BTC現状の分析と今後の最適戦略 18年8月版

こんにちは、ダッツです。

twitterでも話題になっているLS比や先物期日など面白いトピックが多いので考察を無料noteという形でまとめてみました。軽くまとめるつもりで結局かなり長くなってしまったのですが、無料のまま公開するので是非最後まで目を通して今後のトレードや分析に役立ててもらえればと思います。

それとnote自体は8/26から書き始めたのですが、書いているうちにBTCが動いてしまったため分析の時期が数日ズレていたりします。そのような場合は追記という形で修正を施したので少し分かりづらいですがよろしくお願いします。

主なトピックは

1 現在のBTC市況

2 LSチャート ー ポジションの分類、量の推定 など

3 BTC先物の影響 ー 過去の決済日との比較 など

4 過去チャートとの比較 ー 相似形の比較、漸次変化 など

5 以上を踏まえた今後の最適戦略

です。それでは始めましょう。


1 現在のBTC市況

まずは軽く現在のBTCの状況についておさらいです。

BTC/USD 1day

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日足レベルでは2月ごろから形成される巨大ウェッジ内での推移で一定の下落を継続中。現在はブルーの支持帯に突入し下げ止まっている状況です。

このゾーンは過去何度もBTCの底を形成してきた価格帯であり今回も同様にこの辺りで反転の可能性もありますが、ウェッジ推移の視点ではもう一段下落が想定され、判断に迷う場面です。

オシレーター系では長期的には下降継続ヒドゥンダイバージェンスが発生、中期的には方向感なしという状況ですね。その他移動平均や一目雲にも強い特徴は見受けられません。

BTC/USD 4hour

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4時間足レベルでは8/14を一旦の底として7月からの下落トレンドを脱し、一旦は上昇トレンドを形成中。とはいえ比較的レンジに近い程度の弱い上昇トレンドで、方向感の定まらない動きに市場参加者の迷いが見受けられます。

8/22にはBitMexのメンテナンスに合わせた仕掛けで一時6600付近のレンジ上限を突破しましたが、赤の長期レジスタンスラインと水平ラインの交点を抜けられずすぐに押し戻されました。

その後同じレジスタンスに2度目のチャレンジをして跳ね返されますが、6600付近をサポートにしながらライン付近に粘り強く止まっており、3度目のチャレンジに向かえるかどうかという状況です。

*8/30追記

noteを書いているうちにBTCが動いてしまい状況が更新されました。現在の市況についてはこちらのツイートなどを参照してください。

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以上のように単純な分析では少し方向感の掴みづらい相場ですが、ここで別の切り口として「LSチャート」に注目してみるとかなり興味深い考察が可能になります。


2 LSチャート

分かるとは思いますが「ロングポジションとショートポジションの変化を表したチャート」のことです。一般的な名前かは分かりませんがこのnoteではそう呼称して進めます。これはtradingviewのBTCUSDSHORTS BTCUSDLONGS Bitfinex BTC Shorts &BTC Longs(長い笑)というインジケーターで確認できる他、datamishというサイトでも見ることが出来ます。

ちなみにそれらで確認できるのはBitfinexのLS比のみなので全取引所のポジションがそれと同様ではないですが、ある程度は母集団に相関しているはずなので相対的な比較に関しては拡張して考えて問題ないと思います。

さてこのLSチャートですが、twitterなどでも話題になっている通り現在異常な動きをみせています。

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見ての通り極端なショートの増加ですね(赤がショートで緑がロング)。ショートがロングを上回ったのは4月上旬以来、今年に入ってからはたったの2回です。かつ増え方も急激で、8月の1ヶ月弱で17000btcから40000btcと2倍以上に増加しています。ここまで極端な動きをしている以上、この状況が何を意味しているのか考察をすることはチャートの分析において避けられません。

そもそも基本の話としてですが、ショートポジションが増加しているというのはそれだけ下目線の人が多いということですが、逆にその積み上がったショートは価格を上昇させる方向に働くことはおさえておいてください。

