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2023年 メタルコアベストアルバム20選(後編)

 どうもです。

 2023年の総まとめ的な記事、第2弾。
最終的に「2023年 ベスト音楽総まとめ」にも反映される「2023年 メタルコアベストアルバム20選」です。前編は以下になりますので、まずこちらから確認お願いします。

 改めて選定基準も記載しておくと以下の通り。

・(当たり前ですが)今年リリースされた作品
・毎週書いていた記事で紹介済みのアルバム・EPから選出
・いわゆるハズレ曲が1曲もない
・収録曲の中で聴く回数に偏りが少ない
・リリース月だけでなく年間通して聴いていた
・繰り返し聴くことが多かった
※ここでの”メタルコア”はタイトル付けの為で広義の方と捉えてください(細かいジャンルはそれぞれ記載)

 ということで早速、完全主観で選び尽くした20枚から、後編分の10枚を紹介していきます。


#11『La Fin Du Jour』/ In Denial

【5/6 リリース】【メタルコア】【無所属】

 東京を拠点に活動。2021年ギターのRiku IshidaとボーカルのKent Sasakiにより結成されたプロジェクトでしたが、今年Gt. Ba. Dr. の新メンバー3人を率いた新体制でデビューEPをリリース。全6曲。
 このデビューEPで彼らを知ったんですが、むっちゃ良いな!と衝撃を受けた記憶。アンビエントなトーンでサウンド自体は地鳴り級の重量感がありながら、プログレッシヴなフレーズや独創的なメロディーラインを始め、仕上がりとしては聴き易いのが非常にツボ。どこを切り取っても硬派で洗練されており、ギターソロなど上品な部分も時折垣間見えて、メロディックハードコアにも通ずる叙情的なパートも沁みます。6曲通しての構成もスマートな綺麗さで満足感のある1枚でした。セルフタイトル曲Tr.6「In Denial」が特に好きなんですが、文字通りバンドの名詞代わりになる魅力が詰まった1曲かと思います。メリハリのあるドラマティックな展開が胸アツ。今年は日程が合わずライブ見れなかったので、来年こそは見たいなと思います。

★特にオススメするTrack
 ⇒Tr.1「Deliverance」, Tr.2「Astral Sphere」, Tr.6「In Denial」


#12『Blossom』/ Our Divide

【5/29 リリース】【オルタナティブ・メタルコア【無所属】

 メキシコシティを拠点に2022年から活動開始したばかりの若手。記念すべき1st EPをリリース。昨年リリースされた3曲に新規曲3曲を加えた全6曲。
 今後に期待しかない名盤でした。ハードコア由来の疾走感あるアグレッシブさ、鋭利なメタルリフの完璧にも思える配置とブレイクダウン、昨今センスが問われるトラップメタル、美麗な装飾を施すシンセ、激しいだけじゃない予測不可能かつスケール感ある楽曲展開、等々かなり幅広い要素が華麗に組み合わせられています。中でも特徴的だったのは、メキシコの音楽性が自然とベースにある影響かストリングスの壮大さ、メロディにラテン系特有の哀愁感がしっかりと漂っている事でした。他にはない魅力だなと思います。ギターソロを含めテクニカルな面での実力も窺えますし、展開美にしても若手らしからぬセンスを感じるので、是非デカイバンドになって欲しいです。

