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インクルーシブな未踏について記録を残そう。(高校生編&特性編)

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の2023年度未踏IT人材発掘・育成事業に採択された加藤路瑛といいます。

未踏って何?って場合は↓

未踏クリエイターのすごい人の話や面白い技術の話は他のクリエイターさんの発信を探して読んだほうが参考になると思います。ですので、ここでは私にしか書けなそうなことを記録しておこうと思います。

それは
①「高校生(未成年)」で参加した私の視点
②障害や思想など何か配慮や支援が必要な場合、未踏に参加できるのか?

という点です。

結論から言うと、高校生であろうが、何か病気や障害や特性があろうが、国籍や宗教も全く問題ないです。何か不安に思うことがあっても基本、大丈夫だと思います。だから、まずは、未踏クリエイターに採択されることに集中して、悩んだり相談するのは、採択されたあとで問題ないです。

高校生編と特性編、2本分けたかったのですが、分けると2本目を永遠に出さない気がするのでまとめた投稿になります。なので長くなりました。

高校生(未成年)編

未踏ITの応募条件が「独自性・革新性があり、将来社会的インパクトを与えイノベーションを創出する可能性を秘めたテーマを実現しようとしている若い逸材(4月1日時点で25歳未満の方)」となっています。

年齢制限は?

25歳なので高校生もOKだろう?と思うのですが、気になるのが未踏ジュニアの存在。未踏ジュニアはU17なのです。17歳以下は未踏ジュニアにエントリーすべきなのか?

ということで、エントリー前に事務局に確認しました。「25歳未満なら何歳でもOK」のようです。条件的には10歳でも15歳でも対象です。(※ただし、後述しますが、中高生では難しい部分もあります)

契約は?

未成年は保護者名での契約になります。契約やお金の申請などの書類にはサインが必要になりますが、これが全て親になります。(未踏クリエイターに採択される方々なら問題ないと思いますが、親に電子署名(手書き)をしてもらうのも、親がパソコンが苦手なら一苦労だったりますw)

作業時間

未踏は委託事業として1時間1900円の作業料が出ます。ただし、学校の休み時間に作業するというのは認められないので、高校に通学している人は放課後や休みの日が作業時間になります。(私のように通信制高校に行ってる人間は時間の融通がきくので楽でした)

他のクリエイターとの年齢差は?

みなさん大学生・大学院生です。17歳の私とは5,6歳違います。が、特に年齢で仲間に入れてもらえないというようなことはありませんでした。

しかし、クリエイター同士で開発合宿をしたり、飲み会を開催したりしていましたが、これは参加できませんでした。ただし、これは高校生というより私の性格や特性の問題です。コミュ力高く、どこでもいきます!という高校生は問題ないと思います。そして、参加しないからと言って、距離を感じるような経験も特になかったです。

ちょっと気になったこと

私は感覚過敏が強く、食べ物のニオイがある場所が苦手なため、はじめから会食や打ち上げは参加を辞退していました。なので問題はなかったのですが、会食や打ち上げの場はお酒が出ているので、少し気になりました。

私は12歳で起業して以来、大人社会に早く出てしまったのですが、一緒にいる方にとっても私にとってもリスクになる場面を作らないようにしています。それは未成年の私が飲んでいなくてもお酒と一緒に写真に残らないようにしています。

私の担当PMは東京大学・教授の稲見先生ですが、仮に、お酒を手にした稲見先生と私が並んだ写真はNGです。リスクマネイジメントとして絶対NGです。未踏のPMは大学の先生や上場企業の社長など地位のある方々なので、その方々がお酒のある場に未成年といる写真が残るのは、私としてはNGなのです。

真面目か!と言われるかもしれませんが、未成年から活動しているので「密室で成人と2人で会う」「お酒の場」「未成年条例に定められた夜間時間での外での活動」は回避しているので、未踏事務局さんは未成年クリエイターがいる時は気にした方がいいかもしれません。

本当に困ったこと

基本的には高校生で困ることなどいっさいありません。開発してプロダクトを生み出せれば年齢は関係ないです。なので高校生も気軽にエントリー!と思っていたのですが、まさか最後に、「無理!」と思う出来事があるとは想像もしていませんでした。

それは「成果報告書」なるものです。20ページは書く必要があるもので、開発内容や、課題や展望などを書いていきます。これがですね、学術論文などをまともに書いたことがない人間にはハードルが高い!報告書の書き方のところにも、技術論文を書いたことがない人はまず本を読め!となってました・・・

しかしですね、読んでる暇はないのです。未踏の偉人の先輩方が公開してくださってる成果報告書を見ながら、見よう見まねで文章を書く。

ありがたいことに、今年はChatGTP様がいらっしゃいます。何を開発したかChatGTP様にお伝えしてから文章案を出してもらいますが、もう正しいのか正しくないのかも分からなくなっていく・・・脳みそが沸騰というか狂いましたw未踏期間で一番苦しい作業でした。

そして頑張って事務局に初稿を出したら、「日本語がめちゃくちゃです」とダメ出しをされる・・・私、これでも、本を3冊出版した高校生なのです。でもだめですか?本当にだめですか?

