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2017年の音楽、30選 (その2)

前回より引き続き四十男3人で語り合う、第2回。
【11〜20曲目】➡︎ ◎Dippin' Shake/ゆるふわギャング ◎Cold & Dry/Awesome City Club ◎金星 Feat.DAOKO/女王蜂 ◎Cho Wavy De Gomenne (Remix) [feat. SALU] /JP THE WAVY ◎Awful Things/Lil Peep ◎ヴァンパイア ハンティング feat. Kick A Show (Y2FUNX)/G.RINA ◎choice/City Your City ◎グラセフ feat. Lunv Loyal/ゆるふわギャング ◎Renaissance/PUNPEE ◎ステップアップLOVE/DAOKO×岡村靖幸

▼全30曲(+1)のプレイリストはこちら


11. Dippin' Shake/ゆるふわギャング

【選者:ワンダ】

ワンダ:「ビジネスがなんだ全員死ね」みたいな歌詞があるんですが、

モリアツ:あるある。おっ! って思った。

ワンダ:そういうのをストレートに出す感覚も大事だな、ってのと、その辺の言葉を使っても抵抗なくスルッと入ってくるサウンドの良さはバランス良いなー、と。

キド:グループ名から、アイドルグループだと思って聴いたから驚いたよ。

モリアツ:土浦発。男女の2MCとプロデューサー。いや、本当素晴らしい。

ワンダ:アイドルだと、「ゆるめるモ!」とか似たような名前いますし、「ヤなことそっとミュート」とグループ名入れ替えても違和感はないですね。

キド:「時々ビッチと会う」みたいな強烈なフレーズがあるわけじゃないんだけど、印象が強い。カップルでやってるというのもいい。

モリアツ:超オシャレだけどヤンキー感ある。凶暴だけどロマンスを感じる。

ワンダ:ヤンキー感、暴力性、ロマンス、あと広い意味での中二感みたいなのが割と今年の気分なのかもです。個人的には。


キド:
クラウドファンディングで制作とは聞いてたけど、達成額が95万円だったんだ。それもリアル(笑)。全額使わないで、遊興費に…‥

モリアツ:結構ストイックな感じするけども、どうだろね。


12. Cold & Dry/Awesome City Club

【選者:キド】

キド:デビューからのこの3年でミニアルバムを4枚出したんだけど、ほぼすべての曲が好みだった。これは今年リリースというだけのチョイス。

モリアツ:三浦大知か誰かかと思った! こんなに歌うまかったっけ!?

キド:だんだん上達した気がするね。バンド名のせいか、シティポップ・リバイバルで括られたりもしたけど、もっと新しいことやろうとしてる。

ワンダ:シティポップのリバイバルも、ヒネりのない曲は淘汰されるフェーズにとっくに入ってんだろうなあと思いました。この曲を聴いて。

モリアツ:シティポップ方向ではなくて、R&B路線で勝負してほしいね。歌い上げる系ソウルでこのボーカル聞いてみたい。

キド:男女混成なのもポイント高い。混成であっても女子メンバーにマイク渡さないバンドはダメだと思うんだけど、彼らはバンドはツインボーカル。この曲は男子ソロボーカルだけども。


13. 金星 Feat.DAOKO/女王蜂

【選者:モリアツ】

モリアツ:いや、まずコレなんだけど。今年はDAOKOすごいねー。
https://m.youtube.com/watch?v=F-_dFrgk6s8 (※動画削除済み)

ワンダ:俺はこの曲(岡村ちゃんの方)選びましたね。

モリアツ:ね。なので『ステップアップLOVE』については後述するとして……この女王蜂の曲は、超アガるし切ないし、アヴちゃんのヴォーカルもDAOKOも良かった。何よりコレ、歌詞世界含めて「岡村ちゃんじゃん!」と思って聴いてたんだけど……

キド:異常な音圧が岡村靖幸っぽい。

モリアツ:……その後こうやって共演を果たすという。さらにBECKとも共演とか、ブレイクするにもほどがある!