★特にオススメするTrack
 ⇒Tr.2「Confessions」, Tr.3「Overseas」, Tr.4「Indifferent」


#13『Transparency』/ Revision The Dream

【7/28 リリース】【プログレッシヴ・メタルコア【Yam Levi Productions】

 イスラエルはテルアビブ出身。全俺が待望した1stフルアルバム。まとまった音源は2020年リリースのEP『Desidereta』ぶりだったので、嬉しい限り。インスト含めた全12曲。
 お前がNo.1だ。今年最も死ぬほど聴いたアルバムで、それ程のガチ名盤。合計約42分のボリュームもさることながら、1曲1曲のクオリティはこれまで通り。浮遊感を煽るキラキラシンセと、ツインリードを要とした美しいメロディとDjnetに刻まれていく鋭いリフ、そして予測不可能かつドラマティックな展開美。どれも独自の魅力に溢れてました。ジャズ由来な気もするリズムチェンジで急変する展開美が本当に飽きないし楽しいですね。シャウトとクリーンのコントラストを活かしたボーカルワークも格段にレベルアップしてどの掛け合いも美しく心地良いモノでした。壮大かつ泣きを煽るエモーショナルな展開も得意としているので本当に推せます。モダンメタルコア的側面がありつつ初期ERRA好きには堪らないツボも結構多いので、確立したこのスタイルを一生貫いて欲しいです。

★特にオススメするTrack
 ⇒Tr.2「Waves」, Tr.4「Insomnia」, Tr.5「Kingdom」, Tr.9「Farewell」, Tr.11「Heart」


#14『Homesick EP』/ Traveller

【8/18 リリース】【プログレッシヴ・メタルコア【無所属】

 ドイツはカシュトロップ・ラウセル出身。昨年10月から立て続けにリリースしてきたシングル含む全7曲を収録したニューEP。2021年のEP『Distance Calls』から約2年ぶり。
 前作は2021年ベストアルバムにも選出した大好きなバンド。そこから休む事なくリリースされた先行シングルの時点で名曲量産マシンと化していないか…と察してはいましたが、その期待に応えてくれた堂々たる名盤。どこか暗鬱で幻想的な世界観を完全に確立させており、センチメンタルなメロディと浮遊感溢れるトラックをメインに据えた1枚でした。煌びやかでアンビエントな要素はInvent Animate系の影響を感じるんですが、そこから更に心の内の冷たさを表現した様なサウンドクオリティが彼らの魅力だなと思います。温度感がグッド。複雑で勢いのあるDjentリフがひたすら強烈な上に、ボーカルのユニゾンも最高に気持ちよく、ブレイクダウンもしっかりヘヴィ。タッピングフレーズが珠玉の美しさなので是非とも堪能して欲しいです。

★特にオススメするTrack
 ⇒Tr.1「Homesick」, Tr.2「Imprint」, Tr.6「Burdens」, Tr.7「Lethargy」


#15『Fatalism』/ Polaris

【9/1 リリース】【メタルコア】【SHARPTONE Records】

 オーストラリア出身。通算3枚目となるアルバムで全11曲。2nd『The Death of Me』からは実に3年ぶり。今年の6月27日にリード・ギタリストRyan Siewが26歳という若さでこの世を去ったのは非常に哀しいニュースで、Tr.4「Overflow」のMVも彼が出演する最後の映像作品となりました。
 2019年に来日公演で見たことがある位には好きなバンドなので、向き合うのに少し時間もかかりましたが、しっかり聴き遂げました。記念碑的な作品になった文脈は勿論、曲作りのアプローチも進化し新たなPolarisを示して魅せた素晴らしい1枚です。Tr.1「Harbinger」のイントロから解る通り、前作より壮大なムードやグルーヴを重視した曲展開で、悲痛に力強く叫ばれる生々しい感情の重さと、美しくキャッチーなメロディのコントラストが絶え間なく襲ってきます。エモーショナルな雰囲気の曲も多く、Tr.5「With Regards」やTr.7「The Crossfire」のサビメロ特に最高でした。また、彼らの武器であるリズム豊かでエネルギッシュなメタルコアリフは更に磨かれ、ブレイクダウンも激しく、Tr.11「All In Vain」は強烈。アルバムを締めくくる曲として申し分ない最強クオリティで収録曲の中でも最も好きです。改めてリードギターRyanのご冥福をお祈りいたします。素晴らしい作品に感謝。

★特にオススメするTrack
 ⇒Tr.3「Parasites」, Tr.4「Overflow」、Tr.5「With Regards」、Tr.7「The Crossfire」、Tr.11「All In Vain」