指摘されたことは、主語がめちゃくちゃであること、目的語が抜けていることでした。隠れ主語は「本プロジェクトは」なのです。動詞は「実行した」「実装した」「選択した」なのです。この辺の主体のブレはAIを頼った弊害かもしれませんが、確かに私の視点が、ユーザーになったり、正体不明の第3者視点になって書いた部分はあったと思います。

ということで、成果報告書は本当に難しいです。AIがあるとしても論文を書きなれていないと厳しいと思いました。この部分は覚悟しておいたほうがいいかもしれない。10歳や15歳でこの作業ができるかというと、できなくはないですが、採択基準には開発だでなく、発表や報告書含めてのやり切る力は見られる可能性はあります。

エントリー避けた方がいい人

それは圧倒的に高校2年生です!私が2年でエントリーしました。高校2年でエントリーしたら、採択期間は高校3年生です。受験生です。一般受験、特に国立狙っているとかなり無理です。

成果報告会のあった2月中旬は私立大学の試験期間でしたし、成果報告書を必死に書いてる時、国立の試験でした。この両立は絶対に無理。(稀な天才はいるとは思う)

だから高校2年生でエントリーする人は注意してください。推薦や総合入試でサクッと11月・12月に入試を終わらせると決めている人ならOKかと思います。

私は12月に試験を終わらせた人間ですが、面接日の前日も普通にPM会議に出てましたw 平常運転できる人でないと、受験と未踏の両立は厳しい気はします。(さらに通学していたら、もうあなたは天才。スーパークリエイターです!)

特性編

ここでは、障害や思想など何か配慮や支援が必要な場合、未踏に参加できるのか?という点について説明します。というより、感覚過敏が強い私が、どのような配慮を受けたかを紹介します。

それを見れば、未踏の深さを感じてもらえると思う。

宿泊だって?ブースト会議編

最初に困ったのは「ブースト会議」と呼ばれる最初の会議でした。2日間の合宿型です。もう、ビビりました。

まずは食事。1日目の夕食と夜のパーティ、2日目の朝と昼。

ニオイがだめなのでみなさんと一緒の空間で食べるのはつらい・・・
そして出される食事は味覚過敏で食べられない・・・

未踏に相談する。「食事の用意は不要。食事の時間帯は外にいれないか?」と。

未踏事務局からの回答がすごかったです。

・食事なしOK
・その間の待機場所も提案
・2日目はホテルをチェックアウト済みだが、体調不良の時に休めるように部屋をそのまま使えるようにホテルと交渉
・部屋も静かなほうがいいと判断し、別の階の角部屋を確保。

ここまで準備していただいたのですが・・・・実は直前に不安になり、宿泊をなしにしてもらって、自宅にもどり、2日目の早朝にまた会場に向かいました。(事務局のみなさま、本当にご迷惑をおかけました)

心残りは、1日目の夜の会です。こういう場は仲良くなれる可能性が高い場所です。そこに参加しないとううのはコミュニティの拒絶のような感じもして罪悪感というか、やはり、このような場に参加できない自分の特性をだめで弱いものと認識してしまう瞬間でもありました。(でも、高校生編で書きましたが、お酒のある場は避けているので、どちらにしろ参加しない選択をすると思います)

2度目の合宿は前例があるので余裕

2度目の合宿は11月にある8合目会議です。ブースト会議で把握できていたので、事務局には「1日目参加して発表、2日目オンライン参加、宿泊なし」でお願いしました。

初回のような何もわからなくて不安という状態ではなかったので、安心して伝えることができました。

PM会議

未踏は月1回PMとの進捗会議が開催されます。1回目はブースト会議の前に、稲見先生の研究室で開催されました。


以降はオンラインのみだったり、ハイブリット開催だったりしますが、稲見先生からは「加藤さんは基本オンラインでいいと思っているから無理しないように」と言っていただけたおかげで、本当に以後、全てオンライン参加させてもらいました。

もちろん、リアルで同じ場で会うことの重要性も感じながらではありましたが、オンラインのみの参加だからといって距離を作るような先生ではないという安心感はありました。(甘えたとも言えるかもしれません)