キド:おれはDAOKOの今年は「打上花火」だったけど、あれも別の男とだった(笑)

モリアツ:時々ビッチと……。

キド:いや、まさに。とんでもない女ですよ。

ワンダ:DAOKO自身の色は何色かわからんっていうか、無味無臭だけどアクがあるような。アクセントとして使いやすいというか、とりあえずこれ入れときゃ美味くなるよ的な味覇みたいな調味料っぽいというか……。

モリアツ:あー、ウェイパー。確かに!


14. Cho Wavy De Gomenne (Remix) [feat. SALU] /JP THE WAVY

【選者:ワンダ】

ワンダ:流行ったらしい、で聴いたら流行っただけあって良いなと。いや……でも、身もフタもないことを言うと明日花キララの替え歌の方が好きです。

キド:明日花キララ?

モリアツ:まずこれ。
https://youtu.be/QONONWQjk2E


ワンダ:
そんでこれですね。
https://youtu.be/S5jXOPeXb5Y


ワンダ:
元曲→カバーつうか替え歌とか色々出てくる→そん中の一つが明日花キララが替え歌してるやつ、という流れですかね。

モリアツ:くねくねっとしたダンスも流行った要因?とかとか。YouTubeでバズってポルノ女優が乗っかるとか、なんだかとってもUSっぽい流れ。

ワンダ:中毒性ありますね。昔のチャラい音楽(ユーロビートとか)と違うのは、どこかシリアスさもあり、あ、普通にかっこいいじゃんって思えるところかなあと。

キド:「タダでX Videoみんな」とか、これは明日花キララが優勝じゃないかしら?

ワンダ:さすがにApple Musicに無いよな、ってんで元曲を選んだんですよ!w


15. Awful Things/Lil Peep

【選者:キド】

キド:訃報で知ったからニワカもいいとこなんだけど、ヒップホップ界のカート・コバーンと呼ばれてたんだって?

モリアツ:お顔にタトゥー、ファッションはパンクス、でオーバードーズで亡くなった、という。

キド:ざっと聴いてみて、それこそ「Cry Baby」って曲もあったけど、あんまりピンとこなかった。最初にラジオで聴いたこの曲だけ良かった。

モリアツ:エモ・トラップってやつね。

キド:ラクガキみたいに適当なタトゥーを顔まで入れちゃうのって、人生に執着ない感じがして。そういう生き急いだヤンチャな人がポッと作ったすごく印象に残る曲。死んでなかったら思わなかったかもしれないけど。

モリアツ:言い方悪いが、死んでなかったらハイプで終わった可能性も大いにありそう。

ワンダ:10年代はジャンル間の接合みたいなのが目立つ気がして。この人は10年ちょい前ならそのままエモやってたんじゃなかろうかという気もします。

キド:ロック向きの声だもんね。

モリアツ:「なぜ選んだ!」というのが一番の感想かも!

キド:うーん。早逝の不良に対する憧れかな。佐野元春より尾崎豊のほうがビートニク、みたいな……


16. ヴァンパイア ハンティング feat. Kick A Show (Y2FUNX)/G.RINA

【選者:モリアツ】

モリアツ:80sシンセ調のトラックが個人的にスゴいツボ!

キド:誰しも1度はやりたい『sexual healing』系だね、この曲は。後半は意外な展開だけど。

モリアツ:後半もメロウ&スムースなんだけど、ちょっと乱れた感じが味わい深い。ラスト近くで、オートチューンかけたヴォーカルが、コブシ回ってるみたいに聴こえるとこなんか、特に。

