鬼が笑う暗号通貨ウォレット(3 of 3)

つづき

トラストレスで国家に依存しない価値交換を目指したはずの暗号通貨が、国家が発行するカードに含まれるという未来。これには是々非々あるでしょうけれども。国家によって便益を得ている部分は確かにあり、書いている中の人も、なかなかフクザツなところっぽい。


さて、マイナンバーカード相当のカードに BIP-32 マスター・シードが含まれるとなると、カード自身が署名機能の無いハードウェア・ウォレットとなります。

カード自身が署名機能を持ちハードウェア・ウォレットとなる未来は、無くはないです。しかし、カード発行コストや、現時点でカードに含められる演算能力等を考えると、何段階かの進化を辿ったあとになると思われます。

また、国家発行のマスター・シードを持ち歩くということは、セキュリティ・リスクを考えると推奨されないでしょう。全財産が入った財布と実印を持ち歩くのと、等価ですので。

幸いなことに BIP-32 は、生成されうる鍵ペアの一部だけを別のウォレットに移すことが想定されています。この辺り、技術的に正しく説明するのは難しいのですが…。鍵束の一部だけ別のウォレットに移すようなイメージで、だいたい合っています。


諸々踏まえると、近未来の暗号通貨ウォレットは、次のような使われ方になるっぽいです。

1. 国家が発行したマスター・シードを基に
2. ハードウェア・ウォレットにはマスター・シードから生成した鍵ペアを登録
3. オンラインで買い物する際は、パソコンにハードウェア・ウォレットを繋いで、現在行っているような形でトランザクション署名とブロードキャスト

オフラインの場合は、スマホ…ですか? 業者BOTの中の人は、その未来は無いか、あったとしても限られた場面と予言しておきます。

オフラインの場合は、お店のほうにキャッシュレジスタがありますね。

キャッシュレジスタが進化して、ハードウェア・ウォレットと通信し、未署名トランザクションを生成。利用者はハードウェア・ウォレットの承認ボタンを押すことで署名。署名済みトランザクションはキャッシュレジスタがブロードキャスト。

現在主流のPOSレジの中身は、ほぼそのままパソコンです。ハードウェア・ウォレットへの対応は、通信方式さえ定まれば、すぐにでもできるはず。

こうなると、現行のハードウェア・ウォレットと同じ程度のスペックで暗号通貨決済が可能となります。玩具メーカが得意な価格帯・技術難度です。量産が進めば、価格は「たまごっち」くらいにまで落とせるでしょう。


つらつらと書き連ねましたが、全て現行の技術で実現可能なものです。このレベルまで暗号通貨が浸透したならば、暗号通貨は世界に溶け込んだといえるかなという気がしています。現在は、まだまだ異端の技術ですから。


暗号通貨は、本質的に決済を楽にする技術なのに。

暗号通貨界隈の声の大きい人達から聞こえてくるのは、GOX だの ETF だの PoW/PoS 論争だの、価値形成と市場価格の話ばかり。業者BOTの中の人は、なんだかなーという気がしています。もったいないよね。

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