なぜなら既にショートを持っている人はポジションを解消するときに必ず買い戻しを行う必要があるからです。価格が上がれば損切りという形で買いを入れ上昇を加速させ、価格が下がれば利確という形で下落を抑制します。これは当然逆も同様で、ロングポジションが多ければそれは下への推進力になります。

実際に前回ショートが大幅に増加した4月上旬は、そのショートを燃料として大規模な上昇が起こりました。俗に言うショートカバーですね。

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ショートのロスカットが一気に連鎖することで急激なショートの減少とともに価格の暴騰が起きています。であれば今回も同じように大規模なショートカバーを期待できるか?という点が今回の本題になります。

まず、LSチャートについて考察する上で重要なのは主に3点、「時間的な変化」「ロングとショートの比」「どこでポジションが積まれたか」です。忘れがちなのが3点目ですが、今あるロングやショートがどの価格帯で積まれたものなのかは非常に重要な情報です。例えば「高い位置から長期で積まれていて含み益状態のショートはなかなか利確されず、短期的に突っ込まれて含み損状態のショートは早々に損切りされるはず」や「レンジで積まれたショートはレンジ上限ブレイクで損切りされることが多そう」といったように、ポジションの出口を予測するためには入り口を知ることが必要になるからです。

その上で直近の動きを見てみましょう。

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ショートの増加が始まった8月頭以降で、増加した範囲と対応する価格帯を黄色で示しました。ポイントは、8月中に増加したショートポジション約23000BTCのうち少なくとも14000BTCが現在の価格より低い位置でのポジション、つまり含み損になっているということです。(それ以前に建てられたポジションの影響は無視しています。)

これは少し違和感を感じる状況です。7000ドルより上でのショートならまだしも、6000-6500あたりのレンジで積まれたショートがまだ損切りされていないわけです。一般的なトレーダーの感覚でいえば6650あたりのレンジ上限を上抜けた時点で損切りというのが多数派のはずです。また、今の上げは判断の分かれるじわ上げですが、8/22の仕掛けはショートのロスカット連鎖を誘うのに十分な勢いの上昇だったにも関わらず、ショートの減少は限定的でした。

1つの理由として単純に積まれているショートがもっと長期目線でのポジションであるという可能性は考えられますが、それにしても今までと比較して極端すぎる動きでありそれだけでは説明が付かなそうです。

そこで最近よく言われているのが、これはファンドのヘッジショートなのではないかという可能性です。

ヘッジショートというのはその名の通りリスクヘッジのためのショートポジションのことで、今回であればビットコイン先物に対するリスクヘッジとして積まれているという可能性が考えられます。つまり、ファンドはBTC先物でロングポジションをとり、それに対する損失のリスクヘッジとして現物でショートを持つわけです。

この場合、ショートの目的はあくまでヘッジなので、先物のポジションの事情が変わらない限り多少の現物の上下で決済することはありません。また、当然ですがファンドは個人投資家に比べて遥かに潤沢な資金力を有しておりそうそうロスカットされるような維持率でポジションを持つことはあり得ないので、価格が上がっていくにも関わらずいつまでもショートが決済されないという事態が起こりうることになります。

以下はCMEとCBOEのBTC先物におけるジャンル別のポジション表です。(画像はReal-Time Research様のBTC先物レポートから引用させて頂きました。毎週BTCの先物ポジションをわかりやすくまとめて下さっているサイトです。)

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注目ポイントは赤で囲った部分のヘッジファンドのポジションの推移です。左がロングポジションの量、右がショートポジションの量、真ん中がロングの量とショートの量の差(ショート優勢でマイナス)になっています。

これを見ると8/7から現在にかけてヘッジファンドのポジションはどんどんロングが優勢になってきており、先物ロング現物ヘッジショートという仮説を裏付ける証拠の一つと言えそうです。ちなみにヘッジファンドのポジションがロング優勢になったのは4月以来で初のことらしく、この辺りの考察も次章で触れていきます。

このようにポジションの保有者がどういった市場参加者なのかを考えることで状況が分かりやすくなってきましたが、ヘッジファンドの他にもショートを大量に保有している可能性があるのが、ビットコインのマイナーたちです。

