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火10『きみが心に棲みついた』におけるデートDV語録 ※途中ネタバレを含む※

2018年1月始まりの火10・恋愛ドラマ『きみが心に棲みついた』をご覧ですか?

主人公・小川今日子(吉岡里帆)に対する上司・星名漣(向井理)の過激な言動が注目され、エグイ映像表現から戦線離脱した方も多いはず。私の場合、俳優さんたちの演技やかわいさ・かっこよさから、第9話まで毎週逃さず観てました!漫画原作の作品なので、原作ファンの方も多いかもしれませんね!

ところで、「星名さん」のあの過激な行動をみて、DVという言葉が浮かんだ人はどれくらいいるでしょうか?

DV(ドメスティック・バイオレンス)は夫婦間や内縁関係間、親子間だけでなく、付き合っている恋人同士の間にも起こりうることで、これを最近は「デートDV」と呼びます。

デートDVとは「短期又は長期の交際関係に関与している人から受けるDVのこと」です。また、DVとは明確な定義は未だありませんが「配偶者や恋人など親密な関係にある、又はあった者から振るわれる暴力のこと」と言われています。ここでいう「暴力」は、殴る蹴るなどの身体的暴行だけでなく、心理的攻撃、経済的圧迫、性的強要も含まれます。詳しくはこちら



それでは早速

星名さんのデートDV発言を見ていきましょう!

※以下、ネタバレを含みます※







まず、代表的なこのセリフ!

①「キョドコのくせに」

これは根拠もなく今日子を否定する発言であり、今日子に対する心理的攻撃に当たります。相手の価値を著しく・根拠なく下げ、相手の自己肯定感を下げることに繋がります。今日子の言動はたしかに、星名さんの言う通り「キョドっています」が、だからと言って、あだ名をつけて馬鹿にしていいわけではありません。「自分なんて…」「自分なんか…」が口癖になっている人は、周りの人からこのような言葉を言われている・言われてきた可能性が高いので、このような言葉を受け容れてしまう傾向にあります。

〈同様に相手を傷つけるもの〉「お前ごときが(何を言っているんだ)」「お前なんて」「お前には無理」「やめとけよ」 など


お次にこのセリフ

②「お前ならできるよな」

一見今日子の能力をプラスに評価しているかと思いきや、そう思わせることで今日子をコントロールしようとしています。過剰な束縛・相手の意思に反して相手に自分の欲望を押し付けることはデートDVに当たります。『きみすみ』ではその後、回想シーンでよく出てくる「牧村を元気づけるためのストリップ」をさせたり、下着姿でランウェイを歩かせたりしています。ここまで過剰にゲストや知り合いの前で辱めを受けることは、現実ではなかなか無いかもしれませんが、以下のような対応はされたことがあるのではないでしょうか。

〈同様に相手を傷つけるもの〉「(どちらも嫌なのに)これとこれどっちがいい?」「(伸ばしたくないのに)髪伸ばしてよ」「今日もだめなの?いつならいいの?(相手に罪悪感を与えて断れないようにする)」「○○したら、××してあげるよ(条件付きでやらせる)」 など


続いてこちら

③「本気で俺から逃れられると思ってんの?」

今日子と星名さんはすでに別れたにも関わらず、星名さんは執拗に彼女を追いかけます。交際期間中でなくとも、元恋人や元婚約者からの暴力(身体的暴行・心理的攻撃・経済的圧迫・性的強要)もデートDVに含まれると思うので、被害を受けている人は助けを求めてください【相談先は後述】。また、この発言で特に怖いのは、過去の嫌な記憶を想起させ、フラッシュバックが引き起こされることです。「ドラマの演出」だとも言えますが、今日子もよく辛いこと(星名さんに責められるなど)があると、すぐ回想シーンが入って、フラッシュバックが起こっているように描かれています。

〈同様に相手を傷つけるもの〉「あの時のこと、忘れてないよね。」「償えよ」「私から逃げるつもり?」当時苦しんでいた時に言われていた言葉を頻繁に言う・当時の写真や動画を本人や周囲の人に見せる(リベンジポルノなど)など


最後はこちら!

④「これ以上首突っ込んだら、どうなるか分かってんだろうな?」

これは第9話で家に押し掛けた飯田さん(石橋杏奈)に対して言ったセリフですが、飯田さんと星名さんは一時的にでも(飯田さん曰く)「付き合っていた」ため、これもデートDVに当たります。この言葉自体、恐喝に当たり犯罪ですが、やはり相手を脅して相手の意思を抑圧し、動けないようにすることは言ってはいけません。

〈同様に相手を傷つけるもの〉「なんで新しい恋人作ってんの?」「絶対に別れない!」「それは本当の気持ちじゃない!」「私のこと愛してなかったんでしょ!」など


ほかにも星名さんが言ったデートDVに当たるセリフは山ほどありますが、多すぎるので、そろそろまとめを。

 今回、星名さんのDV語録を作るにあたって、身体的暴行と比べて心理的攻撃が、目に見えないDVであるためより分かりづらく、周囲から情報を取り入れづらい(ドラマ等でも身体的暴行、特に夫婦間のものが多い)ことから、読者の方にデートDVについて、少しでも実感を持ってもらえればと思って書きました。