ラスボス、成果報告会

これはオンラインで参加しますとは言いにくい。私は自分の発表の日を会場参加、発表しない日はオンライン参加を希望しました。(この辺はPMに伝え、事務局に伝えれば問題なく対応いただけました)

その前に、稲見先生からは「無理して会場参加しなくてもいいからね」と事前に声をかけていただいてはいます。

事務局からは、控室を2つ用意していること。体調が悪くなったり、カームダウンしたいときは使えるということを早い段階で連絡いただきました。

成果報告会になると全体会議は3回目なので、不安なことはなかったです。特に稲見先生と事務局が私の特性を理解してくださっているのが安心材料でもありました。

困ったことがあれば

私の場合は感覚特性が強いので、音や照明、ニオイのある場所にいることが辛いとう困りごとがあり、それをオンライン参加や、事務局の配慮で乗り切っていますが、他の困りごともおそらく、相談すれば可能な限り対応してくれると思います。

・車椅子が必要ならバリアフリー対応できる場所や補助スタッフを用意されるでしょう
・付添人が必要なら許可できるように計画してくださるでしょう
・話せない、聞こえないなどの場合は、手話でも筆談でもUDトークもありますし、落合先生がレルクリアを持ってくださるかもしれません
・ヴィーガン食がいいなら自分で持参でもいいですし、メニュー一覧は事前に提供いただけるでしょう
・お祈りしたい時間があるなら用意してくださるでしょう
・家から出られない重度障害なら、全てオンライン参加も可能でしょう

おそらく、エントリー前に不安に思っているようなことは、未踏ではほぼほぼ心配しなくてもいいのでは?と思いました。もちろん難しいこともあるかもしれませんが、病気や障害、特性、思想、宗教などの理由でNOとは言わない組織であると私は感じました。

そういえば、稲見先生に以前、「発表もみんなと同じでなくていい」とも言われました。事前収録を流してもいいし、アバターで話してもいいのです。ですから、人前で話すのがどうしてもできないなども、方法はあると思うのです。

でも、悩むのは採択されてからで大丈夫です!

超えられなかったこと

未踏で唯一、超えられなかったと思うことは、「仮想ではない現実世界の誠実さ」という妄想です。

PM会議の初回は会場参加しました。ブースト会議は2日間リアル参加し、8合目と成果発表会は、自分の発表は会場で行いました。

正直に言えば、これもオンラインで参加したかったです。しかし、それを選択できなかったのは「みんなと同じ会場で空気を吸ってその場にリアルな物体として登場することが誠実である」と思ってしまうからです。

支援される側、応援される側の人間が部屋から「こんにちは」はできなかったのです。そんなやつより、会場で「こんにちは」とした人間を人は好むだろうと私の常識が邪魔をしました。

私は分身ロボットOriHimeを作るオリィ研究所の分身ロボットカフェDAWNでインターンとして働いていたし、OriHimeを使って遠隔で働いたりコミュニケーションを取るたくさんのパイロットさんとも接している。そして、アバター越しであろうと、音声だけだろうと、私たちは変わりなくつながり尊重しあえることを知っている。

それなのに、私は未踏という場で少し萎縮し、すばらしいPM陣の前に、リアルな物体でステージに立つことが、未踏クリエイター(それも最年少)の誠実さだという妄想から逃れることができなかった。

きっと、オンラインで発表した人もいたよね。くらいのレベルで忘れ去れると思うのに、この壁を私は超えられなかったです。

ここには見える困りごとと、見えない困りごとという壁もあります。私が車椅子だったり、寝たきりだったら、家からの参加でいいよと誰もが言うでしょう。しかし、ぱっと見、なんの問題もなさそうな私が、最後の発表の場で家から参加してまーすと言えば、「最後なのに」「甘えてる」と思われた可能性はあるでしょう。

この見えない困りごとや障害の壁を少なくすることは私の成し遂げたいこことの1つです。

しかし、その壁を簡単になくす方法はあるのです。現実と仮想の区別がないくらいの世界の到来です。そうすれば、こんなことで悩む必要もなくなります。テクノロジーによって障害は障害ではなくなるのです。

まとめ

このように、「こんな私じゃ参加できないかも」と不安に思うことがあるかもしれませんが、きっと大丈夫です。

言わないで我慢するのではなく、まずは相談してみることをおすすめします。

未踏のダイバーシティ&インクルージョン、これからもますます進んでいっことでしょう。そして未踏クリエイターもより多様になっていくといいなと思っています。

2024年度の未踏のエントリーは3月13日まで。








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