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ボスコン、メルカリ、今“半ニート“の男は何を考える。新規事業のCS、採用・組織作り 【CS HACK#37イベントレポート】

まったくのゼロからCS組織を立ち上げる――。

サブスクリプション型のサービスが盛り上がる中、カスタマーサポートであれカスタマーサクセスであれ、「新たに立ち上げる」必要性に駆られるケースは増えているのではないかと思います。

実際にCSの体制を構築するためには、どのようなステップで進めていけばいいのでしょうか。どんな人を採用し、どう組織を作っていくか……わからないことは山積みですよね。

今回ご登壇いただいた福田勝彦さんは、ボストン・コンサルティング・グループやメルカリ、メルペイで新規事業の立ち上げ、それに伴うCS体制の構築も多く経験してきた実績を持ちます。
福田さんが考える、新規事業のCSの0→1、そして1→1.1はどのようなものなのか、お話いただきました。

<ゲスト登壇者>
福田勝彦さん

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<主催・司会>
カスタマーサポート エバンジェリスト
藤本 大輔

CSの立ち上げで重要な「類似サービスを上手に真似する力」

本当にゼロからCSを立ち上げるとなると、どこから手をつけていいかわからないというのが正直な感覚でしょう。福田さんは、「サービス内容やプレーヤーを整理した上で、近しいサービスのCSを真似るのがいい」と話します。

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福田:まずはサービスを深く知ること。誰がどういうことをできるサービスなのか、どんなプレーヤーが関わるのかの全体像を把握します。その上で、似ている他社サービスのCSをやっている人にヒアリングして運用を整理、それをベースに自社のCSを構築していくのがいいんじゃないかなと思います。
全部ゼロから考えるのは時間もかかってしまうので、できるだけ先人の知恵を活用していきたいところです。

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ここで壁になるのが、「類似サービスを提供している人が知り合いにいない」という状況ですよね。福田さん曰く「CSのコミュニティや友人経由で繋がりを作り、アンオフィシャルな場で聞くしか無い」とのこと。そのためにも、困ったら相談できる、話を聞きに行けるような横のつながりを日頃から作っておくのが重要です。

より詳細な業務を設計していく段階では、以下の3つを考える必要があります。

・オペレーション
・お問い合わせ
・ポリシー、基準

福田:まずは一番理想的なお客様の体験をベースに、基本的なオペレーションを考えていきます。トラブルが発生しない状態、つまり「正常系」の流れを整えるわけです。その次にお問い合わせに繋がるような「非正常系」を考えていきます。あとは、イレギュラーが発生した場合の判断基準やポリシーを言語化していけば、運用の大枠はつかめるかなと。

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「オペレーション」については、類似サービスのCS体制を聞いて大枠を掴んだ上で、自社サービスにおける最も正しい流れを想定し、どのようにステータスが変化していくかを俯瞰。段階ごとにどのような対応が必要で、それはシステムでやるのか、手動対応が必要なのか、などを考えていきます。

「お問い合わせ」は正しい流れから外れている状況ですが、基本的に類似サービスのFAQを見れば「どんなことが起こりうるのか」がわかるでしょう。自社にも当てはまるものは取り入れ、さらに自社サービスの流れのなかでどこで引っかかりそうかを考えることで、ほとんどのお問い合わせと対応方法は網羅できます。

もちろん予想外のことも発生しますが、それを最初から網羅することはできません。お問い合わせが来てから考え、必要に応じてマニュアルに追加していく方法をとるのがいいでしょう。
 
最後の「ポリシー・基準」は、イレギュラー発生時などなにかしら判断が必要なときのために考えておくべきもの。
基準としてもっとも優先すべきなのが法律や規制などのルールです。その後の基準は基本的に、社会通念>自社状況とするのが理想ですが、スタートアップでは(社会通念的な理想状態はわかっていても)自社の状況を優先せざるを得ないこともあります。将来的に理想を実現できるように考えつつ、最適な対応を探っていくべきでしょう。

「サービスとして何を大事にして、どう判断するか」といったポリシーは、最初から完璧に決めるのは難しいものです。スタートアップの初期段階であれば、サービスの理念などはメンバー全体に浸透しているはずなので、その前提で都度判断していくことになります。

ただし、ただ都度判断していくのではなく、「何が起こり、なぜ、どんな意思決定をし、どう対応したか」はドキュメントに残しておいたほうがいいです。これをやっておかないと人数が増えたときに対応がバラバラになってしまったり、各々が考えて対応しなくてはいけない場面が増えてしまいます。

積み重ねた判断をポリシーとして言語化するために重要なことなので、おろそかにしないようにしましょう。

初期メンバーはどう採用する?求めるべき人物像

CS組織を立ち上げるにあたって絶対に必要になってくるのが「採用」です。特に一人目、二人目の採用はその後の組織を左右する重要な要素になりますが、どんな人を採用するのか迷う方も多いのではないでしょうか?