ご存知の通りBTCはマイニングによるトランザクションの承認に支えられていますが、現在マイニングの割合の多くを高機能なマシンを大量に揃えた大口のマイナーが担っているようです。彼らは電力を使用してマイニングの計算を行い報酬として一定のBTCを得ていますが、BTCの価格が下がれば電気代の方が高くなってしまい利益がマイナスになってしまうことがありえます。電気代などの諸条件によりますがBTC価格が7000以下では場合によっては損益分岐点を下回るマイナーが出始めると言われています。

また、マイナーはこれまでにマイニング報酬として受け取ったBTCのうち売却していない分の現物を相当量保有しているはずで、そういう意味でもマイナーはBTCの下落のダメージをダブルパンチで被ってしまう立場にあるわけです。BTC価格にそこまで大きく振り回されてしまうと、個人規模ならまだしも事業としてはやっていくことが難しくなります。

そのため、BTCが下落して7000付近を下回り損益分岐点に近づいてくると大手マイナーが収益の安定化のためにヘッジショートを保有してくるという可能性は大いにあり、実際のチャートでもこれを裏付ける傾向は確認できます。

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7000以下の価格帯である程度の期間推移する場合、毎回その期間中ショートポジションの量が増加していることが分かります。そもそも価格が下がるとそれに連れてショートが増える傾向はありますが、一定の価格帯での増加にはマイナーのヘッジショートが影響していると考えられます。

以上のように、現在積み上がっているショートには通常のショートの他にファンドとマイナーのヘッジショートという性質の異なるポジションが存在する可能性があることを示しましたが、ここからはこれらのポジションの内訳をある程度推測できないか考察してみたいと思います。

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まず、8月頭の最小量である17000btc以下は全てかなり長期のポジション、もしくは入れ替わりで常に存在する分であり短中期の動きに影響を及ぼさないとして捉えれば、短中期に影響してくるのはそれ以降蓄積した23000btcになります。

この中で比較的簡単に推測できるのが短期のショートポジションですね。短期のポジションであれば価格の上下に合わせて細かく決済されるため、上の画像のようにショートのチャートにサポートラインを引くことでそのラインより上の動きは短期的なポジションの増減として切り捨てて考えることができます。(市場参加者の間で短期のショートを持つ"傾向"がだんだん変化していくような状況ではこの限りではありませんが、一つのトレンドやレンジが継続している内はある程度一定を保つとして考えています。)

この仮説の妥当性は4月のショート増加時のチャートからも確かめられます。

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同じようにショートのチャートにサポートラインを引くと4/12のショートカバーでの上昇時に丁度ライン付近までショートが解消された形になっていますが、これはこの上昇で主に短期レベルのショートが解消されたためであり、ライン上の動きが短期ポジションによるものだという仮定に綺麗に一致しています。(そもそも急激なショートカバーは、損切りラインが集中しやすくレバレッジの高さによるロスカットも起こりやすい短期ポジションに対して発生する側面が強いです。)

さて8月の話題に戻ると、この短期ショートが絶対量で大体4000〜6000btcくらいです。ここでは中間をとって5000btcとしておきます。残りは23000-5000=18000btcですね。

この18000btcの内訳としては、先ほど考察したように「単純に中期レベルのショート」「ファンドのヘッジショート」「マイナーのヘッジショート」あたりが考えられます。これらを考察するために再度過去にショートが増加した時のチャートを見てみましょう。

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4月のショート増加時のチャートからマイナーによるヘッジショート量を推測してみます。仮に「マイナーは価格が7000付近を下回った段階でヘッジショートを積み上抜けにより解消している」という仮定を立てると、上の画像のように長期でのサポートラインと価格が7000より下の区間でのサポートラインを二本引けばその差分をマイナーによるヘッジショートとして見積もることができます。(この他にも増えた量を見るとか比率を比較とか色々考えたんですが一番シンプルかつ妥当そうだったのがこの方法でした。)