#16『Mirage』/ Mirabi Frame

【10/5 リリース】【ポストハードコア】【Chaotic Noiz】

 インドネシア出身のVo. 春来と、ロシア出身のGt. Igor Serokvasha(VALIANT HEARTS)によるポストハードコアプロジェクト、待望のデビューEPをリリース。
 今年デビューシングルがリリースされた時から注目株だった激エモプロジェクト。セカイ系エモーショナルの極致に達した唯一のバンドかもしれないですね、視聴体験を通してセカイ系ヒロインがきっと目に浮かぶ事でしょう。多彩で浮遊感あるサウンド、繊細で情感豊かなメロディの数々、どこを切り取っても叙情的であり神秘的な音楽性に満ちあふれています。Vo. 春来の今にも消えてしまいそうな…宙に漂っているような優しく儚い歌声も筆舌に尽くし難い程に美しく、胸を締め付けられるような想いに駆られるはず。全曲良いんですが、新規曲となったTr.5「Lilium」は特にヤバいです。イントロからクライマックスを告げる様な緊張感が漂い、約5分に渡って紡がれる壮大でドラマティックな展開に思わず天を仰いでしまいましたね(合掌)。

★特にオススメするTrack
 ⇒全部!!!


#17『Darker Colors』/ What Lies Below

【10/13 リリース】【プログレッシヴ・メタルコア【無所属】

 アメリカペンシルバニア州ハリスバーグ出身。昨年からリリースしてきたシングルを含む全6曲を収録したニューEP。前作『Destinations』からは約2年ぶり。
 こちらも今年の要注目バンド。スケール感のある幻想的な雰囲気を常に漂わせるプログレッシヴ・メタルコアスタイルで、ダイナミックなパートとメロディアスなパートに其々重きを置いたメリハリある展開で浮遊感をも演出しているのが本当に魅力的。併せて、迫力あるスクリームとエモーショナルなクリーンとの交錯具合も当然の様に美しいです。手数の多いカオティックなドラミングやテクニカルなギターリフ、破壊的なブレイクダウンも目白押しで、サビ裏で割とピロピロしがちなのも最高に好き。単体の完成度だとTr.3「Lunarhaze」が頭一つ抜けている印象なんですが、Tr.5「Aperture」⇒Tr.6「Misguided Light」が壮大なエンディング曲となっているので、アルバム構成も気に入っています。

★特にオススメするTrack
 ⇒Tr.3「Lunarhaze」, Tr.5「Aperture」, Tr.6「Misguided Light」


#18『SUPERBLOOM』/ Silent Planet

【11/3 リリース】【プログレッシヴ・メタルコア【Solid State Records】

 アメリカはカリフォルニア州ロサンゼルス出身。通算5枚目となるアルバムで全12曲。4thアルバム『Iridescent』からは約2年ぶり。
 常人とはかけ離れている様で密接しているかもしれないと錯覚させる不思議な魅力に溢れた1枚。ツアー中に遭遇してしまった事故によってVo. Garrettに引き起こされた臨死体験が今作の根底にあるそう。彼の臨死体験がそのまま超常現象に対する好奇心の引き金となり、地球外探査、地球外生命体との遭遇をアルバムコンセプトへと結び付けました。Tr.1のインストから既に不気味で幽玄的なSF世界観が演出され没入感が物凄く、Tr.8「Anunnaki」も正にシュメール神話にある巨人の神々アヌンナキからインスピレーションを受けて制作されたの事。全体的にもスペーシーでアトモスフェリックなサウンドが中心で、興味を惹き立てる魅惑的な憂いを帯びたメロディが印象的でした。相変わらず、緩急を大きく付けた心地良い浮遊感や、逆に破壊的でカオスなブレイクダウンも堪らないですね。

★特にオススメするTrack
 ⇒Tr.2「Offworlder」, Tr.6「Antimatter」, Tr.8「Anunnaki」, Tr.10「Nexus」


