を傾ける、なるべくひとつだけの意見にとらわれて狭い視野にならないようにするのが大切なのではないかと思います。

資産運用を続けているうちにだんだん見えてくるものがあると思っていて、積立投資もそうですけど、やめずに続けることでだんだん自分のやり方がみえてきたり、自分の投資哲学というものができてきたりするのではないかと思います。

それは1年、2年では難しく、やはり10年くらいはかかるのではないかと思います。厳しい局面でも手に汗を握らない範囲で積立投資をしたりして、継続しながら多くの人の考え方を聞いていくことで、見えてくるかなと。

最初から大きすぎる金額で資産運用をはじめてしまうと、市場が急落した時などに大きな損失が出て継続する気がなくなってしまい、結果的に資産運用をやめてしまうというパターンを多く見てきました。なので、そういう始め方はあまりお薦めできません。資産運用をはじめたら儲かったからといって、どんどん運用する額を強気に増やしたくなったら、今一度その金額がご自身のリスク許容度の範囲内に収まっているかを確認されることをお薦めします。

海外の市中にお金を届けるということ

杉山:この10年間、独立系の運用会社やオンライン証券で、すばらしい投資信託やコストの安いシンプルな投資信託を購入できる機会がかなり増えました。そんな中で、クラウドクレジットがぽっと出てきたときはどう思われました?

山田様:貸付型クラウドファンディングという仕組みで日本の個人のお金を海外の成長国にまわすことができることは知りませんでした。日本では貸付型クラウドファンディングでも海外にお金をまわすという方向性のものは多くないですよね。

杉山:意外と欧米の貸付型クラウドファンディングでも、海外に融資を行うものは多くありません。たとえばアメリカの場合、国内の融資市場が大きいためみんな国内での融資で満足しており、海外に融資を行うというモデルは多くありませんし、欧州の貸付型クラウドファンディングの運営者の方と話をしても、個人投資家の方が新興国通貨の為替リスクについてこられず新興国に貸付を行うモデルは欧州では難しいと、お聞きします。

これが日本の場合は、ブラジル・レアル建てや南アフリカ・ランド建ての債券等の投資機会が証券会社で提供されてきていたり、新興国通貨を含む通貨ペアがFXで提供されたりしており、新興国通貨というものが個人投資家にとって欧米よりも身近になっています。

ただし経済のファンダメンタルズが非常に弱くなってしまっているトルコやアルゼンチンの通貨建ての金融商品が公然と販売されるなど、金融事業者の目利き力が投資家のニーズについてこられなかったことが、これまでの日本の新興国関連の金融商品の問題だったと思っています。

山田様:これまで証券会社で販売をされてきた新興国通貨建ての国債などと貸付型クラウドファンディングでは、お金が届く先も異なりますよね。後者では、市中の会社なり一般の人にお金がまわる。

杉山:はい、新興国政府への資金供給という部分はかなりチャネルも確立されてきていると思いますが、直接市中にお金が届くということは付加価値が高いのでは、と思っています。

寄付も資産運用ポートフォリオの一部と考える

杉山:山田様は応援にフォーカスした投資や寄付などの分野もかなりみていらっしゃるイメージがありますが、アクティブ運用の投資信託等での資産運用以外のそういった分野も見ていらっしゃるのは、どういった理由からなのでしょうか?

山田様:応援投資や寄付も含めて自分のポートフォリオ全体を考えており、応援投資や寄付は自分のポートフォリオの社会的リターンを高めるもの、という位置づけです。

杉山:寄付を投資とセットにするとその分投資元本は減るということになると思いますが、それも含めてご自身のポートフォリオ全体の経済的リターンを見られているということでしょうか?

山田様:そうです。たしかに寄付した分ポートフォリオ全体の経済的リターンは下がりますが、一方でその分社会的リターンは上がる、と考えています。

元本もアクティブ運用の方が圧倒的に多いため、それほど元本が減るというわけでもないです。また、もちろんアクティブ運用の方でも社会的リターンは気にしています。

杉山:経済的リターンへのこだわりはいかがでしょう。

山田様:もちろん、ポートフォリオの資産全体が減ってもいいとは思っていません。今投資を行っているファンド等にずっと積み立てていけば、長期的にみればインデックスファンドよりは若干高いコストを払ったとしてもアウトパフォームできるのではないかと思っています。

一方で、日本で販売されているアクティブファンドの99%は長期投資に適さないものになってしまっていると思っており、そういうアクティブファンドに投資をするのであればインデックスファンドに投資したほうが良いと思います。

私の場合は、確固とした企業理念、投資哲学があり、経営者や運用責任者・担当者の顔がみえる運用会社に資産を託しており、そういう部分を見ずに投資を行う場合と比べて、劇的にではなくても経済的リターンも向上すると考えています。

「応援する投資」がより普及するには

山田様:クラウドクレジットのファンドは、応援投資と寄付の枠で投資を行っています。

杉山:当社自体は、経済的リターンについてもコミットをしております(笑)。

山田様:もちろん、もちろん(笑) 。社会的リターンという観点から、寄付と同じ枠という意味です。大企業への資金供給は上場株式投資で行えますが、新興国の中小企業などにお金を届けるとなると、貸付型クラウドファンディングという仕組みということになるのでしょうね。

杉山:クラドクレジットでは社会的リターンをあげることにフォーカスして、実際に今後投資の社会インパクトを測定してレポートを投資家の方に交付させていただく、いわゆるインパクト投資ファンドもご提供しています。

