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#WDPDTW読書会 1983 Week 35:ヴァニティ

Tudahlさんのを1週間分ずつ読む#WDPDTW読書会で聞いたこのメモと感想です。2023/09/02配信分。(読書範囲;Monday, August 29, 1983–Saturday, September 3, 1983)


1983年8月

あの8月3日のファースト・アベニューでのライブ録音したあと、まだまだコンピューター・ブルーの作業が続いています。サンセット・サウンドのスタジオ3でしてます。

アルバート・マグノーリ

Tudahl本では、パープル・レインの監督、アルバート・マグノーリの言葉が、これまでもよく引用されてきました。

Week 27の範囲だった7月のページで、マグノーリさんが、プリンスと初めて会ったときのことを語っています。夜中の12時に、マグノーリさんがプリンスと会うために約束の時間通りに一人で廊下で待っていると、プリンスがエレベーターから降りてきて、マグノーリさんの目の前をまっすぐに部屋に向かって歩いて行きました。

So I was able to observe him for the whole length of that walk and I was able to absorb from that an enormous amount of vulnerability, and an enormous amount of pain.

JULY 1983

「私は彼が歩くのをまるまる観察することでき、その姿から、途方もなく大きなもろさ、そして、途方もなく大きな痛みを吸収することができた」

マグノーリさんは、映画の仕事の経験のない新人でしたが、Wiliam Blinnさんが書いていた脚本を引き継いで、監督もします。プリンスのことを知らず、ミネアポリスに来る直前に過去のMVなどを取り寄せて観てきたところでした。そして、初めて会った生プリンスが歩くのをおそらく10秒くらい見たのでしょう。それだけで、内面的なもろさ、痛みを感じたという、この少しおおげさな感想を述べます。個人の感想なのでおおげさでもいいです。映画の構想はある程度伝えられていたでしょうし、おおげさなのは割り引いて考えたとしても、生プリンスは事実、かっこよかったのでしょう。それをマグノーリさんはびんびんに感じ取って映画を作るときにプリンスの魅力を引き出し、プリンスの音楽と一緒になって映画『パープル・レイン』ができたのだとしたら、とても良い巡り合わせだったと言えます。

MONDAY, AUGUST 29, 1983の章には、マグノーリさんが脚本の初稿を提出した、と書かれています。このとき、タイトルも初めて『Purple Rain』となりました。

ヴァニティ

ヴァニティ(デニース・マシュー)のことは、Vanity6のセンターで、プリンスの恋人で、むちゃくちゃ綺麗だけれど、パープル・レインを撮る前にお金の問題?で去っていったという程度にしか知りませんでした。

Week 35の読書会では、少し前の範囲にも遡ってヴァニティのことをじっくり話しました。ヴァニティが離脱したのは、ソロのキャリアを求めていたからだということが今回の読書会で分かりました。ヴァニティが受けていた映画のオファーは巨匠スコセッシ監督のThe Last Temptationのマグダラのマリアの役でした。パープル・レインから降りたのは、自分のキャリアのことを真剣に考えた結果だったろうことが、Tudahl本を読み直してわかりました。スコセッシ監督の大役は、スケジュールの関係で実現しなかったというのは悲しい結果です。

I think that Prince and Vanity were a lot alike. …  She was a female Prince. I think he was hurt when they broke up.

MONDAY, AUGUST 8, 1983

Peggy McCrearyさんの言葉です。「プリンスとヴァニティはすごくそっくりよね。女版のプリンスだったわ。プリンスは、別れて傷ついていたと思う」

ヴァニティは、プリンスに負けないくらい強い意志を持った人だったのかもしれません。この時期に、2人ともキャリアの中で特別に大事な時期にいて、それぞれの道を進む結果になったのがなんとも言葉になりません。

ヴァニティの存在はすごく大きかったので、映画にとっては、ヴァニティの代役探しで大騒ぎになります。脚本も変えないとならなくなります。ヴァニティが出ていたらどんなパープル・レインになっていただろうという、たられば話は、読書会でも出てきました。

大仰な物言いのマグノーリさんはヴァニティのことをこんなふうに言っています。

Vanity's presence is so freaking strong, she can make the Red Sea part. 

SEPTEMBER 1983

「存在感の強さはとてつもなくやばくて、ヴァニティなら紅海を分けられるね」

プリンス疲れている?

プリンスのとんでもないハードワークに付き合わされるミュージシャン、エンジニアがいつも大変な思いをしているのは、常にこの本に出てくるエピソードです。エンジニアはプリンスがスタジオで録音できるよう、いつも急いで準備して、でも、いつ現れるかわからないプリンスを何時間も待つことになります。

FRIDAY, SEPTEMBER 2, 1983の章では、Peggy McCrearyさんが、昼から始まる予定のセッションに合わせて準備し、夕方まで待たされてしまいました。ちなみにその前日は、午後1時から午前12時45分までスタジオ作業がありました。エンジニアはプリンスが帰ってからその日録ったものをまとめる作業があるので、さらに朝方まで仕事していることでしょう。耐えられなくなったPeggyさんがプリンスに文句を言ったときの話です。

I said to him that "this is killing me" and he would just say, "Well I didn't wake up," and everyone was afraid to wake him up. He'd say, "I tell them to wake me up, but they don't." I'm like, "Right, whatever." So he gave me his number straight into his room or wherever he was and he said just call me when you're here. So that worked out pretty well, but that took quite a few years and I was just fried.

FRIDAY, SEPTEMBER 2, 1983

「『(何時間も待たされて)もう死にそうよ』と彼に言っても、『ああ、起きられなかった』という返事が返ってくるだけだし、怖くて誰も彼を起こせないわよね。『起こすように言っているんだけど、起こしてくれなかった』なんて彼は言うのよ。だから『そう、もういいわ』って言ったの。すると、自分の部屋か、どこか泊まっている所へ直通でかかる電話番号を渡されて、スタジオに着いたら電話するように言われたわ。状況はかなり改善したけれど、それには何年もかかったし、私は疲れ果てていた」

Peggyさんは、長年プリンスと一緒に仕事をして気心の知れた間柄になっていたようです。Tudahl本にもPeggyさんの言葉が何回も出てきていて注目すべき人です。今週のプレイリストの中にもPeggyさんのインタビュー動画が3本くらい入っています。

ショートスリーパーで、気の済むまで好きなようにレコーディングしているイメージのプリンスですが、この時は、映画のスケジュールに追われていたのでしょうか。寝不足でつらかったのかもしれません。

前にTudahl本の中で、何か食べるかと聞かれたプリンスが、食べると眠くなるからいらない、と答えた場面もあったような気がするのですが、どこだか見つけられません。


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