ワンダ:80年代感あるからか、なぜかパトレイバー劇場版1作目のサントラに近い感覚が。曲調が似てる訳じゃないんですけど……。

キド:川井憲次! シンセサイザーの音色と使い方かな〜。

モリアツ:シンガーのKick a Showは、ZEN LA ROCKやMONDO GROSSOのアルバムにも客演してて、好きな曲多いんだよね。

キド:歌詞も技ありでいいよね。「心以外はあげる」。ヤリちんを好きになった女子の心情をおとぎ話風にきれいに聴かせてる。

モリアツ:ラップも歌唱もトラックも自分で手がけてるG.Rina姐さんだけど、今回は、オシャレ80s風味というよりも、ヴェイパーウェイブ寄りというか、Robert Parkerなんかの、ガチの80sシンセミュージックリバイバルに近い感じ。
https://youtu.be/TcQVoIeFkh8


https://www.youtube.com/watch?v=zJqLH8EA2rM


ワンダ:
「85'アゲイン」ってタイトルからして良いですね。昔を思い出すからか、この曲異様に落ち着く……。

キド:ジャケに村さ来! G.Rinaがこのジャンルに寄せてきたのは、アートワークからもよくわかるね。


17. choice/City Your City

【選者:ワンダ】

ワンダ:Apple Musicオススメ経由ですねこれは。シンセの使い方とちょっと歌謡曲入った和製R&Bな感じが好きですね。歌詞は女性目線なのかな?それも良かった。

モリアツ:正直、歌声は好みじゃないんだけど、歌詞がヤバい!!
https://www.kkbox.com/jp/ja/song/LbK2R0PQ86N1B6g51B6g50PL-index.html

キド:シンガーと、トラックメイカーの男性2人組。確かに歌詞、どうかしてるね。「私の体はもう合皮」とか、なかなか出ない。

モリアツ:そう、どうかしてると思うの。「あなたは乙女 わたしよりずっと あなたまた乙女隠してる かつてのダーリン」。これは視点転換した懺悔なのかしら?

キド:メンヘラと付き合ったときに、呪いのコトバを採取したんじゃないかと想像するけどね。

ワンダ:そうだったらエピソード的にはすばらしいなあ……!

モリアツ:乙女隠してる〜のあたり、歌詞が綺麗にメロに収まっていないのもちょっとオカしい。こんなに字余り/字足らずにしないんじゃない?

ワンダ:女目線で歌うことで出る抑えきれない情念(というよりメンヘラ感)みたいなのがこれ見よがしに強調されたシンセ音に乗る展開。肌に合うんですよね、なんか。

キド:ニューミュージック的な歌唱と、オンタイムなトラック、という方法論はイイと思ったけど、この歌詞だと共感は得にくいね。だからこそ評価したい!

ワンダ:いやー、個人的には割と共感しますね……。

モリアツ:主体というか視点が男女間でグルグル切り替わる感覚があって。コレを女性視点で歌っちゃえる事にツラさはないのか、ツラいから歌ってるのか、もしかしてただの変態なのか……。
自分の弱い部分を女性視点で突っつくのって、想像するだけで苦しい気持ちになるんだけども。


18. グラセフ feat. Lunv Loyal/ゆるふわギャング

【選者:キド】

キド:「グラセフ」というのは『Grand Theft Auto』の日本的な略称なんだよね。10数年前に日本でもヒットしたシリーズなんだけど、彼らの世代だともう『スーパーマリオ』みたいなポジションにアレがあったのかなと。

ワンダ:通行人を撃ったりできるゲームでしたっけ?

キド:銃で人を撃つゲームはそれ以前にもあったけど、「大クルマ泥棒」というタイトル通り、盗んだクルマで轢き殺す…というのが画期的だったの。歌詞にもあるね。

モリアツ:ギャングスタ気取りも、あるいはボニー&クライド気分も、バーチャルで体感する世代、と。この曲はボケっと聴いてるとちょっとゲーム実況感もある。

キド:ゲーム脳のヤンキーというかね。

モリアツ:個人的にはゆるふわギャングは全編『トゥルー・ロマンス』だよなあ、と思いながら聴いてる。ビデオ(https://youtu.be/5_Y1xskm-Yc)では『勝手にしやがれ』と『時計仕掛けのオレンジ』も入ってるかな。

ワンダ:岡崎京子の『エンド・オブ・ザ・ワールド』も思い出します。

キド:年下の奴がそこらの古い映画や漫画を挙げてくるとちょっと「アーン?」って思うじゃない?(笑) でも「グラセフ」だからね。等身大でいいよ。

ワンダ:若い頃だったらこのノリを受け容れられたかわからんですが、今は素直にかっけーなと思いますね(笑)