#19『...And Everything In Between』/ Unprocessed

【12/1 リリース】【プログレッシヴ・メタル/Djent】【Spv Recordings】

 ドイツはヴィースバーデン出身。通算4枚目となるアルバムで、先行リリースされた「Thrash」など3曲を含む全9曲。前作『Gold』からは1年と4ヶ月ぶりとかなり早いペースでした。
 衝撃を受けたTr.3「Thrash」での期待に確かに応えてくれた名盤です。前作『Gold』で磨いたオリエンタルなメロディを引き継ぎつつ、テクニカルデスの獰猛さやスラッシュメタルの過激さを取り入れたアプローチで、プログレッシヴ・メタルをより骨太でコアな音楽へと深める事に成功。独特のスタイリッシュなサウンドが織り成す超絶技巧の数々は健在で、エキセントリックでカオスなリズムを刻みながらも、グルーヴに満ちているのは流石だなと感心するばかりでした。アンビエント系のシンセによる装飾も時折響き、より雰囲気をダークでヘヴィに印象付けてくれてます。Polyphiaの天才ギタリスト. Tim HensonとScott LePageと極上のメロディを奏でてくれたTr.5「Die On The Cross Of The Martyr」、徐々にブルータルでアタック感の強いサウンドが襲い掛かってくる緊張感漂う展開美が圧巻のTr.7「Abysm」、前へ前へと猛進していくパワーと美しき狂気に溢れたTr.9「Purgatory」など、全9曲とは思えない情報量と満足感を受け取って欲しいです。

★特にオススメするTrack
 ⇒Tr.2「Lore」, Tr.3「Thrash」, Tr.5「Die On The Cross Of The Martyr」, Tr.7「Abysm」, Tr.9「Purgatory」


#20『La trilogie』/ Frontières

【12/1 リリース】【メタルコア【無所属】

 カナダはケベック州出身。記念すべきデビューアルバム。今年3月からリリースされていた3部作目EPが収録曲の殆どを占めているため、新規曲は3曲のみ(うちインスト1曲)なんですが、全13曲とボリュームは充分。
 リリース曲を再構築する昨今流行りのスタイルなので新鮮さは薄かったものの、デビューアルバムとしての完成度は文句のないモノだったので選出。重厚でまとまりのある音色を軸にしたグルーヴ感にエレクトロコアやプログレッシヴ・メタルコア、ニューメタルコアなど様々なアプローチを加えていくモダンスタイルに仕上がっています。近未来的サウンドとパワフルでメリハリのある展開、耳馴染みの良いキャッチーで綺麗なメロディが特に魅力的ですね。ブレイクダウンも強烈破滅案件なので必聴。確かに似たバンドは多いかもしれないんですが、迫りくる音圧と共にここまでアグレッシブに振り切ったスタイル、加えてハイ気味な絶叫とタフなローを器用に使い分けるボーカルの存在感は強みだなと思います。今後にも期待が高まります。

★特にオススメするTrack
 ⇒Tr.3「Je me souviens」、Tr.4「Au revoir」、Tr.11「Nightmares」、Tr.12「Menace」


#総評

 今年の総評としては、キャリアの長い好きなバンドが期待に応えてくれた事と、今年も新しい出逢いがあった事、この2つくらいですかね。特に後者は日々digのペースを落とす事なく食らいついて、毎週に渡って新曲感想記事を更新した成果かもしれません。一方で、ちょっと残念だったのは、国内で好みのアルバムが少なかった事。昨年が豊作だったのは云え5枚無かったですからね…。来年に期待したいと思います。
 作品以外だと、コ〇ナも本格的に明けて来日公演ラッシュだったのが本当に嬉しかったです。Phinehas、Born of Osiris、Within Destruction、Alpha Wolf、Bring Me the Horizon、I Prevail…。どれも感謝感激でした。来年も既に何バンドか決まっていますから、楽しみで仕方ないです。

 とゆーことで、ここまでお読みくださってありがとうございました。そして、この記事を書くことができた事にも感謝。バンドが素晴らしい作品をリリースしてくれたのもそうですし、これまでの僕の音楽記事を読んでくれる方の支えが本当に励みになっています。今後とも楽しい音楽ライフを!来年もよろしくお願いいたします。

 ではまた!

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