福田さんは、「必要な人材要件と採用の難易度を考えると、リーダークラスの採用を目指すのが現実的では?」と話します。

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福田:責任者を任せられるような人材、「CS実務もマネジメントもできて、スタートアップらしい泥臭さも持っていて、新規事業立ち上げの経験もある」みたいな最強な人は、なかなか採用市場に出てきません(笑)。とはいえメンバーばかり増やしていくと、マネジメント不在の統制が取れない組織になってしまう。なので、マネージャー経験はないけどリーダーができるくらいの人材を採りにいくのがいいのではと思います。

その前提で福田さんが書いたペルソナがこちら!

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逆にこういう人を早い段階で採用すると苦労するかも…という特徴もいくつが挙がりました。

・スタートアップ特有の「よしなに」力が足りない(柔軟性が低い)
・大規模なカスタマーサポートをちゃんと回すのが強みで少人数体制の経験はない
・「お客様のために」が強く、理論と感情のバランスが悪い
・気合偏重で「オペレーションでなんとかする」思考が強い

もちろん、フェーズによってはここで挙げたような人材像が必要になるケースもあります。事業の状況によって必要な人材を見極めるのが重要です。

組織化フェーズで考えるべきこと。文化醸成・評価制度の難しさ

CSを立ち上げ、人数が増えてくると、「数名で密にコミュニケーションをとりながらよしなに進めていく」というやり方は通用しなくなっていきます。そういった段階では、何を考え、どうCS組織を作っていけばいいのでしょうか?

福田:組織が大きくなっていく段階では、業務面と組織面、それぞれ考えて構築していく必要があるかなと思います。
まず業務面ですが、チームが3名以上になったら基本的にアナログでやりとりしながらの対応は不可能だと思ったほうがいい。複数人で対応することを前提に体制を作っていかないといけません。組織面では、どこまでを内製するかというところから、チーム分けや文化作り、評価制度などの構築が必要です。

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業務面:人数が増えても対応のクオリティを落とさないためにどうするか

まず業務面について、人数が増えると必ず対応の品質や手順にブレが出てきます。それを防ぐために重要なのがマニュアル化。マニュアル作りには手間がかかりますが、2~3名の段階から作っておくことで抜け漏れや重複を防止でき、対応品質も維持しやすく、教育コストも下げられるそうです。

また、業務の割り当て方も迷うところ。

福田:1人があらゆる問い合わせに対応できる「フルスタック」でいくか、業務ごとに担当を分ける「スキル分化」でいくかは迷いますよね。どちらがいいかはケースによりますが、個人的には「フルスタック」派。特にサービスの初期段階では変化も激しいので、各メンバーがあらゆる状況に対応できたほうがリスクヘッジになるし、結局生産性も上がるなと思っています。

ことスタートアップに関しては、フルスタックをおすすめするという福田さんですが、規模によっては業務ごとの専門チームを作ったほうが生産性が高まる可能性があるとのこと。
前職のメルカリでも、最初は全メンバーがフルスタックだったところから、スキル分化していったそう。事業フェーズに合わせて変化させていくべき部分なのでしょう。

組織面:そもそも内製かアウトソースか、内製する場合の組織づくりは?

次に組織面について、早い段階で検討することになるのが「内製か外注か」です。完全に内製するのか、部分的もしくは全体的にアウトソースを活用するのかは、どのように決めていけばいいのでしょうか?

福田:サービス内容や状況によりけりですが、サービスを立ち上げたばかりの段階は、内製にしたほうが柔軟に対応しやすいのでおすすめです。ただ、上手く舵切りできずに内製で行き続けると、事業の伸びに合わせて人数を確保するのが難しくなったり、マネジメントの難易度が上がったりしてしまうこともあるので注意が必要です。

内製メインでいくか、外注も取り入れていくか、方向性を定める決め手は「事業におけるCSの重要度」と福田さんは言います。CSの対応や質が事業上の競合優位性になりうるなら、自社でハンドリングしやすい内製をメインに。そうでないならコストを抑えられるようにアウトソースを使っていくのがいいのでは、とのことでした。

【アウトソース活用に興味がある方はこちらもおすすめ!】

CSに限らず組織作りにあたって必ず直面するのが、チームの文化醸成や評価制度の構築です。

福田:あえて取り組まずとも文化が浸透し、評価も「よしなに」で済むのは、だいたい10人くらいまで。それ以上は、相応の施策や評価制度の構築が必要になってくると思います。
文化の醸成や伝達で言えば、それまで暗黙知でやっていたものを形式知化すること。そしてそれを何度も何度も伝えるのが重要かなと。

評価制度については、CSならではの難しさがあるそう。

福田:CSは、エンジニアや営業、企画職などと異なり、人によって生産性の差がそこまで出にくいんです。「ほかの人の10倍のお問い合わせ件数に対応しました!」とかは、まずない。だから、他職種と同じ評価制度だと上手く評価できないこともあります。

CSだけ切り出して評価制度を設計するか、全社統一するならどうやって運用するのか、考えていく必要があります。メルカリに在籍していた当時は、適切に評価するための取り組みとして1人の評価者に対してメンバーは8人以下にするという基本ルールを作っていたというお話もありました。

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「あくまで自分の経験を元にした話なので、皆さんの参考になるかはわかりません…」と期待値調整に余念がなかった福田さんですが、ここには書けないオフレコ話含め、とてもためになるお話をしていただけました!

これからCSを立ち上げたい、立ち上げてみたものの壁にぶつかっているという方の参考になれば幸いです。

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