画像から分かる通り実際にこの差分は常に一定の値になっており、ある程度仮説の妥当性が示されていると考えられます。値としては約4000btc弱ですね。

最後にファンドのヘッジショートですが、今度は少し視点を変えてロングポジションの過去の推移から推定を試みてみたいと思います。

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参考になるのは5月6月あたりのチャートです。この時期はブルーゾーンで示したように明確な下落トレンドにも関わらずロングがショートに対してかなり多い状況が維持され続けており、ヘッジファンドの先物ショート現物ロングというポジションではと推察されていました。(ヘッジでロングを持つという戦略があり得るのか怪しいのでそこはあくまで仮説ですが。)実際にデータを遡ると、この期間のヘッジファンドの先物ショートポジションは下の画像のような推移でブルーゾーンとほぼ一致するような期間でショートが増加していたことが分かります。

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この前提のもとで、さっきと同様に2本のサポートラインを引いてその差分をヘッジファンドのロングの量として見積もります。量としては約5000btcです。(下のラインの引き方は色々可能性が考えられるかもしれませんが今回は5月頭の天井付近で積まれたロングポジションを重視する形で引きました。)

ちなみにロングチャートに対するサポートラインはショートの時と違い水平ラインになっていますが、これはロングの場合低レバ長期ポジションは現物で持てばいいことやショートよりヘッジで使われづらいことから、より短期での純粋なトレードの動きを反映しているために中長期のトレンドが発生しづらいと考えるとしっくりきます。逆に言えば、ロングの場合は中長期ポジションやマイナーの現物ヘッジが存在しづらいという前提がなければ今回のファンドのロング量の推定は成り立ちません。

さて、5月6月頃のヘッジファンドのロングの量を推定できたところで、これを利用して現在積まれているヘッジショート量を推定してみましょう。と言っても単純な比較で、5月6月のヘッジファンドの先物ショートポジションは平均12500btc程度、ロングは5000btc程度、現在の先物ロングポジションは11500btc程度なので、現在のヘッジショート量は5000×(11500/12500)=4600btc程度と推測されます。

以上で一通りの推定が終わりました。8月に積まれたショートポジション合計23000btcのうち、短期のポジションー5000btc    マイナーのポジションー4000btc    ファンドのポジションー4600btc    で、残りの9400btcが中期程度のポジションであると推測されます。

この推定は実際かなり大雑把なもので妥当性のさらなる検証が必要かもしれませんが、とりあえずこれをベースに考えると今後のLSチャートの動向がよりクリアに見えてくるはずです。例えばファンドやマイナーのポジションに変化がない状況で9000btc程度のショート量の減少があれば中期のショートポジションはおよそ解消されてショート燃料は尽きたと考えられますし、ファンドの先物ポジションの変化とともに4000btc程度の急な減少があればファンドがヘッジポジションを解消した可能性が高く、BTC価格が7000台後半あたりで安定するとともに4000btc程度の減少があればマイナーのポジション解消の可能性が高いです。

*8/29追記

BTC価格の変化とともにLSチャートにも変化が出ました。

画像14

グリーンの縦線で示した点で長期レジスタンスラインおよび6800付近のブルーのレジスタンスゾーンを大きい陽線で突破し、同時にショートが減少しました。この時の減少量①をブルーゾーン以下で積まれたショートのうちマイナーとファンドのヘッジショートを除いた分(普通の中期ショート)と仮定します。量は3000btcです。点線のトレンドラインより下なので短期ショートはゼロとして無視しています。

また、画像から分かるように(最低量をマークして以降積まれたショートの内)ブルーゾーンより上で積まれたものは②の部分で、量は6000btcです。時期と価格帯的にこれにはヘッジショートはほぼ含まれていないはずです。

両者を合わせると9000btcで、先ほど推定した中期ショート9400とおよそ一致し、推定の妥当性がある程度証明されたと考えられます。もっと大きくずれることも想定していたので嬉しいですね。

なお現在はそこから更に2000btcほど減少しておりこれを②で積まれた分の同値撤退と考えれば、もし7200付近を上抜けた際は更に3000btc程度のショートカバーは期待できる計算になります。


3 BTC先物

LSチャートの分析が長くなってしまいましたが、ここからは先ほども少し言及したBTC先物についてもう少し考察してみようと思います。

昨年末から開始したBTC先物ですが、ご存知のように先物取引にはポジションの決済期限が定められており、その決済日に向けてポジションを持った大口たちの思惑から相場に仕掛けが入ることが多いと言われています。

