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イベントレポート 中央大学社会科学研究所シンポジウム『ジェンダー 暴力 デモクラシー』

2018年2月3日㈯のお昼に、中央大学社会科学研究所主催のシンポジウム『ジェンダー 暴力 デモクラシー』に参加してしました!

私の授業の先生がこのシンポジウムに誘ってくださり、中央大学の駿河台記念館(御茶ノ水)までうかがうことになりました。普段の生活区域「多摩」からは結構遠かったですが、都内(一応多摩も都内ですが 笑)で開かれたおかげで、中央大学以外の方とも交流を持ててよかったです。

学会や研究所のシンポジウムといえば堅苦しいイメージがあるかと思いますが、今回のシンポジウムはそんなことありませんでした。まるで学生がゼミの教授の前で発表してるかのように、普段授業でリラックスして自分の庭でお話しされている先生たちの、少しピリッと緊張されて発表・報告をなさっている姿が新鮮でした!!

ーー〈第一部〉ゲストの方の報告 ーー

〇棚沢直子先生「力関係の起源としての世代」

棚沢先生はフランス研究の第一人者で、多くの本を書かれています。私もお会いしたかった先生のお一人でした!今回は日本とフランスにおける「世代」や「世話労働(育児や介護をはじめとする労働のこと)」の認識の違いについて報告なさいました。子供を世話する・高齢者を世話するときに力(権力)が生じるということを、成人男性を前提として宣言されたフランスの「人権宣言」を引き合いに出して報告されているのが印象的でした。シンポジウムでのお話も面白かったので、棚沢先生の本もたくさん読みたいです!

〇平野千果子先生「ナポレオンと植民地ー反乱・奴隷・女性」

平野先生はフランスの植民地(特にカリブ海仏領植民地)について報告なさいました。フランスの歴史といったとき、ナポレオンやジャンヌダルクなど本国の歴史ばかり見がちですよね!私も中学・高校でフランスの植民地の歴史はほとんど学びませんでした。平野先生が報告の中で〈歴史の語りは強者の側から行われている〉と述べられていたのが印象に残っています。これはフランスに限らず、枝葉を切り落としてしまうのは世界を知るうえでもったいないことだなぁと気づきました。

〇原千砂子先生「再生産における女性主体と暴力」

原先生は政治思想家の発言を追って「産む私・産む性」について報告なさいました。ほかの先生に比べて「思想」が中心だったので、哲学っぽくて面白かったです。「胎児は人間なのか」「子供がお腹にいる自分を『私』と呼べるのか」など、考えてみたかった問題について多くの日本・フランス・アメリカの思想家たちの言説をもとに発表されていて興味深かったです。少し学問的ではありますが、私たちCSC(中央大学SEXを考える委員会)でも考えてみたいテーマです!あと「多様性」と「複数性」など、外国語を日本語に翻訳するのは難しいんだなぁと思いました。笑

〇堀川祐里さん「戦時期日本における既婚女性の就業環境」

堀川さんは中央大学大学院で経済学を専攻されている学生さんでした。名立たる先生方の中に交じって報告なさっている姿はとても立派で、純粋にカッコイイと思いました!戦時期の労働をモデルに、女性の就労におけるジェンダーや「暴力」について発表なさいました。〈拒否することのできる社会〉への社会構造の見直しについて言及されていて、それをきっかけに私は、現在も蔓延っている対女性や対性的マイノリティなどのハラスメントも同じ問題なのではないかなと思いました。

ーー〈第二部〉中央大学の教授陣の報告 ーー

〇鳴子博子先生(経済学部)「ジェンダー視点から見たフランス革命ー暴力と道徳の関係をめぐって」

鳴子先生はルソーを中心とした政治思想の教授で、今回はルソーの言説を基準としてフランス革命を再分析されていました。フランス革命は民衆が文字通り「立ち上がった」革命です。この「暴力」を正当化する論理はあるのか・女性はどう関わったのか・女性の不在は女性の排除なのかなど、様々な観点で考察されていて興味深かったです。特に「女性の不在は女性の排除ではなく、女性の伏在である」という主張は、フランスと日本の違いを表しているようで面白かったです!『未完の革命としてのフランス革命』、かっこいいですね。

〇西海真樹先生(法学部)「構造的暴力としての言語政策ー琉球/沖縄諸語をてがかりに」

西海先生は国際法の教授で、今回は国際法(ユネスコ)と言語・文化(沖縄諸語・シマクトゥバ)を題材として、日本の言語政策について報告されていました。今回は沖縄についてでしたが、アイヌについても研究されているようです。日本は標準語を用いて全国に同化政策を打ち出したわけですが、この「暴力」と「デモクラシー」について、もっと詳しく・深く知りたいと思いました!たぶん来年授業取ります 笑

〇武智秀之先生(法学部)「人口減少時代の福祉とデモクラシー」

武智先生は公共政策や社会福祉などの行政学の教授で、今回は多様性などの課題を解決するための政治への参加機能を効率・有効・正統から検討なさっていました。まさに法学部の「行政学」の授業のようで、休憩時間にお話ししてみると「このレジュメで90分授業できる」とおっしゃっていました!私も、行政学を学んで、社会的マイノリティーの意見を反映させる方法を学びたいなぁと思いました。

〇中島康予先生(法学部)「投票デモクラシーとポピュリズム」

中島先生はつい先日まで法学部長をされていた先生ですね。今回は、暴力を生産する秩序がどのように構築されているのかを検討なさっていました。当然、学部の内容よりも難しく、付いていくのに必死でしたが、「ポピュリズム」と「投票デモクラシー」という言葉の意味だけでも分かって良かったです。報告の中で「政治は、境界線を引くことを巡る相剋と不可分であり、『ジェンダー』のように基準に即して人々の間に切れ目を入れて、優劣をあげつらう『人種政治』が現れる契機がある」とおっしゃってて、私たちは政治を操るべきところ、政治に操られているんだなぁと悲しくなりました。

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今回報告をされた先生方は、たった20分で専門分野のお話をしなければならず、報告中にも「わーーーー!!時間がない!!!」となっているところもあり、お茶目でした!所々質疑応答の時間が設けられていて、質問に応じて言いそびれた言いたかったこともおっしゃっていて、すごく知的好奇心がくすぐられました!

普段大学で受けている授業は、教授からの一方通行であって、双方向であっても知識レベルやドキドキ感が生徒の方がずっとあるので、実質的に一方通行になってしまいます。しかし、このようなシンポジウムの場では、様々な深い知識を持った専門家同士が話をしてくれるので、(ついていくための最低限の知識はもちろん備える必要がありますが)より深く・わかりやすく議論を聞けてとても面白かったです。

きっと私以外にも、このような形式のイベントが好きな学生も多くいると思うので、私たちCSCも大学教授の先生たちをお招きして、生徒も交ぜて、「SEX・性」について学べる・話せる・考えられる場を提供していきたいなぁと思います!

ちなみに、第二部で報告なさっていた先生方は中央大学の先生方です。ぱらっとですが、今回の報告の内容を書いてみたので、気になった先生がいれば、来年度授業を取ってみるのはいかがですか?難しさについてはノータッチですけどね 笑

              (中央大学SEXを考える委員会 めぐみ)

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