キド:ゲームオタクからもうひとつ言わせてもらうと、『Grand Theft Auto』はシリーズを通してヒロインというものがほぼいないんだよ。女は常に敵、邪魔者、性欲の対象。だからわかっちゃいないなと思いつつ、そのへん深く考えないで取り上げちゃうタフさ、若さ、リア充さに感服。


19. Renaissance/PUNPEE

【選者:モリアツ】

モリアツ:待望のアルバムに収録されている……んだけど、実はこの曲自体は結構古いの。

ワンダ:あ、そうなんですか。何年くらい前なんでしょう?

モリアツ:2015年とかかな? 「Movie On The Sunday」っていうミックスCDに収録されてて。ながらく入手困難になってて、ようやく配信されたのが2017年。この曲は紛う事なきマスターピースだよ!

キド:彼はゆるふわギャングではなくこちら側の出自だね。

モリアツ:映画好き、アメコミ好きって点ではこっち寄りかもね。あと、サンプリングミュージックとしてのヒップホップにこだわりがあるところも。

キド:いや、ヤンキーではなく帰宅部的だったところ(笑)。

ワンダ:どうりで耳心地いいのか……。

モリアツ:ああ(笑)。でもフリースタイルのスキルでも、強面のB-BOYを黙らせてきたワケで、ただの「板橋のダメ兄貴」じゃあない。

キド:2015年に宇多丸のラジオ出た時のDJプレイ、ラストがドラゴンボールのマイナーな曲なんだよ。でてこいとびきりZENKAIパワー!


モリアツ:
コレか(笑)。 実際いい曲なんだよなー。PUNPEEはとにかくセンスいいし、力抜けてる。

ワンダ:力抜けてる、そうですね。脱力まではいかない居心地の良さ。

キド:PUNPEEはいまいちピンと来てなかったんだけど。このアルバムはスルメ感というか、名作っぽいオーラすらあるね。


20. ステップアップLOVE/DAOKO×岡村靖幸

【選者:ワンダ】

モリアツ:これ、歌詞が共作だというハナシで。

ワンダ:調味料DAOKOをかけてても、全体的に割と見事な岡村ちゃんの曲って感じですね。

キド:衝撃だったのはビデオのラスト、daokoにキスされてドギマギするじゃない?

ワンダ:キスされた時の表情いいですよね。

キド:初期は「誘惑されたり純愛に悩む少年のボク」、中期は「最近の女子高生の言動に戸惑う青年のボク」、で今回ついに「女子高生(ぐらいのコ)にキスされちゃった中年のボク」と、キャリア通じて岡村クロニクルになってんだよね。

ワンダ:ああ、だからDAOKOみたいな記号的な子との組み合わせなのか、という気も。前も書きましたけど、DAOKO自身の色は良くも悪くもあまり感じないんですよね。

キド:利用された感じだよね(笑)

モリアツ:ふむ。岡村楽曲は「永遠の事前」ってな印象も強くて。事後とか、終わってしまった感情を扱う曲ってどれくらいあるっけ? 過去のPVであからさまに朝チュン、とかないよね?

キド:映像ではないかも。映画ですらなかったからね、ラブシーン。

モリアツ:本質的に持ってて消えないバージニティつうか童貞性が、実年齢にそぐわなくなってきてスランプ → いろいろ開き直って帰ってきた現在。という解釈でいたんだけど、あってるかしら?

キド:開き直ったというより、壊れたと思ってる(笑)。間に薬物が絡むので笑ってはいけないんだけどね。

ワンダ:絶対に笑ってはいけない岡村靖幸。靖幸、アウトー、で捕まる。

キド:ほんと、アウトサイダーアートだと思う。

モリアツ:まあでもDAOKOの詩作も大したもんだと思いますよ、皮肉抜きで。「アタシ勉強中」というと川本真琴も思い出すネ!


(その3)へ続く。


▼全30曲(+1)のプレイリストはこちら


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