ちょうど次の先物決済日が8/31で今回もここに向けての仕掛けが予想されますが、はたしてそれがそのような動きになるのかを過去の決済日付近の動きと照らし合わせて分析してみたいと思います。

ちなみに先物期日と現物価格の関係性は既によく言及されているトピックであり、コイン東京様の記事「CMEビットコイン先物契約の期日は、ビットコイン価格に影響するのか」では

先物契約は、機関やトレーダーが将来の資産のパフォーマンスに賭ける取引です。統計によると、毎月の期日までの5日間にビットコインの価格はほぼ8%低下しています。この傾向はブルームバーグも報じています。米調査会社ファンドストラットのアナリストトーマス・リー氏は、「期日前の10日間で平均18%減少し、6日後には回復する傾向がある」と指摘しました。トレーダーが大量の現物のBTCを所有しながら先物でショート・ポジションを取る場合、期日が近づくと現物のBTCを大量に売却して価格を下げ、先物市場でのショート・ポジションの決済から「かなりの利益」を得られるという。(https://cointyo.jp/article/10004296より引用)

と述べられています。ただしこの期日前の下落というデータはBTC先物におけるポジションの変化を考慮しておらず、先物の決済日に向けて現物価格を誘導し利益を得ると考えた場合、先物で(特にヘッジファンドの)ロングとショートのどちらのポジションが優勢かを考慮した上で傾向を分析することが必要だと考えられます。以下の画像を見てみましょう。

画像15

画像のブルーの縦線がこれまでの先物の決済日です。BTC先物にはCMEとCBOEがありますが、次回の8/31はCMEの決済日なので今回はCMEのみを対象として分析しました。

3章でも参考にしたようにCFTCからは毎週金曜日にその週の火曜時点でのトレーダーのポジションデータが公開されますが、レッドとグリーンの縦線が直前のポジション公開日(分かる範囲で)になります。ヘッジファンドのポジションデータに注目して買いが優勢であればグリーン、売りが優勢であればレッドでマークし、特にポジションが大きい時は太線で示しました(noteの不具合で色と太さが少し変な風に表示されることがあるので注意してください...)。

ざっとみた限りでは確かに先ほどのトーマスリーの発言通り決済日前は価格は下落していることが多いですが、これはそもそもヘッジファンドの先物ポジションがショート優勢であることが多いことに起因している可能性があります。実際に唯一ロング優勢だった7月の期日前には一時的に下落しているものの、期日直前の強い上げで最終的にはポジション公開時よりは上の価格に持ち込んでいます。

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ただし必ずヘッジファンドのポジション通りに動くかというと注意が必要で、6月のように期日前の数日にある程度その方向に動いていた場合直前にある程度大きな戻しがくる場合もあります。(それでもポジション公開日の価格よりはポジションの方向に合わせて来ていますが。)

さて今回ですが、2章でも述べた通り8/21の時点でCMEの先物ではヘッジファンドのポジションはロングが過去最高に優勢な状況になっています。ただし注意して欲しいのは8/31の直前の8/28のポジションの公開は9/1に行われるため、参考にできるのは8/21の10日前のデータになる点です。しかしここで先に考察したファンドのヘッジショートポジションの推定を用いて、先ほどの考察通り現状解消されているショートがあくまで中期のショートポジションに過ぎないと考えれば、まだファンドは現物のヘッジショートともに先物のロングを保有している可能性が高いと考えられます。

ということは8/31の決済日に向けては上方向の仕掛けが期待できるという結論になるのですが、ここまでで既にかなり上げて来てしまっているのでこれ以上の仕掛けがこの後もあるかは少し判断に迷うところです...。(本当は8/26にnoteを書き始めて早めに公開するつもりだったのですが執筆が長引いているうちに上げてしまいました...。twitterでは軽く呟いているのでタイムリーな話はそちらをご参考ください。)