クラウドクレジットがご提供しているインパクト投資ファンドには大きく分けて2種類あります。

1つ目は、「パキスタン太陽光事業者支援ファンド」や「東南アジア未電化地域支援プロジェクト」のようにパキスタン、ミャンマーといった経済の発展段階の若い国のカントリーリスクや通貨リスクを直接、間接的に負うものです。

これらのファンドでは、貸付先の企業も、事業の社会性はすばらしいものの、まだまだ若いベンチャー企業であるため、もっと財務状況が安定した中堅企業に貸付を行っているファンドよりも貸倒リスクも高いといえます。

この通貨リスクと貸倒リスクの合計に見合った金利となると20%とかになってしまうのですが、さすがに金利20%でお金を借りては資金需要者の方の事業が成り立ちません。

そのためこれらのファンドはリスクに見合った金利より低い金利での貸付を行っており、確率論的には投資家の方のお金が増えるというよりは減ってしまう可能性が高いともいえます。もちろん、減るといっても元本割れを起こしてしまうという意味で、資金消失までいってしまう可能性は高くないと考えています。

その中で、これらのベンチャー企業が行っている事業の社会性が非常に高いため、当社ではお客様にこういうベンチャー企業に投資を行う機会もご提供することとしています。

一方、2つ目は、「ペルー協同組合支援ファンド」や「メキシコ女性起業家支援ファンド」のようにお金を借りる事業者も、その事業者が事業を行う国のマクロ経済もそこそこ安定している、ミドルリスク・ミドルリターンの投資機会として、経済的リターン追求の観点からも十分ポートフォリオに組み入れて頂けるようなファンドです。

※注記:メキシコ女性起業家支援ファンドは、メキシコの政策金利と同水準の表面利回りでご提供をさせて頂いており、リスクに見合った水準よりも若干低い表面利回りでのご提供となっています。

まだまだ当社のお客様の中で社会的リターンの部分を一定以上重視されている方の割合は多くないですが、まずは後者のような、純投資としてもペイするようなファンドに投資を行うところから、応援投資を行うという視点にも慣れていく方が徐々に増えていってくださると、運営者冥利に尽きると思っています。

山田様:現実的には、やはり応援投資の方がメインストリームになるというのは難しいとは思っています。ただもちろん、ボリューム自体は今後増えていくのではないかと思っています。私自身の身のまわりをみてみると、ミレニアル世代と呼ばれる40歳未満の世代などは、今後よりそういうセクターに興味をもっていくのではないかな?とも感じています。

杉山:当社の場合は創業者の私が市場に接し始めたのが証券会社の社内ヘッジファンドだったということもあり、なんだかんだいって社会的リターンよりも経済的リターンに関する情報をお客様に発信することの方が多くなっているのが現状ではありますが、通常の投資信託にはない当社ファンドの価値が社会的リターンだというのも事実だと思うので、社会的リターンの部分を今後もっとお客様にお伝えしていくというのは課題だと思っています。

話は脱線しますが、山田様が積極的に行われている寄付ですが、社会的インパクト投資の機会を探索していると、まだまだ経済的リターンも狙っての投資というのが行えるセクターというのはマイクロファイナンス機関への貸付と未電化地域に電気を届けるベンチャー企業への貸付くらいで、セクターとしては他にも上下水道を整備するもの、農業、教育、ヘルスケア、中低所得者の方向けの住宅事業などもあるのですが、これらのセクターについてはまだまだエコシステムが上記の2つと比べると貧弱で、なかなかアップサイドも狙いにいく投資というのは行いづらいというのが現状です。

やはり寄付でこういったセクターのエコシステムのベースができていって、ベースができるとマイクロファイナンスや電力ベンチャー企業のセクターのように投資マネーが流入してくるようになるのかな、と思っています。

山田様の投資哲学は、「良い会社にお金をまわす」

杉山:最後に、「個人投資家にとっての投資哲学」についてあらためてお話をいただければと思います。

山田様:私の好きな言葉の中に、「意思のあるお金は社会を変える」というものがあります。

こういう社会にしたい、という意思を反映するものが投資だと思っているんです。1票を投じる。そういう意味で社会の持続可能性とか、投資家としての自分自身だけではなく、顧客、従業員や株主といったステークホルダーや社会全体を大切にする会社に投資をしたい。その方が長期的には社会全体の豊かさは高まるし、個人投資家のリターンも長期的にみれば高まるんじゃないかなと思います。良い会社とか良い事業にお金をまわしたいということですね。

良い、というのは持続可能性の観点とか、短期的な利益だけを追求しないとか、株主だけを優先しないとか、社会全体を大切するということで、そういう会社に投資をしたいなと思っています。良い会社に投資を行うことは投資家の責任というか、投資する以上はちゃんと投資先を選ぶ必要がある。なんでもかんでも儲かればいいや、だと社会全体の価値が毀損して自分に跳ね返ってくると思っていて。社会貢献というと言いすぎですが、結果として社会的な価値も達成できるということですね。

杉山:本日はありがとうございました!

◇ファンドの手数料およびリスクについて
ご出資いただく際の販売手数料はいただいておりません。
なお、出資に対して、年率換算で最大4.0%の運用手数料を運用開始時に(または運用開始時および2年度目以降毎年度に)いただきます。
また為替手数料その他の費用をご負担いただく場合があります。
為替相場の変動、国の政治的・経済的なカントリーリスクや債務者の債務不履行等により、元本に欠損が生じるおそれがあります。
ファンドごとに、手数料等およびリスク内容や性質が異なります。
詳しくは、匿名組合契約書や契約締結前交付書面等をよくお読みください。

クラウドクレジット株式会社
第二種金融商品取引業:関東財務局長(金商)第2809号
一般社団法人 第二種金融商品取引業協会 加入

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