 これを読んで、自分が恋人に似たことを言っていると思ったら、言わないようにしてください。ここにあげたセリフは一例に過ぎず、要は相手を苦しめていないかが問題です。しばしば、束縛は愛の証などと言われますが、それによって相手が嫌な思いをしているなら、それは愛ではありません。まだデートDVを含むDVは、国内では特に定義が明確ではなく、DVか否かの境界線ははっきりしていません。そのため、個人によってもその定義が変わってしまう現状があります。不安であれば、相手に「自分の発言が相手を傷つけていないか」を確かめてみましょう
 逆に、これを読んで、自分が恋人に似たことを言われていると思ったら、できるだけ早く信頼できる人に相談してください。ひとりで抱え込まないでください。友達でもいいし、カウンセラーやセラピストでもいいので、恋人以外の人で恋人と関係の薄い人に相談して、第三者の意見を取り入れてみてください。そうすることで、自分の置かれている状況を冷静に把握することができ、適切な対応を取ることができます。デートDVについてのホットラインもあるので、電話してみるのもアリです。あなたは誰かに否定されるような存在ではなく、何も悪くありません。恐れずに誰かに話してみてください。今日子のようにトラウマに縛られたまま、うまく折り合いがつかずに生活していると、似た環境に置かれたときに被害体験を思い出して不安や恐怖にかられたり、フラッシュバックで苦しむままになったりする可能性もあるので、できるだけ早く助けを求めてください。このような症状はPTSD(心的外傷後ストレス障害)の可能性があります。精神科の病院での診断をもとに、カウンセラー・セラピストや医師と共に、回復を図ることをお勧めします。
 そして、これを読んで、友達が恋人に対して言っている・恋人から言われていると思ったら、ぜひ「それはデートDVだよ」と教えてあげてください。たしかに友達に注意することは難しいかもしれません。しかし、友達がDV加害者ならどこかで苦しんでいる人を放置することになり、友達がDV被害者なら友達自身が苦しんでいるのを見過ごすことになるのです。苦しむ人を救えなかった苦しみを抱えて生きるよりは、多少不仲になってでも注意してあげてください。また、自分で注意することが難しければ、ほかの友達や大学や会社の先輩に話をする・代わりに注意してもらうことも勇気のある行動です。『きみすみ』でも今日子の被害に対して、吉崎さん(桐谷健太)や八木先輩(鈴木紗理奈)堀田先輩(瀬戸朝香)が声をあげることで対応しましたね!相談する相手に気をつけながらも、当事者に声をかけてみてください。

〇相談先

デートDV110番|恋人間の悩みに関する無料相談|フリーダイヤル

一人で悩まずお近くの相談窓口に相談を | 政府広報オンライン

パープルダイヤル−性暴力・DV相談電話− | 内閣府男女共同参画局

・各都道府県・市町村設置の相談窓口


〇参考にしたHP・本

ドメスティック・バイオレンス(DV)とは | 内閣府男女共同参画局

講談社 (健康ライブラリーイラスト版) 『PTSDとトラウマのすべてがわかる本』 (2007)飛鳥井 望


ドラマ『きみが心に棲みついた』自体は、向井理さんもカッコよく、吉岡里帆さんも可愛くて、ほかのキャストさんも素敵な方揃いですし、話の展開もいいところですので、最終回を目前に、とても楽しみにしています!私も欠かさず観ます!!!!ぜひ、観ながらDVやセクハラやパワハラについても考えてみてください!!!!

《おまけ》第9話のラストについて今日子が星名さんを庇った査問委員会のあと、今日子が先輩に対して「私がキチンと断ればいい話だったんです」と言ったとき、先輩たちは何か思うのを堪えて息を吸うのみで、結局スルーしてしまいます。私なら、そこで今日子に「お前は悪くない!」と言ってやりたかったです。しばしば被害者非難がなされますが、性暴力について被害者を責める・被害者に責任を負わせるのはお門違いです。また別の記事でも書こうと思いますが、悪いのは加害者です。堀田先輩に関しては、吉崎さんに「星名さんを庇った」とリークしており、吉崎さんが今日子を別れを告げるシーンで終わっています。吉崎さんの「それ(庇ったこと)って...依存なんじゃないかな」という発言も、被害者と加害者の関係に対する誤解を孕んでいますね。この誤解が解消されるのを、期待してます!!!明日の最終回が楽しみです!

長くなりましたがお読みいただきありがとうございました。大学生にとってはほかの性暴力と比べて、特にデートDVが身近なので、この問題を解決していけるように今後も活動を続けてまいります。

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              (中央大学SEXを考える委員会 めぐみ)

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