ということでここでは先物決済に向けたこれ以降の動きは判断不能という結論です、すみません。ただ個人的には大きな暴騰はしないものの、直前に軽い上げ仕掛けがあるのではないかと(確度は高くないですが)考えています。ちなみに期日の正確な締切時間はロンドン時間で8/31の16時なので日本時間(utc+9)だと8/31の24時のはずです。一応その直前にはトレードは十分注意が必要ですね。(追記にて時間修正しました。ご指摘くださってありがとうございます。)


4 過去チャートとの比較

次に恒例の過去チャートとの比較分析を行っていこうと思います。

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今回比較対象とするのは2月から続くウェッジ(あるいはディセンディングトライアングル)内の動きです。BTCは2月以来このウェッジ内で収束しつつ上昇トレンドと下降トレンドを繰り返してきた結果、上の画像のように3つの山状のチャートを形成しました。ここではそれぞれを山①、山②、山③と呼ぶことにします。

前回のnoteの内容にも関連しますがこの3つの山には(崩れつつあるものの)ある程度の共通性がありそれをベースに分析を進めていきますが、特に議論すべきポイントは現在既に山③が終了したかどうかという点になります。

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画像のようにそれぞれの山が下落の際に3段階の下落を経るとして(ABC波を使ったのは適当です)、8/14の時点で山③が既に完成しているとすればオレンジラインのような推移で捉えられますが、まだ山③が完成していない前提ではブルーラインのように再度の下落が想定されます。チャートパターンという意味ではオレンジの推移は調整波(B波)が時間、幅ともに小さすぎる印象を受けますが、同時にブルーの推移もこれ以上調整が長引いた場合逆に調整波が大きすぎる形になり現在は判断が難しい状況です。

別の視点でも分析してみましょう。

画像19

例えば山①と山②では下落の際は画像のように大きくウェッジを形成しながら下落を続けそのウェッジを上抜けることでトレンド転換することが多いですが、山③もこれを踏襲するとすれば現在既にウェッジ形成後上抜けを完了しておりトレンド転換の可能性が高いと考えられます。逆にここからウェッジ形成となると形として大きすぎて流石に不自然です。(これは先ほどの調整波の大きさの話とおよそ同様の議論ですが。)

また、時間軸的な分析も可能です。前回のnoteで言及しましたが、山①と山②の上昇トレンドと下落トレンドの切り替えは毎回約1ヶ月のスパンで発生していました。twitterでは6日教などと言われていましたね。しかしそのように騒がれて多数に意識されたせいもあってか、山②の下落においては1ヶ月のスパンは適用されなくなりました。

画像20

しかし上の画像を見ると分かりますが、実は山③の上昇時には再度1ヶ月間のトレンド周期が発生しています。そもそも6日教と呼ばれてはいましたがその本質は「毎月6日のトレンド転換」ではなく「1ヶ月周期でのトレンド転換」であり、上昇時のみその性質が保持されている可能性はあります。とすると、次のトレンド転換点は8/14の約1ヶ月後である9/14付近になる可能性が示唆されますね。

画像21

ただ、例えば山②における下落の周期が山③でも繰り返されるとすれば9/12あたりまでの下落トレンド継続といった可能性も考えられ、時間的な比較のみで一概に判断するのは難しいかもしれません。

最後にトレンドに基づくフィボナッチラインによる分析を行ってみましょう。

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画像のようにそれぞれの山の上昇幅に対してトレンドに基づくフィボナッチ拡張を適用すると、山①の上昇に対して山②の上昇はその0.618倍、山②の上昇に対して山③の上昇はその0.786倍であることが分かります。下落幅にも同じようにフィボナッチ拡張を適用してみます。

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山①の下落に対して山②の下落はその0.618倍、仮に8/14の底時点で山③が完成しているとすると山②の下落に対して山③の下落はその0.786倍です。

つまり山が形成されていくに連れて上下ともに縮小はしていくものの、上昇幅の縮小率はだんだん減少しており逆に下落幅の縮小率はだんだん増加していることになります。これは上下に動きながら長期的に下落しつつもその勢いが時間とともに弱まってきていることを表しています。

