9年前に上映された好きなアニメの劇場版が4DXで帰ってきた話

 
私は今、とある映画館に向けて走っていた。

珍しく誰よりもはやく退勤した。
上映時間がぎりぎりの時間しかなかったからだ。
会社を出てすぐに走った。膝が痛い。

電車に乗ってスマホでこのnoteを書きながら、10秒に一度は時計を見てしまう。
いつも「時間が足りない、1日48時間欲しい」と言っていた。この時だけは時間の進みがもどかしく感じられた。

何度もチケットの予約情報を確認する。
何度も夢ではないことを噛み締める。
映画館に着いてから、私はどれだけ頬を緩めるだろうか。きっと不気味なくらい笑顔で劇場に入るのだろう。

『劇場版 蒼穹のファフナー HEAVEN AND EARTH』

9年前、私のオタク人生を鮮やかに変化させた映画が、再び映画館の大スクリーンで観られるのだから。

きっかけは9年前、偶然の出会い

当時、私は高校生だった。

学校では友達とちょっと流行りのアニメや漫画の話をする。
家では月に10本近くのアニメを観て、購入した漫画の新刊を読む。
どっぷりと二次元に浸かった生活だった。

冬のある日、偶然映していたTVでアニメの一挙放送が始まった。『蒼穹のファフナー』という。
数日に分けて放送される理由は、どうやら近日公開する劇場版の宣伝らしい。本編が始まる前の数分間は、主演の男性声優が作品の宣伝をしていた。

本編が始まってからの第一印象は「エヴァンゲリオンみたいだ」だった。

人々が暮らす島に、突如地球外生命体が攻撃をしかけてくる。
人々は避難シェルターに逃げ込み、街は防衛施設や戦闘兵器が展開される。
そして主人公は何も分からないまま島を守るために人型の巨大ロボットに乗る。

元々ロボットアニメが好きだった私は、ロボットで戦う設定にもキャラクターにも惹かれて、毎日の放送を楽しみにした。

「エヴァみたいだ」と思っていたこの作品は、中盤になってから「エヴァとは違う」と認識した。

主人公達は誰かのために戦い、大人は戦った子供達を抱き締める。
時に想いが衝突し、時に想いが溶け合う。
親しい人の不条理な死を目の当たりにし、その人からの想いを受け継ついで生きる。

アニメという空想の世界でありながら、ドキュメンタリーといえるほどリアルな感情が描かれていた。
話数を重ねるごとにキャラクターそれぞれに愛着を持ち始め、ただ彼らが希望の道中に希望があってほしいと願った。

ハッピーエンドが好きだった当時の私にとって「たくさん人が死ぬこと」「たくさん傷つくこと」は受け入れたくないものだったけれど、この作品は自然とそれを受け入れることができた。

最終回を観たその日、彼らの物語の続きが観たいと思った。数日後は劇場に足を運んでいた。

劇場版でも彼らの物語はより繊細に鮮やかに描かれていた。
同い年となった彼らの戦闘を観て涙をこらえた。
彼らが未来に希望を見出だす時を、固唾を飲んで見守った。
不安を煽ってくる挿入歌は心を押し潰した。
それでも私はスクリーンから一度も目を離せなかった。呼吸すら忘れていただろうか。

製作陣が限界を攻めて製作したこの作品、観終わった当時の私の心は晴れ渡る青空のようにすっきりしていた。

そして、同年代は誰も知らないこの作品を、人知れず私は愛し始めた。

「世界」を広げてくれた作品

今までアニメや漫画は読んでいたが、作品に付随する商品を買うことはなかった(学生でお小遣いが限られていたという事情もあるが)。

この作品は、私にいろんな初めてを与えてくれた。

初めてサントラを買った。
初めてDVD BOXを買った。
初めてフィギュアを買った。
初めて設定資料集を買った。
初めて公式イベントに参加した。
初めてネット上のファンの人と交流した。

一気に視界が開けた。
閉じられた一人だけの世界で楽しんでいたあの頃が考えられないほど、世界の広さを知った。

作品を深く読み込む喜びも知った。
世界にはいろんな知識が溢れていて、それらからこの作品にまつわる単語を見つけていくのが楽しくて。
製作陣が込めたメッセージを見つけ出していく度に感動した。

今、私の中で一番好きな作品は『蒼穹のファフナー』で、その中でも好きなシリーズは劇場版だと断言できる。

大人になった今、再会して

9年前のあの日、高校生だった私。

ただ主人公達のことを見守ることしかできなかった。

6年前にリバイバル上映した日、専門学生だった私。

少し大人になって作品について研究して、知識をなぞりながら楽しむ喜びを知った。

大人になった今。

4DXという映像に合わせて座席が揺れる最新システム。
つまり、ファフナーに乗ったような体験が出来る。

そしてまた、『蒼穹のファフナー』シリーズの中で一番好きなこの作品を、世界を、大画面で見られる。

「私が作品に出したお金のおかげ」なんて思い上がったことは言えない。
でも、長年愛してきた作品がこうしてまた劇場で観られることが何よりも嬉しい。

ただ純粋に、この作品を観られることが嬉しい。それ以外の言葉が言えない。

映画館の最寄り駅が近づく。

身体が火照っているのは、きっと走ったからだけではない。
心が高揚しているーー何日も待ち望んだこの瞬間を迎えられることに。

電車がホームに滑り込んだ。
何とか間に合う。

興奮と緊張と共に、私は電車を降りた。

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久怜

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