まあこの考察は山③が既に完成された前提の元での考察なのでその真偽の判定に寄与することはありませんが、とはいえ偶然とは考えづらい精度でフィボナッチラインが適用できることは前提の成立可能性をある程度高めていると捉えることができるように思えます。また、後で述べますがこの考察をさらにこれから形成される山④に対して応用すれば今後の値動きの分析に活用することができるはずです。

と以上のようにウェッジ(orディセトラ)内の3つの山はある程度の共通性、相似性を持つという条件下で分析を行いましたが、そもそもこのウェッジがだんだん収縮してきている以上遠からずそれはブレイクされる(つまり共通性が崩れる)はずで、共通性が保たれる前提での考察に頼りすぎるのは危険であることは注意してください。またウェッジブレイクを含めた長期の分析に関してはより長いスパンでの周期性の考察などと統合しつつ進めていますが、今回のnoteでは中短期での分析と示唆に留めたいと思います。


5 以上を踏まえた今後の最適戦略

以上1〜4章での考察を踏まえて、今後の中期レベルでの最適な戦略をできる範囲で構築してみたいと思います。下の画像がベースになります。

画像26

まず現状は赤のチャネルに沿って上昇トレンドを形成しており、基本的には4章での仮定に則って9/14あたり(右のブルーの縦線)まではこのトレンドを前提とした押し目拾いが主戦略です。2章で分析した通りショートの蓄積で下値が固いこともこの戦略の優位性を高める要因となります。ただし短期的には急角度のウェッジを形成しており、7200付近を上抜けない限りここからのロングは危険区域なので注意してください。また、過去の傾向から言ってこのチャネル自体が最後まで守られる可能性は低いので安易なライントレードも避けるべきです。

上昇トレンドの終点ですが、山③の上昇に対する0.618ラインおよび長期レジスタンスの交点が丁度9/14に位置し、暫定のターゲットとしては黄色ゾーンあたりが考えられます。逆にこのゾーンを上抜けることができれば勢いはかなり強く、次のターゲットは点線のレジスタンスあたりになりそうです。

逆に下へ落ちてきた場合はチャネル下ラインおよび6800水平ライン付近が一旦のサポートで押し目拾いのポイントですが、ここを下抜けた場合は上昇トレンドから目線の転換が必要になって来ます。その下ではレッドの長期レジスタンスでレジサポ転換の確認の可能性はありつつも、ズルズル落ちていく危険性がありノーポジもしくはショート優位になって来るでしょう。また、現在LS比でショートが優勢なことは述べた通りですが、もしショートが大量に解消されるもしくはロングが大量に積まれるなどしてこれが逆転した場合これまでの揺り戻しが来る可能性もあるので注意が必要です。LS比の判断においては2章での考察が参考になると思います。

また、3章で述べた通り8/31の先物決済日(左のブルーの縦線)前には上下に多少の仕掛けが入る可能性があり、ポジションを持つ際は注意が必要です。

画像27

一番ありそうな動きとしてはこのような形でしょうか。とはいえこれはあくまで参考程度に引いてみただけで、動きを正確に予測しようとすること自体の意義は薄いです。あくまで先ほど述べたようなパターンに基づいた戦略構築が重要と考えてください。また、当然先の予想ほど精度が低く時期が近づくほど解像度は増していくので、今後の動きに対する詳しい分析についてはtwitterの方を見てもらえればと思います。

画像28

ただのアピールで申し訳ないのですが短期的な動きはかなりいい精度が出ていると思います。(S決済後相場を見ておらずウェッジ抜けで再度inできなかったのは反省点)

以上で今回のnoteを終わります。文章量から想定されるよりはるかに執筆時間がかかりましたがなんとか頑張って仕上げました...。疲れた...。このnoteの分析が皆さんのトレードの参考になれば幸いです。あとせっかく頑張って書いたので是非twitterなどで拡散いただけると非常に嬉しいですm(__)m。また、考察が不適当と思われる点などがもしありましたら意見や指摘などtwitterの方によろしくお願い致します。

*8/30追記

非常に多くの方々に読んで頂けているようでありがとうございます。少し書き忘れていた点に気づいたのとBTCが動きを見せて状況が更新されたので、時間がないのですが軽めに追記をしたいと思います。

画像29

note公開時以降の動きとしてはウェッジ抜け下落からの6800サポートにて反発という推移で、概ね想定の通りです。ただしLS比に大きな動きがあり、ショートがさらに激減することで再度ロング量を下回る水準まで減少してきました。量としては11000btc程度の減少ですね。ここまで読んでくださった方はもう予想がつくと思いますが、この減少したショートポジションの内訳をある程度推定できないか試みてみたいと思います。特にポイントは「ヘッジファンドやマイナーがヘッジショートのポジションを解消してきたか」という点になります。

結論から言うと、ポジションの「減り方」に着目することで推定が可能になる可能性があります。つまり、2章で数種類に分類したポジションホルダーたちはどんな場面、状況においてそのポジションを解消するかという点にそれぞれ特徴があるんですね。

画像で示すのは省きますが、過去のLSチャートを分析するとそれが見えてきます。まず「通常のトレーダーによる中期ショート」に関しては価格の上昇とともに解消されることが多いです。これは個人トレーダーの場合、あまり優位性のない位置での突っ込みショートなどが価格の上昇によって損切り、あるいはロスカットされていくことが多い(もちろんそれだけではありませんが全体的な傾向として多い)という事実を示していると考えられます。また、ヘッジファンドのポジションは短期的な値動きにおいては価格がポジションの方向に動いた際に解消されることが多そうです。ショートなら下落とともに、ロングなら上昇とともにということですね。中期的な動きに関しては(そもそも先物のヘッジポジションに過ぎない以上)別にポジションの方向への動きで決済されている印象はないのですが、短期的にはきちんとポジションの方向を狙って決済してきているようです。これもヘッジファンドは当然プロとして利益を最大化するような動きをしているという意味で、演繹的な推測と一致します(あるいはファンドが一気にポジションを解消するために値動きが生じているという可能性もありますが)。また、マイナーの場合はマイニングの損益分岐点を下回った場合の現物ヘッジという性質から、一定の価格帯より上で安定した時にポジションを解消すると考えられます。

以上のようなそれぞれのポジションホルダーのポジションの解消の仕方を前提にして今回のショートポジションの減少を観察すると、まず「価格の下落とともに解消」という条件は満たしており、ファンドのヘッジポジションの解消が含まれている可能性があります。また、マイナーのヘッジポジションに関しては微妙なところですが、一応6800より上で安定した動きではあるのでポジションのうち一部はだんだん解消されだしているのではないかと思います。通常の中期ショートに関しては当然大きく解消されていて、6800を上抜けて一気に解消された分が相当すると考えられます。一応量を推定すると、結論だけ述べますが価格の上昇とともに解消されたのが約6000btc、価格の下落とともに解消されたのが約5000btcで、それぞれが中期ポジション、ファンドのポジションにマイナーのポジションが多少加わったものと考えられます。(ただし下落とともに解消される中期ショートも存在するはずなので注意)

最初の推定では中期ポジション9000btc、ファンドのポジション4600btc、マイナーのポジション4000btcという結果だったのを踏まえると中期のポジションは多少残りつつ(おそらく7200よりも上で積まれた分)も、ファンドのポジションに関してはおよそ解消されていると考えられそうです。ヘッジファンドが先物の決済に向けて動いてきているということですね。とはいえ先物ロングとヘッジショートの解消に時間差があったとしても特に問題はない以上、これで単純に先物のロングももう解消されたと考えられるかというと微妙なところです。9/1にCFTCのレポートが発表されれば状況が分かりやすくはなりますが、8/31(今日)の24時の期限までは上にも下にも仕掛けが想定されあまりポジションは持ちたくないような状況です。(ただ少なくともヘッジショートが解消されていることを事実と想定すると、あとは先物のロングポジションがまだ残っていた場合の買い仕掛けの方が起きる可能性としては高そうとも考えられますが)。

ということで5章での戦略通り6800でロングを拾っている場合、慎重にトレードするのであれば現段階で利確というのもありですし、そうでなければ少なくとも今日の24時付近までは常に相場に張り付ける状態でいることが必要だと思います。


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